チバニアン模式地アクセス問題
日本ジオパークネットワーク運営会議 保全ワーキンググループでは,古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会の,市原市の養老川沿い,田淵の露頭における土地の借用などの活動について,ジオパーク活動の本質に関わる問題と考えて議論をしました.そして,古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会の一連の活動は,ジオパーク活動の趣旨から外れる問題のある行動と考えています.以下,その理由です.
古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会が借りている,チバニアンの模式露頭とされている場所は,以前より,古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会が,ジオサイトと考えてきた場所でした(会田信行・古関東深海盆ジオパーク推進協議会,2010).ジオパークにおけるジオサイトであるならば,ジオパーク活動を推進しようとする団体は,その場所で研究や教育,ジオツーリズムが適切に行われるよう最大限努力しなければなりません.しかし,古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会は,それに逆行するようなアクセスの制限をしているのが現状です.
ジオパークに限らずとも,一般的に地球科学の進展に有益な情報をもたらす場所(地質の見える露頭や地形)は,土地所有者の財産権を侵さない範囲において,適切に保全・利用されるべきものであります.そして,こうした地球科学的に価値のある場所の,適切な管理のあり方を,様々な立場の人とともに考えるのが,ジオパークの活動の主旨になります.今回のジオパークを目指そうとしている団体が,このジオパークの趣旨にまったく反する行為をしていることは,彼ら自身が,地球科学の科学的特質やジオパークの活動の趣旨を理解していないためと考えられます.
古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会にはジオパーク活動の本質を理解されて,適切な方法で科学の発展に貢献することを期待します.
日本ジオパークネットワーク運営会議保全ワーキンググループ
目代邦康(東北学院大学教養学部准教授)/ 大西 潤(とかち鹿追ジオパーク推進協議会)/熊谷 誠(白滝ジオパーク)/柴田伊廣 /竹ノ内 耕(糸魚川ユネスコ世界ジオパーク)/ 野村律夫(島根半島・宍道湖中海ジオパーク) /渡辺真人(世界ジオパークネットワーク個人会員)/ ほか有志
田淵の露頭の様子
関連ウェブサイト
- 菅沼悠介(国立極地研究所):千葉時代(チバニアン)の解説
- 産業技術総合研究所 地質調査総合センター:地層「千葉セクション」の審査状況について(2019.8.19)
- 地学団体研究会:チバニアンに関する声明 (2019.8.1)
- 産業技術総合研究所 地質調査総合センター:地層「千葉セクション」認定に向けた申請活動と研究進展の期待について (2019.7.30)
- 茨城大学:「チバニアン」誕生へ向けた申請活動について (2019.7.8)
- 日本地質学会:「チバニアン」に関する声明 (2018.7.1)
- 地球電磁気・地球惑星圏学会:2018年5月「チバニアン」報道に関するコメント (2018.5.24)