日本プロ音楽録音賞は音楽文化と産業の発展の一翼を担う録音エンジニアが制作し応募した音楽録音作品について、エンジニアが有する音楽に対する感性、技術力等を評価することにより、授賞対象優秀作品および最優秀作品並びにベストパフォーマー賞を選定し、これに携わり制作を担ったエンジニアおよびベストパフォーマーのアーティストを顕彰することでエンジニアの技術の向上と次世代エンジニアの発掘を図ることを目的とし、表彰を行うものです。
 第28回を迎えた「日本プロ音楽録音賞2022」は、応募いただきました全135作品の中から審査委員会の厳正なる審査を経て各顕彰区分の優秀作品およびベストパフォーマー賞を選定し、12月6日(火)に『音の日2022』イベントの一つとしてKANDA SQUARE HALLにて開催した授賞式において、受賞者の顕彰および各部門最優秀作品の発表をいたしました
 
ここにその受賞作品およびエンジニアをご紹介いたします。

【審査日および本審査会場】

「Best Sound部門」
 2022年11月1日、2日、3日
 ソニー・ミュージックスタジオ 5st

Super Master Sound部門」
 2022年11月1日、2日、3日
 ソニー・ミュージックスタジオ st

「アナログディスク部門」
 2022年10月24日、25日
 ビクタースタジオ 202st

「Immersive部門」
 2022年10月26日
 サウンド・シティ ” tutumu "

「放送部門」(2chステレオ、マルチchサラウンド)
 2022年10月29日
 NHK放送センター本館CD-520st

【 受賞作品&エンジニア紹介 】
※作品&エンジニア紹介画像をクリックするとプロフィール・受賞感想がご覧いただけます。

Best Sound部門
クラシック、ジャズ、フュージョン

ミキシング・エンジニア:

塩澤 利安

日本コロムビア(株)
プロフィール

クラシック、ジャズの録音に深い興味を持つ。アーティストそれぞれの「魅力」と「感動」を伝えられる作品創りを心掛けている。

スタジオ録音とホール録音の両立、そしてソロから大編成、ステレオからイマーシブ・サラウンド、

PCM録音、DSD録音など、あらゆる録音を究めたいと努力の日々である。

過去に於いて多数作品の本賞を受賞。

《受賞の感想》
 
この度は名誉ある賞に選定して頂き大変光栄に思います。常に多くの目標を持って様々なレコーディングに臨んでいますが、「日本プロ音楽録音賞受賞」も私の目標の中の一つです。目標を一つ達成出来たことに心から喜びを感じております。
 今回受賞した作品は、2009年、ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールにおいて、日本人として初めて優勝され、これまでに参加した全てのコンクールで優勝を果たし、その圧倒的な演奏は、作曲家や共演者からの支持が厚く、世界的指揮者・小澤征爾にも絶賛され、日本を代表するチェリストとして国際的な活動を繰り広げている宮田大さんのアルバム作品からの1曲です。
 録音は都内レコーディングスタジオを使用し、同一フロアーで行いました。スタジオの空間を活かし、一体感を強調したサウンドが生まれたと思います。使用したマイクロフォンはDPA社の物を中心に使用したのも特徴的なサウンドの一つかもしれません。
 この作品に於いてどんな感動を引き出すことができるか、直感的な印象も大切にしながら最後の仕上げまでより良いサウンドを目指して努力をしました。何かを感じ取って頂ける作品となったのではないでしょうか。
 最後になりますが、素晴らしい演奏を創り上げた皆様、制作に携わった全ての方々に心から感謝いたします。ありがとうございました。

マスタリング・エンジニア:
佐藤

日本コロムビア(株)
《プロフィール》
1990年スタジオ業務に携わる。1993年マスタリング・エンジニアとなり現在に至る。

塩澤 利安

ミキシング&

マスタリング・エンジニア:

木村 正和
(株)インアンドアウト

《プロフィール》

1988 年、MIT studio 入社 1995 年フリーとなり、2015 年株式会社インアンドアウトを設立。

J.popからJazz・Fusion、 映画音楽やドラマの劇伴など、あらゆるジャンルを手がける。また、海外からミックスの依頼も多く、タイのバンド「ETC」のMVはYouTubeの再生回数が1300万回を超える。

近年はワールドワイドに活躍するドラマー、川口千里のプロデュースを手掛けるなど、プロデューサーとしても活躍する。

《受賞の感想》
 
この度は第28回日本プロ音楽録音賞優秀賞に私がミックスとマスタリングを担当させて頂いたマリーンさんの「(THEY LONG TO BE)CLOSE TO YOU」を選んで頂き、誠にありがとうございます。
 また、今回のアルバムに私を起用して下さったプロデューサーの吉田次郎さんとマリーンさんにも、この場をお借りして御礼申し上げます。
 アコースティック楽器の多い今回の様な楽曲を良いミックスに仕上げる為には、録り音が良い事が必須条件となりますが、その為には取りも直さず、ミュージシャンの出す出音(でおと)が良くなければ、われわれエンジニアがいくら良いマイクを立てても、良い音にはなりません。
 その意味でも、今回の楽曲に参加されているミュージシャン(Gt&Ba:吉田次郎、Apf:秋田慎治、Dr:川口千里、Cho:マーロン・サンダース)の紡ぎ出す音は極上で、マイクを立ててフェーダーを上げれば、すでに完成された音になっていました。こうなると私の仕事は殆ど無く、多少のバランスを取る事と色付けをする程度でミックスは完成です。もちろん、その極上の音を最高の状態でパッケージする技術と、2MIXに落とし込む技術は長年の経験が生きるところですが、今回はその部分が評価されたのかと認識しています。

 また、昨年の第27回では私がプロデュースしている川口千里がベストパフォーマー賞に選ばれ、今年は私の手がけた作品が優秀賞を受賞という事で、今後もこの賞に恥じぬ様、精進していきたいと思います。

木村 正和

Best Sound部門
ポップス、歌謡曲

マスタリング・エンジニア:
酒井 秀和

(株)ソニー・ミュージックソリューションズ

《プロフィール》

1995年、ソニー・ミュージック信濃町スタジオにてマスタリングキャリアスタート。

2003年よりソニー・ミュージック乃木坂スタジオにマスタリングエンジニアとして所属、現在に至る。
《受賞の感想》 
 
この度は、第28回日本プロ音楽録音賞、Best Sound部門「ポップス、歌謡曲」部門にて最優秀賞にご選定いただき、誠にありがとうございます。授賞式では審査委員の三浦様から過分のお褒めの言葉をいただきまして、大変恐縮に存じます。
 今回担当した受賞曲「Baby I love you so」はシンプルな構成ながら、力強いリズムを主体に表情豊かなヴォーカル、開放感あるサウンドスケープを持つ楽曲です。それぞれの音は絶妙な距離感で躍動し、有機的で一体感あるグルーヴを作り出しています。
 曲が展開していくごとに高揚感が増していくミックスバランスは素晴らしく、厚みのある各音は呼応しながらしっかりと組み上げられています。
 マスタリングではこの楽曲が持つ本格的な音楽観を、いかに魅力的に伝えるかを念頭に作業しました。ヴォーカルとリズムの動き、質感に留意しながら、細かな音のニュアンスまでも見えるようにアプローチしています。
 近年はCD以外のプラットフォームも増え、マスタリングに対する解釈も多様化していると感じます。どんな環境下で聴いても音楽の素晴らしさを伝えられる音作りを目指して、日々精進していきたいと思います。
 清水翔太さんの作品は2008年のデビュー作品からミックスエンジニアの金子実靖さんと長年、数々の作品を担当してまいりました。今回この様な栄誉ある賞を頂き、金子さんをはじめ、これまで関わられた多くの方々に厚く御礼申し上げます。

ミキシング・エンジニア:
金子 実靖

GIALLO PORTA

《プロフィール》

ベーシスト、トラックメーカー、コンポーザーを経て1996年よりエンジニアキャリアをスタート。

2003年、GIALLO PORTA設立。 以降、多くのJ-R&B作品に携わる。

酒井 秀和

ミキシング・エンジニア:

橋本 茂昭
(株)スマイル音楽出版

《プロフィール》

1988年スマイルカンパニー入社

1991年シンセサイザープログラマーデビュー

《受賞の感想》
 この度は、最前線に立っている方々に審査していただき、大先輩の方々に名誉ある賞をいただけて本当に光栄です。
 今回の受賞は手伝って頂いたスタッフのお力添えが有ったからこそであり大変感謝しています。
 私はシンセサイザープログラマーを仕事としていますが東京に出てきた時はレコーディングエンジニア志望でした。
 昔からレコーディングエンジニアをやりたい気持ちも有りましたが一度に二つの仕事をやるのは不可能だと思っていましたが今回山下達郎さんから「エンジニアをやってみないか」の言葉で奮起してこの作品にエンジニアとしても関わる事になり長年の夢を叶えて頂いた達郎さんには大変感謝しております。
 この作品で気を配った点は何より歌を大切に、そして曲の流れを歌詞の世界観に沿うようにしたことでした。
 しかしこの作品を作るにあたりプレッシャーとの戦いでした、吉田保さんをはじめ先輩エンジニア方が作り上げてきた山下達郎サウンドのクオリティーに追いつく為に試行錯誤の毎日で、躓きそうになったときはシンセサイザープログラマーの際見てきた多くのエンジニアの方々の仕事を思い出し今回のアルバムの製作で先輩方のノウハウを参考にさせて頂きました。
 今後も今回頂いた日本プロ音楽録音賞を再び頂けるよう精進して頑張ります。
 ありがとうございました。

マスタリング・エンジニア:
菊地 功    
(株)ミキサーズラボ

ワーナーミュージック・マスタリング

《プロフィール》

モウリスタジオ、ワーナーパイオニア、ハミングバード、ワーナーミュージック・ジャパン録音部を経て、2000年ミキサーズラボ入社、 バイタリティあふれるマスタリングワークを展開中。


アシスタント・エンジニア:

林 嘉史
(株)プラネット・キングダム

《プロフィール》

1998株式会社プラネット・キングダム入社

橋本 茂昭

ミキシング・エンジニア:
中村 涼真

フリーランス

《プロフィール》

レコーディングエンジニア。ギタリスト。深田晃氏に師事。(2015年~2018年) 古賀健一氏に師事。(2019年~) BLANKEY JET CITYが好き。

《受賞の感想》 
 この度は、私が目標にしていたプロ録の優秀賞を頂き、誠に光栄に思います。
 
この道に足を踏み込んだ当初は仕事がうまく進められず、師匠やクライアント様に多大な迷惑をかけておりましたが、皆様の丁寧なご指導により優秀賞を受賞することができました。
 
5年前、私はオーディオ協会が開催する、学生の録音コンテストで最優秀賞を頂きました。その催しの隣でプロ音楽録音賞の授賞式が行われており、いつかプロになって音の日の式典に出たいと強く思っていました。今でもその時授賞式で聴いた、エンジニア ニラジさんの素晴らしいミックスが頭に残っています。
 
ARROWは新しいポップスのサウンドを目指そうと切磋琢磨していたコンポーザーの下村さんとの努力の結晶です。「ありのままでいることさえ難しい時代になったね」という一文から始まるこの歌詞は、2022年のネット社会を表す言葉だと思いました。インターネットが発達して音楽がエコノミックに消費される中、大切に音楽を作ることの尊さをこの楽曲で再確認しました。
 
私はこれからも音楽業界に希望が溢れるように腕を磨いていきたいです。エンジニアリングはアーティストの心の近くで行うものなので、調和をもって音楽を作る、そんなレコーディングエンジニアを目指していきたいです。

中村 涼真

ミキシング・エンジニア:
原田 しずお  

(株)ソニー・ミュージックソリューションズ

《プロフィール》

日本工学院専門学校を卒業後、ソニー・ミュージックスタジオへ。

YUKI、加藤ミリヤ、ZILLION、Tani Yuuki、SIX LOUNGEなどを手掛ける。

《受賞の感想》 
 この度は名誉ある賞をいただき、心から光栄に思います。
 チームみんなで頑張って作り上げた楽曲がこのように評価していただいたことは、大変嬉しくまた今後のエンジニア人生での大きな励みになります。
 この「ZILLION」というグループはまだ結成間もないですが、男女混合で若さ溢れるパワーに満ちたグループだと思っています。
 他の楽曲も多ジャンルにわたってグループの新たな可能性を探りながら、より良い楽曲を求めて毎回楽曲づくりに励んでいます。
 この楽曲もどうにか少しでも多くの人に届けばいいなと、もがきながらミックスした1曲で、今回の受賞を機により多くの方にこの楽曲が届いてくれたら幸いです。
 まだまだエンジニアとしても未熟で、今回の受賞もこれからの長い道のりでの一つの通過点だと感じております。
 日々世の中に生み出される作品を聴いては自分の実力不足を感じながらも、より高い目標を設定できる環境に身を置けていることには感謝しています。
 今後もより良い作品、より良い音を求めて、日々邁進していきたいと思います。

原田しずお

Super Master Sound部門

ミキシング&マスタリング・エンジニア:
長江 和哉

名古屋芸術大学

《プロフィール》

名古屋芸術大学音楽学部声楽科卒業後、録音スタジオ勤務、番組制作会社勤務等を経て、録音制作会社を設立。2006年より名古屋芸術大学 専任講師。2014年より准教授。サウンドメディア・コンポジションコースで録音の授業を担当。研究活動として、ドイツのトーンマイスター養成の教育とトーンマイスターによる音楽録音の実践について研究調査を行なっている。また、音楽録音におけるマイク配置の研究に取り組んでおり、2018年にオーケストラ楽器のマイクアレンジ比較収録、2022年にグランドピアノのマイク配置についての共同研究をベルリン芸術大学、東京藝術大学と行っている。
AES (Audio Engineering Society)日本支部役員
VDT Verband Deutscher Tonmeister 会員
http://kazuyanagae.com

《受賞の感想》 
 
この度、Super Master Sound部門で最優秀賞をいただくこととなりました。しかし、この賞は、私が頂戴するというよりは、Vocal情家みえ氏、Piano後藤浩二氏、Bass本川悠平氏、制作の福谷円氏、調律の三ヶ田美智子氏、そしてアシスタントの高橋未那美氏、そして、サポートしてくださったみなさんとの一期一会の「チーム」全員で頂くべき賞であると感じています。
 2014年に録音させて頂いた情家みえ氏のファーストアルバムは、スタジオで収録しましたが、今作については、情家みえ氏のヴォーカルに対して、後藤浩二氏のピアノと本川悠平氏のベースが空間的な印象を持ちながら「包み込むようなサウンド」で表現したいと考え、ホールで録音することを提案しました。
 そのホールは、長年、後藤浩二氏と懇意にされている調律師の三ヶ田美智子氏に、後藤さんの演奏にふさわしい音色を持ったピアノと空間がどこにあるかを相談するところから始め、三ヶ田氏のアドヴァイスにより名古屋市守山文化小劇場で行うこととなりました。一方でヴォーカルは、スタジオで録音しているような、クリアで深い印象にしたいと考え、自作の木製ブースをホールのステージに持ち込み、CUE Boxシステムを構築し録音しました。
 今回、このような録音手法を用いましたが、何より、ミュージシャンのみなさんの「素晴らしい演奏」と、「チームのサポート」がなければ、この作品は誕生しなかったと思います。このような録音の機会をいただきまして、改めまして感謝申し上げます。

アシスタント・エンジニア:
髙橋 未那美
(有)デジコム

《プロフィール》
2020年、名古屋芸術大学サウンド・メディアコース卒業。同年より有限会社デジコム入社。電子制御機器の製造、販売、音響機器のシステム設計及び設置工事等の業務を担当。2021年より有限会社デジコムの社員としてヤマハ株式会社にて勤務。長江氏の音楽収録にアシスタントとして参加している。

長江 和哉

ミキシング・エンジニア:
高田 英男
(株)ミキサーズラボ

《プロフィール》

1969年 日本ビクター入社(現JVCケンウッド)ビクタースタジオに配属

ビクタースタジオにて録音エンジニアとしてアイドル、ポップス、ジャズなど

アコーステック録音を中心に多くのヒット作品を手掛ける。

2001年ビクタースタジオ長

2016年(株)ミキサーズラボとエンジニアマネージメント契約&顧問就任

日本音楽スタジオ協会会長。
《受賞の感想》 
 第28回日本プロ音楽録音賞 Super Master Sound部門にて優秀賞を頂き、心より感謝申し上げます。「Another Answer」のアルバムコンセプトは、デジタル技術の進化により、誰もが音楽制作環境を持てる今、プロフェッショナルがスタジオに集まりアーティストの思いを如何にサウンドとして表現出来るか、それぞれが持つ感性の世界の音楽制作へ向けた挑戦でした。

 受賞した楽曲ですが、井筒さんからライブ的な雰囲気で録音制作をしたいとの話を頂き、出来るだけスタジオメインエリアに集まり、同時録音した作品です。

マイクへの拘りとしては、TOMのメインマイクに三研CUX-100K(単一指向性)を打面から少し離して響きの深さを表現、更にヴォーカルマイクとしてノイマンKMS-105(ライブ用、超指向性マイク)を使いクリアーなボーカルサウンドを目指しました。

 Take-1からノリノリの演奏で、録音現場を楽しんでいる雰囲気の中で録音が進みました。

 ハイレゾマスター制作では、キング関口台スタジオのマスタリングエンジニア/辻裕行さんに、音の深みを感じるDSD11.2MHzファイルを制作して頂いたこと、感謝申し上げます。

 井筒香奈江の音楽制作に対するAnother Answerを感じて頂けますと、有難いです。


マスタリング・エンジニア:
辻󠄀  裕行
(株)キング関口台スタジオ
《プロフィール》
1984年 有限会社サウンド・クリエーターズ(現・株式会社SCI)入社と同時にキングレコード株式会社・録音部に録音アシスタントとして出向その後転籍。録音エンジニアとしてジャズ、ロック、アニメ、純邦楽等を手掛ける。

2000年 株式会社キング関口台スタジオ入社 02年よりマスタリング・エンジニアとして、あらゆるジャンルの音楽を手掛ける。

高田 英男

Immersive部門

ミキシング・エンジニア:
古賀 健一
Xylomania Studio LLC

《プロフィール》

福岡県出身 青葉台スタジオに入社後、2014年フリーランスとして独立後、Xylomania Studioを設立。2020年DolbyAtmos対応スタジオに改修。 これまでにASIAN KUNG-FU GENERATION、ichikoro、Official髭男dism、D.W.ニコルズ、チャットモンチーのバンドサウンドからクラシック、映画音楽などの幅広いジャンルに関わる。 また、商業スタジオやミュージシャンのプライベート・スタジオの音響、機材コーディネイトアドバイスも手掛ける。 『Official髭男dism ONLINE LIVE 2020 – Arena Travelers –』の特典Blu-rayをDolby Atmosで収録。 国内最大級のオーディオ&ビジュアルアワード『VGP2021 SUMMER』企画賞を受賞する。

《受賞の感想》 
 
まず最初に2年連続で、Immersive部門を受賞出来たことを嬉しく思います。
 オファーを頂いた時、事務所やディレクター、プロデューサーのKOSENさんに「Dolby AtmosでMixすることを想定して、今出来る最高の録音をして欲しい」と言ってもらえたのが、何より記憶に残っています。
 チームの想いに、今回、最優秀賞という形で恩返しできたことに、少しホッとしています。
 この曲は、映画「20歳のソウル」の主題歌で、ステレオに限らず、映画館の5.1ch・Dolby Atmos・360RAでの公開が最初の時点で決まっていました。
 基本となる録音はDr・Ba・Gt・Pf・Stringsということで、天井高もあり、ハイトの情報を録るために3点吊りのマイクが自由に動かせる、VictorのStudio 401で行われ、弦の編成も基本は4422ですが、Atmosはスピーカーが沢山あり低域の厚みが欲しかったので、4444にしてもらいました。
 またミキシング作業もステレオの世界に先に閉じ込めるのではなく、Kenta Dedachiの素敵な声の空間を生かすためにも、Atmosと5.1chを先に取り掛かかったのも印象的です。
 このような細かいところまでサウンドファーストでご協力していただいたことにとても感謝しています。
 最後に、素敵なメロディーを遺してくれた浅野大義さんに深く感謝いたします。

セカンド・エンジニア:
眞鍋 広  
(株)JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント

古賀 健一

レコーディング&ミキシング・エンジニア:
奥田 裕亮   
(株)ソニー・ミュージックソリューションズ

《プロフィール》

株式会社バーディハウスに入社しレコーディングエンジニアとしてキャリアをスタート。

アシスタントエンジニアとして多くの現場を経験後、ソニー・ミュージックスタジオに入社。

日本での360RA配信サービス開始時より数多くの360RA作品を担当。
《受賞の感想》 
 第28回日本プロ音楽録音賞「Immersive部門」の優秀賞に選定して頂き大変光栄に思います。

 アーティストの遥海さんをはじめ、レーベル制作担当の分校さん、小川さん、田口さんには多大なご尽力を頂き、私の所属先であるSony Music Studios Tokyoのスタッフにも大変お世話になりました。心より感謝させて頂くとともに重ねて厚く御礼申し上げます。

 360RAという未知のフォーマットの制作に着手した当時は、従来の2chから比較すると表現できるフィールドが大幅に拡大され、アーティストやプロデューサーの意向も多種に渡るようになりました。そこで『如何にオーダーに答えて作品を具現化しリスナーに届ける事が出来るか?』と難しさを痛感した時期もあり、『どのようにしたら、どう聞こえるか?』『こんな聞かせ方をしたい場合は、どうするべきなのか?』など試行錯誤の連続でした。

 その中で今回受賞させて頂いた作品は、楽曲の性質や特徴を捉え360RAの持つ新しい可能性を用い、この楽曲の持つ表現力を高められた一曲に仕上げることが出来ました。

 シンプルなアレンジながらも躍動感が出るように各楽器の配置を意識し、アクセントとして頭上から足もとに流れるオブジェクトを展開しました。またMain VocalやBass等のトラックは帯域ごとにオブジェクトを切り分けて処理し、空間を広く使用することにより、同楽曲の2chとは違った表現が体験して頂けると思います。

 イマーシブというまだまだ可能性がある新しいフォーマットの中で、エンジニアとして一音楽業界人としてさらに高みを目指し、より良い作品を世に送り出すことの出来るよう尽力していきたいと思います。

 改めましてこの度は誠にありがとうございました。

アシスタント・エンジニア:

瀧野 悠仁
(株)ソニー・ミュージックソリューションズ 

《プロフィール》
2021年3月 専門学校東京ビジュアルアーツ卒業後、

株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ ソニー・ミュージックスタジオに入社。現在に至る。

奥田 裕亮

アナログディスク部門

カッティング・エンジニア:
手塚 和巳

東洋化成(株)

《プロフィール》

1969年03月 川崎市内の高校を卒業

1969年04月 東洋化成株式入社 現在に至る

《受賞の感想》 
 
日本プロ音楽録音賞 アナログディスク部門 最優秀賞に選定され大変嬉しく思います。
 選定された作品は、一年近く前に作業(カッティング)しました。私は、カッティングにあたってはマスター音源になるべく忠実にアルバムの主張を壊さぬよう心掛けてカッティングを行っています。
 「You’ve changed」MAYA についても同様な思いでカッティングを行いました。
 最優秀賞に選定され心から嬉しく思っています。
 これからもまた、この賞に選定されるようにカッティングを行っていきたいと思います。

ミキシング・エンジニア:
松下 真也
PICCLO AUDIO WORKS   
《プロフィール》
2006年 株式会社ウッディランド入社。宝塚サウウンズアトリエにてキャリアスタート。
2009年 STUDIO Dedéに移籍。
2021年 フリーランスとして独立。同年、株式会社ピッコロオーディオワークスを設立。
レコーディング、マスタリング、カッティング、テクニカルエンジニアとして現在に至る。

手塚 和巳

放送部門 2chステレオ

ミキシング・エンジニア:
野口 康史

日本放送協会

《プロフィール》

1992年、NHK入局

第17、18回日本プロ音楽録音賞 放送部門2chステレオ優秀賞受賞

第20、24回日本プロ音楽録音賞 放送部門2chステレオ最優秀賞受賞

《受賞の感想》 
 
この度はこのような賞を頂き大変光栄に思っております。
 このドラマは、ウクライナ情勢による世界の平和秩序が不安定な昨今と重なる『戦争』をテーマに描いた作品であり、エントリーした「ようこそ新宿」は主人公が番組終盤で戦火に散った仲間達と歌い踊る夢、幻のステージショーで、華やかな演出映像に相反する戦争の虚しさを表現したシーンでした。当時のリアル感を出す為のアプローチを制作や音楽監督の宮川彬良氏と検討し、このシーンの歌唱とバンド演奏の録音は、NHKのレコーディングスタジオを飛び出して緑山スタジオのドラマセット内で芝居と同時に行いました。時代背景を考慮して、歌唱者は超小型のイヤーピースを装着、PAスピーカーや演奏者へのフォールドバックスピーカーなどの拡声装置はほぼ使用せず、まさに戦時中の劇場空間を再現した現場での録音は、鳥肌が立ち、音楽の力を改めて実感しました。

 トラックダウンでは、各マイクの音のかぶりを最大限に活かし、同期クリックなしの刹那的な演奏をそのまま具現化するミクシングを目指しました。エンジニアとして原点回帰した瞬間でした。最後に、今回の作品は、ドラマチームとのコラボによって音楽と芝居、映像を互いに引き立てる相乗効果が生まれたTVだからこそ成しえる総合芸術だったと思います。関わった全ての皆様に感謝申し上げます。 

 ありがとうございました。


セカンド・エンジニア:
森山 芳晴

(株)SCI  
《プロフィール》
2002年(株)SCIに入社。ライブ録音業務を担当。
2009年 NHKに協力会社として出向。MA業務を担当。
2010年 NHK内レコーディングスタジオにて、レコーディングアシスタント業務を担当。
以降、ドラマ・各番組・音楽番組(TVスタジオ収録)などの、音楽録音〜トラックダウンまでアシスタントとして幅広く担当している。

セカンド・エンジニア:
吉野 桂太

日本放送協会  
《プロフィール》
1999年、NHK入局
主にドラマ制作の音声として、連続テレビ小説「なつぞら」、大河ドラマ「青天を衝け」、BS8Kドラマ「スパイの妻」など多数の番組を担当している。

野口 康史

ミキシング・エンジニア:
川付 明範

日本放送協会

《プロフィール》

2014年に初任地となる横浜放送局赴任。2017年に現在の部署へ異動。

《受賞の感想》 
 
この度はこのような賞を受賞することができ大変うれしく思います。
 約6年にわたって放送されてきた「シブヤノオト」の最終回生放送。出演は若者を中心に絶大な人気を誇り、音楽だけでなくデザインや映像をディレクション、セルフプロデュースするマルチアーティスト「Vaundy」。事前に募集した視聴者リクエストから一夜限りのセットリストを作成し、司会者も一切立てず、番組尺のほとんどを楽曲に費やしたライブ形式で放送しています。
 放送当日はVaundyのインスタライブから直接NHKの生放送番組視聴につなげたり、Twitterのコメントを紹介するなどSNSと連動した演出にも挑戦しています。
 番組は、Vaundyの部屋を模したセットからドラマ仕立てで始まり、楽曲が時系列を遡って紹介される流れの中で最初にリリースされた「東京フラッシュ」が生演奏で始まったり、ダンサーが入ったり、生火を使用した特効を使用したり、チップ降らしがあったりと「シブヤノオト」最終回にふさわしい華やかな放送となっています。そのような多彩な演出に負けないような音作りを心掛けました。
 今後も、引き続き視聴者に魅力的な番組を届けられるように研鑽を積んでいきたいと思います。

セカンド・エンジニア:
伊藤 文王

日本放送協会   
《プロフィール》
現在、NHK名古屋放送局に赴任。

フロア・チーフ:
中島 勇太

(株)ネオテック
《プロフィール》
過去の日本プロ音楽録音賞にてアシスタントエンジニアとして多数の受賞歴あり。

川付 明範

放送部門 マルチchサラウンド

ミキシング・エンジニア:
植松 俊子

日本放送協会

《プロフィール》

1988年4月 NHK入局、制作技術局番組技術部配属。1998年福岡放送局、2008年名古屋放送局、2014年NHKメディアテクノロジー出向等を経て、2017年より放送技術局制作技術センター所属。

《受賞の感想》 
 
この度は、このような賞を頂き、誠にありがとうございました。関係各所に感謝申し上げます。
 今回の応募曲「琉球幻想」は、1993年に行われたN響沖縄公演の為に作曲された、特別な曲です。早くからアンコール曲に決定し、イタリアの港町ジェノバ出身のマエストロが、沖縄音楽についても勉強して臨んだとのお話でした。コロナの影響もある中、沖縄県の本土復帰50年を機に行われたこの公演に対するN響の皆さんの熱意は、収録を担当した我々にも充分伝わってきました。それに応えるべく、その熱演を余すことなく録音しようと試みました。会場の沖縄コンベンションセンターは宜野湾にあり、海に隣接した沖縄らしさ全開の施設です。劇場は、客席左右の壁がガラス張りでカーテンが引いてあり、コンサートホールとしては残響が短めで、吊マイク回線も少ない等、オーケストラ録音にはやや厳しい状況でした。メインマイクを中心に、出来るだけオケの自然なバランスをそのままに、5.0で収録しました。NHKでは、クラシックのライブ録音は、オペラを除いては基本的にダイレクトミックスで仕上げます。今回も、この曲については、現場で収録した音に後から手を加えてはいません。(株)エキスプレスの音声中継車(卓はCALREC製ARTEMIS)は環境も良く、ストレスなくミックスに集中できました。アンコールでリラックスした様子のN響&マエストロの名演奏と、満席のお客様の温かい雰囲気がうまく伝わっていればと思います。

セカンド・エンジニア:
ヨハン・一郎・ベーマ―

日本放送協会  
《プロフィール》
2006年NHK入局、放送技術研究所配属。2010年秋田放送局へ異動。2016年NHKテクノロジーズ出向。2020年より放送技術局制作技術センター所属。 

アシスタント・エンジニア :
川田 昌彦
(株)エキスプレス
《プロフィール》
1996年4月 株式会社エキスプレス入社、クリエイティブ部配属(コマーシャル制作業務)。1999年4月より、同社技術部へ異動。現在、制作技術部所属(音声業務)。

植松 俊子

ミキシング・エンジニア :
山﨑 克哉   (株)放送技術社 北陸事業部

《プロフィール》

1988年 放送技術社 入社 

1992年 北陸事業所 放送部 制作技術 音声担当

《受賞の感想》 
 
第28回日本プロ音楽録音賞優秀賞に選定いただき、大変光栄です。審査員の皆様、関係者の方々に厚く御礼申し上げます。

 今回応募した「ハイドン・交響曲第100番【軍隊】第2楽章」は、当時欧州で流行していた「トルコ風」をモチーフにしたエキゾチックな調べと軽快な響きが特徴の楽曲です。

 クラシック音楽専用のホールとして設計された石川県立音楽堂コンサートホールの豊かな響きを存分に生かすため、メインマイクを含め 9 本の無指向性マイクをホール内に吊りました。特にアンビエンスには気を使い、4本のマイクを割り当てホールの「響き」を狙いました。定位付け用途のスポットマイクも加え、この楽曲のストロングポイントでもある打楽器のダイナミクスと弦楽器、木管楽器のバランスに留意して収録を行いました。

 ポスプロでは、過度なコンプレッションはせずできる限りフェーダーの操作でライブ感を損なわないようダイナミクスのコントロールをし、この楽曲の持つ清澄さとホール感をより印象付けるよう繊細に行いました。

 管弦楽の美しくエキゾチックな調べと軍靴の行進を感じさせる打楽器の迫力をサラウンドはもとよりダウンミックスステレオを視聴された方にも、まるでホールで音楽に包まれているかのような仕上がりになったと確信しております。

 今後もより上質な音楽を視聴者の皆様にお届けできるよう技術の研鑽に努めてまいりたいと思っております。


セカンド・エンジニア:

山中 康男
(株)アイネックス
  
《プロフィール》
1983年 朝日放送 入社
1989年 ラジオ技術部にて従事
1997年 制作技術センターにて従事
2018年 株式会社アイネックスに出向・兼務


セカンド・エンジニア:
山下 耕司
北陸朝日放送(株)
《プロフィール》
2007年 北陸朝日放送 入社
技術局技術部で従事

山﨑 克哉

ベストパフォーマー賞

「LOVEBEAT 2021 Optimized Re-Master」より
「LOVEBEAT」砂原良徳

 発売元:(株)ソニー・ミュージックレーベルズ 360 Reality Audio

《プロフィール》

1991年に電気グルーヴに加入、1999年に脱退。現在まで、5枚のソロアルバムをリリース。その他、プロデューサー、映画・CM音楽の制作 や、マスタリングエンジニアとしての顔も持つ。

2022年には TESTST(砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)を結成し活動を開始している。

《受賞の感想》 
 
8歳の頃に初めてカセットを用いて録音することを経験して以来良い音を求める欲求が強く、音楽製作やDJ活動をしていくなかで、知らず識らずのうちにエンジニアの領域に迷い込んでいました。最近ではミキシング作業やマスタリング作業の依頼も増え、今回は立体音響フォーマットでの作品リリースの機会に恵まれました。
 360 Reality Audioは生まれて間もない技術であり、ノウハウの蓄積も浅く独力でミキシングを行う事に不安はありましたが、ソニーの素晴らしい技術者の支援を得て何とか納得のいく形に仕上げることが出来ました。
 360 Reality Audio版LOVEBEATがこのような賞をいただいた事をとても嬉しく思っております。今後も自分が考える良い音に対する追求を続けていく所存であります。

砂原良徳