パラシュートの専門知識の必要性
パラシュートはこれまで軍隊やスカイダイビングクラブでトレーニングを受けた上で使用されてきました。
ドローン(無人航空機)にパラシュートを装備して使用する場合はどうでしょうか?
センサーによる墜落感知、自動開傘は必須となりますが、それであればトレーニングは不要となるのでしょうか?
知識の無いパラシュート使用の事故事例 ← クリック(*1)で ページへ
2024年10月 栃木県において異業種参入した企業による自作パラシュートの開傘テストによって、地上の第三者所有の車両に80㎏の重量を吊り下げたパラシュートが衝突事故が発生しました。
専門知識を軽視してパラシュートを使用すればこうなるという典型的な事故ですのでクリックしてみてください
スカイダイビングのトレーニングでスチューデントに装着して使用するセンサー&自動開傘装置
スカイダイビング用パラシュートには40年以上前からすでに墜落感知センサーと自動開傘装置はついていました。
それをつけた状態でトレーニングを行います。 つまり自動開傘装置の有無とは関係なくトレー二ングを行っている現状があるということです。
また緊急パラシュートというカテゴリーにおいてはアメリカではその取り扱いに際して国家資格を必要とし、連邦航空局によって管理されています。
*ドローンだから、自動開傘だから、開傘後は操縦できないタイプの傘体だから 知識は有っても無くても結果は同じ! と有識者の意見も聞かずに決めつけてはいけません。
知識の有無によって緊急パラシュートを使用した結果はそれぞれ変化します。
一般のかたでは見つけにくいかもしれませんが情報は開示されており、アドエアにおいても情報を伝え、トレーニングを請け負っています。
Q
●パラシュートは対地高度何メートルまでの高さで有効ですか?または装置の稼働後から開傘までに何メートル落下しますか?
●何秒で開きますか?
●キャノピーファーストのほうが早いですか?
●ラインファーストは開傘が遅いのですか?
●開傘方式はどちらが優れていますか?
A
●パラシュートの全体の高さ(長さ)によってそれぞれ異なります。傘体長とサスペンションライン長の合計長はドローンの重量事に適性サイズが変化するので一括したものは有りません。
●前例のようにパラシュート全長が変われば開傘に要する時間もそれぞれ変わります。
●パラシュートの開傘を理解する上で重要なことは方式は大別2種類あることです。
●キャノピーファーストは先に傘体が開き、その後にサスペンションラインが張ります。キャノピーファーストのメリットは開傘が早いことです。デメリットは場合によりサスペンションラインが絡みやすいなどの正確な形状に開かない可能性を有します。
●ラインファーストは先にサスペンションラインが張り、その後に開傘します。ラインファーストのメリットは正確な形状となって開傘しやすい確実性です。デメリットは開傘速度は理論上はキャノピーファーストのほうが速いということです。ただし比較してわずかな時間差であること、状況によってはほとんど差がないかほぼ同時なケースも見られます。アドエアではドローン用パラシュートにラインファーストを推奨しています。
●ドローンの形状や重量、特徴またはドローン以外では落下の状況によってどちらが向いているかを事前に調査しておいて選ぶことが重要です。同一個体をコンテナへの収納方式をへ選んで変更することも可能です。(*コンテナの収納方式による)
Q
●パラシュートを装着すれば墜落は防げますか?
●ドローンの墜落時の状況とはどのようなことを指しますか?
A
●ドローンの形状ごとにそれぞれ適性なパラシュートの種類、適切な装着方法が異なります。
そのドローンは緊急時にどのような姿勢で墜落するでしょうか
形状も重量も重心も違うドローンがすべて同じような落下姿勢または状態とはなりません。あなたが使用するドローンの墜落挙動がわからなければパラシュートが100%機能するとは言い切れません。
パラシュートの射出はそれぞれの角度、方向、取付位置によって開傘確率が異なります。
●自立飛行を含む操縦者の意志による操作ができなくなった場合のことを墜落と認識します。仮に飛行を継続している状態であっても短時間で墜落に発展します。
●操縦者はパラシュートを有効に使って緊急事態を防ぐために使用するドローンの緊急時の墜落挙動について事前に知っておく必要があります。
例)正態勢のままで進行方向へ放物線軌道を描きながら落下
上下逆転して落下
連続的な回転をしながら落下
不規則なドリフト(プロペラの一部だけが稼働)しながら落下
ドローンによってそれぞれ特性があります
固定翼機では高確率でヘッドダウンした姿勢になります。
Q
●パラシュートメーカーがパラシュート装着するときにドローンを見て落下時の姿勢や挙動を判断できませんか?
A
●それはパラシュートメーカーが果たす役割と責任ではありません。
ドローンメーカーが果たすべき仕事です。
そしてそれを飛ばす場合は使用者の果たすべき仕事です。
●ドローンは車やバイクのように決まった規制の枠に沿って開発製造されていません。
ドローンメーカーまたは使用者が緊急時の挙動を最も知っておく必要があります。
パラシュートメーカーはそのドローンの正規装備品である場合を除いて勝手に判断することは行っていません。
Q
●パラシュートは重量どのくらいですか?
●そんなに重たいのですか?
A
●パラシュート本体はドローンの総重量に合わせて40㎏未満のものでは現在8サイズ用意しており面積が変われば重量も変わります。
それ以上大型のドローンには従来有人用に使用しているものを充当させて使用が可能です。
例)ドローン重量30㎏用のものであれば
パラシュート本体重量700g
インナーコンテナ&アウターコンテナ 30g
射出器 300g
ハーネス 10g
●重量を気にする質問者はマルチローター型ドローンへの搭載を検討されていることが圧倒的ですが、マルチローター機の特性は理解しているでしょうか?
小径プロペラで揚力を得るということはそれがマルチ装備であっても飛行体の種類中では最も揚力に乏しいということです。その代償として反転トルク及び自然風の影響を受けることなく安定した操作性を得ています。
その揚力の乏しい飛行体を使用して空輸のような重量を気にするような作業を検討しているのであれば業務を検討する以前にプロペラの基礎から学びなおす必要があります。
開傘の衝撃に耐えるポリエステル系素材生地とダイニーマやアラミド系繊維を素材とするラインで構成されるパラシュートは例えばNASAのロケット燃料カプセル回収用パラシュートではパラシュート本体だけで重量1tnを越えて人間の手ではパッキングすることができない重量なのです。
Q
●軽量化できませんか? 例えば部品一部を外せませんか?
●海外のパラシュートメーカーのデモ動画を見ましたが火薬を使えば軽量化して、同時にもっと開傘速度を速めることができませんか?
A
●自動車を注文するときに費用や重量軽減のためにタイヤは要りませんと言いますか?
●火薬を使う方法は有人飛行用でも存在します。”重り”を打ち出してパラシュートを引き出しますが、万が一に人間に当たれば貫通するくらいの速度で発射されます。ドローンでそこまで必要とは思いませんが必要ならアメリカの飛行機専門のロケットデプロイ式パラシュートメーカーを調べてみることをすすめます。
●火薬を使って開傘させても軽量化はしません。開傘速度が速まるわけでもありません。打ち出し方向と確実性の確率が高まるだけです。
なおかつ火薬を使用する場合のパラシュートリパックは新品を購入するのと同様の費用が掛かります。
●開傘を速めることがパラシュートを評価するうえでの最優先項目と誤解してはいけません。
スカイダイビングのパラシュートでは開傘後の頭上の位置に四角い布があるのを確認できますが、スライダーという部品でパラシュートの開傘を遅らせるための役割を持った部品です。開傘時の沈下速度がおよそ50m/secという高速であることでそうの風圧だけで急激な開傘となるのですが、有人用のものなので開傘時の衝撃でジャンパー(スカイダイバー)の首を頸椎捻挫から保護する目的の部品です。
用途に応じて、状況に応じてパラシュートの動作を調整しておくことが必要です。
Q
●開傘後の沈下速度は?
●誤作動をしませんか?
●自動で開傘しますか?
●開傘は確実ですか?
●パラシュートに求めること
直進降下
開傘衝撃で縫製が破壊しないこと
A
●サイズ(翼面積)選択によって沈下速度3-5m/secの範囲内での設定を推奨します。
OWL-VGではアドエアの専門技術により同一個体で30%強の範囲で沈下率変更を調整可能です。
●飛行時の風向風速と飛行位置から見て安全な不時着地点までの風下移動考慮したうえで沈下率は考慮されるべきです。
●確実な開傘のために取り扱い知識と定期メンテナンスを必要とします。
●用途にあったセンサーを取り付けることで墜落を自動感知し開傘装置を使って自動開傘は可能です。しかし使用者が知識を学ぶことなく使うことは確実性を損う可能性があります。自動開傘であってもパラシュートに関する知識を学んでください。緊急パラシュートの取り扱いはアメリカでは連邦航空局によって管理される国家資格となっています。
●パラシュートの開傘はある一定条件に限られています。自動開傘となればその一定条件の許容範囲が狭められます。高速開傘にこだわればそれを得る代償としてさらにその条件範囲を狭めます。機器に盲目的な依存をすることなく使用者自らの知識で開傘の確実性を確保してください。
●空気の透過率を抑えることにより下方向からの連続した空気の流入の行き場を失ってしまうと空気を傘の下縁から逃がすために傘が揺れ始めます。これがサスペンションラインの最下部に吊り下げられたドローンの位置では大きな振り子状態となります。
空気の逃げ道を塞ぐではなく、上空方向へ逃げ道を作ってやることによりスロット効果を得て直進安定させています。そのために適度に空気透過性をもった生地を使用しています。
●縫製は丈夫に縫えば良い!というものではないのです
軽く=生地は薄い
丈夫な縫製=縫い糸の番数(太さ)は大きい
薄い生地と 太い糸の縫製の組み合わせは荷重によって割ける可能性が高まります。
では厚手生地に太い糸を使いますか? NOです 嵩張りすぎて圧縮して畳みにくくなり、コンパクトに圧縮した梱包が困難です。さらに開傘動作の際にしなやかさが失われるので嵩張りによる引っ掛かりに起因した不正確な形状で開傘することが懸念されます。
ではどのように強度を保つのかといえば、強度に限界値を持たせます。
限界のある強度で重量物を支えられるのでしょうか?という不安が湧きますね
それは吊り下げ重量が限界値を下回っていることを確認していれば十分です。
開傘時の衝撃はそれまでの(開傘直前の)落下速度により衝撃の大小が変化します。
それならパラシュートが受ける衝撃を事前に弱めてから開傘させれば良いのです
アドエアのパラシュートが2段階開傘方式である理由の一つがそこにあります。パイロットシュート(射出される小パラシュート)で空気抵抗を発生させてわずかながら落下速度を減速させておきつつメインパラシュートを引き出して開傘させる。これが二段階開傘です。