部門「緊急親子面談

第三部門は、登校力の低い児童生徒ISが欠席した時、また理由が明確でない欠席者に対してその日のうちに呼び出し、まず担任、次に学年主任、その後3日目に生徒指導主任による緊急3日間親子面談を行うものです。

親子面談の場では、学校側による親子への連絡事項と質問事項、助言事項等からなる。

 

第三部門では、理由のはっきりしないで突然児童生徒が欠席した場合、並びに、不登校になる可能性のあるISが欠席した場合に、当日に親子を呼び出して親子面談を行う。この時点では、担任や親は不登校になったという認識を持っていない段階といえる。親は自分の子供がISであるとは知らされていない。この段階で、緊急対応としての3日間にわたる親子面談を行う


具体的な手順・手立てとして、1)朝親からかかってくる電話応対の進め方、2)緊急3日間親子面談の進め方についてみていく。

1.電話応対の進め方

昨日まで来ていた児童生徒が突然欠席するとき、親からの連絡がくる。もしくは担任から電話で親に確認の連絡をすることになる。不登校の場合は欠席の理由がはっきりしないことが多い。親は担任に欠席理由を伝えにくい場合や、曖昧な場合が多くみられる。担任は事前に応対する内容・言葉がけを決めておくとよい。簡潔に3分ほどで終わるようにする。具体的には病気に訴えることがあり注意する。「風邪を引いた(症状が出る)」とか、お腹が痛い(心理的な緊張の可能性がある)といった場合である。このような場合不登校に至る事例が少なからず報告されている。

これまで緊急親子面談に対して教師に不満を言うとか、教師の呼び出しに反発するような事例はみられず、母親と子供が来校してきている。不登校をすでに何日も続けている場合は、親は教師や学校の対応に拒否や、不満、文句を言う場合があるかもしれない。だが、PISA(不登校激減法)方式ではこれまで親からの不満・文句は見られていない。その理由としては、①昨日まで登校してきて本日突然欠席する児童生徒を対象としているため、さらにはたまたま欠席しただけで「親にとって、不登校のために欠席したという意識、認識がない状態」と想定される。さらに、②ISには第一部門で親へのコンプリメント(ポジティブな言葉がけ)を行っているため、すでに担任と親との間で良い関係性ができている可能性がある。ポジティブなコンプリメントは担任と親の間での心理的距離を近づける狙いを持っている。

 2.緊急3日間親子面談の進め方

緊急3日間親子面談では、1日目(欠席の当日)は担任が担当、2日目は学年主任が担当、3日目は生徒指導主任が担当という順で、3者で順番に対応していく。担任は、学年主任や生徒指導主任の面談に最初のうちは同席する。親には複数で対応していることを印象付ける。個人の内面に関わる事柄(秘密等)に深入りすることは避け、理論的には、行動面を中心にして、応用行動分析、解決焦点化アプロ―チなどで対応するとよい。受容共感のカウンセリングは時間がかかるために避ける。緊急面談では、生徒や親への、連絡事項、質問事項、助言事項に絞って実施する。

面談を行うに際しては、当日都合のよい時間(できれば学校での勤務時間内)に親子を学校に呼び出す。家庭訪問を担任が避けるのは、ことの重大さを親子に知ってもらうためである。約30分間で終わるようにする。対応する記録様式を作っておく。担任は、6つの連絡事項や質問事項、助言事項を事前に用意しておく(市川・工藤,2017)。

1つ目は 今日教室であったことを伝える。

2つ目は 明日の予定を伝える。

3つ目は、子供の様子を尋ねる。

4つ目は、子どもの欠席理由を子供や親に聞く。

5つ目は 登校を促す。「しんどいと思いますが、心配だと思いますが」、これは、母性原理。「がんばって、くるようにしてください」、これは、父性原理。この2つの原理を必ず入れることが大切となる。教師は、「様子を見ましょう」等といった、待ちの姿勢はとらないようにする。

6つ目は、「今日は担任が対応したが、来ない場合に2日目は学年主任が、3日目は生徒指導主任が対応する」と親に伝えることである。

7つ目は、子供を連れてきくれたことに対しての「ねぎらいの言葉」をかける。

「忙しいところ来ていただき、ご苦労様です。さすがお子さん思いのお母さんですね」等というような、「ねぎらいの言葉」を伝える。

1~7までを、面談記録様式(市川・工藤,2017)にその過程を記録する。その記録様式の内容は、担任が記入したものを、順に学年主任、生徒指導主任が目を通していく。実際に面談に参加するのは担任、学年主任、生徒指導主任であり、教頭、校長は担任、学年主任や生徒指導主任の面談記録による報告を受けるだけとする。

 以上のような手順・手立てについては、すでに実効性が検証されており、作成された記録様式通りに実施する。その様式は共有化されていて(市川・工藤,2017)、修正する場合は3者で話し合って調整する。つまり、個人的な判断は避け、場当たり的で思い付きの対応をしない。

3日間で解決を目指す。そのためには3日間で95%~99%の解決実績をもつ先進校をモデルにして、それに倣って進める必要がある(市川・工藤,2017)。