ゼミ配属や大学院入試にあたっては、できるだけ事前に相談してくださいますようお願いいたします。連絡方法などは「ホーム」のページに記載の通りです。学部のゼミにせよ大学院にせよ、マッチングが重要です。少なくとも2年間を一緒に過ごすわけですから、いわゆる「音楽性の違い(音楽に限らない意味で)」を無視して所属するとお互いに苦しい思いをするリスクが高くなります。芸術を科学しようなんて研究室は私が学生の頃にはほとんどなかったので、私自身現職に就くまではそれなりに苦労しましたし、恩師にも苦労させてしまったと思います。
時期によってやることは違いますが、定例のミーティングを週1回やるようにしています。学部生向けのミーティングでは毎週1人~3人の発表当番を決めて、読んできた論文の紹介、研究構想の発表、進捗の報告、それらを踏まえた議論やその他の相談を行っています。大学院生向けのミーティングは当番は決めずに早い者勝ちにしています(当番を決めてのは特論や特論演習の授業で実施)。この他、不定期にだれかの予備実験を兼ねて、研究機材や分析方法のデモンストレーションなどをすることもあります。あとは個別対応です。Slackとかで随時対応します。タイミングや内容によっては居室に直接来てくれても構いません。
3回生前期 … 前半は「研究入門」的な座学。後半は1人ずつテーマを相談しながら論文を探して読んで発表して議論して問いを深めていく。
3回生後期 … 引き続き論文を探し読み発表し議論し問いを深める。1月頃には研究構想のビジョンを述べられるようになるのが目標。
3回生春休み~4回生前期 … ビジョンを具体的な研究計画に落とし込む時期。倫理審査の申請がひとつの目標。就活もこの時期で決着を付けたいところ。
4回生夏休み~後期 … 進学する人は9月頃に大学院入試。卒論の〆切は例年1月中旬なので、いつ何ができてたらいいか、逆算して考えましょう。
(大学院も気になる人はこのへんをクリックすると続きが見られます)
M1前期 … 3回生前期に同じ(外部からの進学者が多いため)。内部進学者も復習のつもりで。単位も早いことかき集めましょう。
M1後期 … 3回生後期~4回生前期を圧縮みたいな感じ。年内に倫理審査が出せれば夏頃の学会に間に合わせられるかも(奨学金の返還免除などを狙う場合は重要)。
M2前期 … 研究と就活に明け暮れましょう。進学する人は学振特別研究員の申請書も書く。7月始めごろに中間発表会があるので成果を見せつけましょう。
M2夏休み~後期 … 研究に明け暮れましょう。1月中旬頃に修論提出〆切。進学する人は入試とかSPRINGとかも。
D1前期 … 4月末に博論構想を提出。学振DC1がダメだったらDC2に挑戦。あとはとにかく研究をがんばる。学会なども参加しよう。
D1夏休み~後期 … とにかく研究をがんばる2。院生向けの研究助成もあるので挑戦してみるとよい。2月末に基礎論文の提出〆切がある。
D2前期 … とにかく研究を3。査読にかかる時間を考えると、3年で修了するつもりならこのあたりで1本目の論文を投稿したい。
D2夏休み~後期 … とにかく4。3年で修了なら1本目の論文投稿のデッドラインがこのへん。修了後の身の振り方(ポスドクの受入先など)も考えて準備しましょう。
D3前期 … とに5。予備審査論文の提出〆切が10月1日とかなのでそれの突破が目標。
D3夏休み~後期 … と6。1月中旬が博論提出〆切。提出物めっちゃ多いので余裕持って準備すること。2月に公聴会。とても順調にいけば3月末、博士号取得。
それ以降 … 羽ばたいていった先で楽しくやれていますよう。オーバードクターは時間と気力と体力との戦い。
主に人を対象とした実験や調査を行い、数値や発話、自由記述などのデータを分析します。取り扱うデータは大きく「量的データ(数値で表されるデータ)」と「質的データ(数値で表されないデータ)」に分けられ、取得や分析の方法が異なります。ゼミの中で問題意識を深めていく中で、設定した課題やゼミ生の希望などを勘案しながら、どちらのアプローチでやるかを決定します。それぞれのデータの特徴は この記事 としてブログに書いてみました。どちらにしても重要なのは、「分析できるデータを取る」ということです。言い換えると、闇雲な計測やインタビューなどを試みると、まともに分析できないことが多く、徒労に終わります(もちろん、「これでは分析できない!」という地獄を実感することも1つの重要な学びではあるのですが)。
したがって、本番のデータを取る前の準備として、綿密な研究計画を練ることが重要です。この計画の中には分析の方法や、その分析を行えばどのような結果が想定されるのか、そうして得られた結果にはどういう意義があるのか、といった出口戦略も含みます。そのため、研究の背景やロジックを固めるための文献購読だけでなく、分析の方法の学習であるとか、それに使う用のデータ取得も兼ねての予備実験・予備調査などをどれだけできるかが、卒論・修論・博論のクオリティに直結します。なので、かなり忙しいし、家では出来ない作業もそれなりにあります。
ここでお気づきの方もいると思いますが、学科も大学院も人文・社会・芸術系っぽい入試であるにもかかわらず、当ラボはどちらかというと理系と考えておいた方が誤解が少ないです(文系理系という区別は好きではないですが…)。研究内容によってはデータの整理や統計に加え、数学の他の単元やプログラミングなどが必要になる場合もあります(全員に要求するわけではなく、取り組みの状況や話していての様子、希望の進路などを勘案して判断します)。そのため、いわゆる理系適性がある人の方が当ラボの主な方法にはなじみやすいかもしれません。とはいえ、入試方式的に理系適性を求めるのが酷なのはこちらもわかっているので、さほど深刻に考える必要はありません。そもそも理系と言っても研究で必要な能力は大学受験で求められるものとは少し違いますし、必要に応じて学んでくれればいいですし、質的研究(インタビュー・自由記述の分析など)で攻める手もあります。
①好奇心・批判精神、②報連相のマメさ・速さ・正確さ、③早めの行動と計画性、④論理的な文章力・プレゼンテーション力です。これらは結局社会人に求められる資質でもあると思います。最初から持っていれば心強いことこの上ないですが、志望・配属の時点で十分でなければダメということはないので安心してください。というか、学部や大学院の入試に受かった時点で最低限はクリアしてると判断します。ゼミでの活動を通してさらに高めていきましょう。
① 自身を含む人々が普段何気なくやりすごしている行為や現象について疑問を持つ、好奇心や批判精神が重要です。これらを発揮しないと、研究を始める以前にテーマが決まりません。つきなみですが、「いついつの・だれだれは・なにが・どこが・なぜ・どのように」違う、あるいは「違うように見えても共通するところはないか」のようなことを考えたり、本や論文で調べたりという癖を付けていただきたいです。そしてできればさらに「こういうことではないか?」「こうなればもっといいのでは?」という仮説やビジョンまで考えを進めてみましょう。そうした疑問・仮説・ビジョンの中に新奇性、検証する価値、検証可能性の3つを備えたものがあれば、それがテーマになります。
② 報告・連絡・相談のマメさ・速さ・正確さも重要です。当ラボでのデータは主に人を対象とした実験や調査によって取得します。実験や調査の対象者は知り合いにお願いする範囲で済む場合もありますが、外部の方に協力いただかないといけない場合もあります。実験の内容によっては、1人では験者をやりきれなくて、誰かに手伝いを頼まなくてはいけないこともあります。そうでなくても、教員とのやり取りが遅ければ、それだけ判断や研究の進みも遅くなります。このようにして、報連相は研究の出来に直結します。「孤高の天才科学者」はパフォーマンス科学ではおそらく無理ゲーです。まして学生さんは研究初心者なわけですから…。
③ 早めの行動と計画性も大事です。綿密な研究計画が重要と書いたように、準備の充実がクオリティを左右します。さらに、人を対象とした実験や調査を行って、その成果を学会や学術誌などで発表したい場合には、本番のデータを取り始める前に倫理審査という手続きを受け、研究計画を承認されていないといけません。倫理審査では研究計画の概要だけではなく、実験・調査で用いる刺激の例や回答フォーム、対象者に読んでいただく説明書や募集文面なども提出する必要があります。結構な分量があるので、初めての人にはかなり骨が折れる作業です。しかも審査結果が返ってくるのは提出してから平均1ヶ月後ぐらいです。修正が必要になったときには、2ヶ月、3ヶ月とかかる場合もあります。なので早めの行動と計画性が重要です。ちなみに倫理審査は修論・卒論ではオプション(博論は事実上ほぼ必須)ということになっていますが、当ラボでは修論・卒論でもできるだけ提出してもらう方針にしています。せっかくやった研究をクオリティにかかわらず公開できないのはもったいないということと、切羽詰まらないうちに研究計画をしっかりめの文章にしておけば、それが論文の骨格になり、書きやすくなるためです。
④ 論理的な文章力・プレゼンテーション力も欠かせません。成果を論文にまとめるときや発表会で必要なのはもちろんですが、面談や普段のゼミで自身の考えを伝えるのでも、倫理審査の書類作成でも、実験協力者への課題説明などでも、それらが欠けていると内容が十分に伝わりません。間違って伝わるようなことがあったら増して大変です。ゼミや報連相の機会にバシバシつっこませていただきます(怖がらないでくれるとうれしいです)。