公益財団法人 JKA 機械振興補助 2024-2025年度 複数年研究
「精密材料合成へ利用可能なプラズマフロー反応装置の開発」補助事業
公益財団法人 JKA 機械振興補助 2024-2025年度 複数年研究
「精密材料合成へ利用可能なプラズマフロー反応装置の開発」補助事業
研究内容・成果・今後の展望について
研究内容と成果
近年、持続可能な社会の実現に向けて、環境負荷の少ない化学プロセスや高機能材料の開発が求められている。プラズマは電気エネルギーのみで高活性な化学種を発生できることから、次世代の環境調和型反応技術として注目されている。しかし、プラズマ中で生成する活性種は寿命が短く、従来のバッチ式反応装置ではその能力を十分に活用することが難しいという課題があった。本研究では、反応時間や温度を精密に制御できるフロー化学技術に着目し、プラズマとの融合によって新たな反応場を創出することを目的とした。これにより、精密材料の合成や環境浄化技術への応用を目指した。
本研究では、ガス供給系、送液系、マイクロミキサーおよびプラズマ発生部を一体化したプラズマフロー反応装置を設計・製作した。装置開発にあたっては、絶縁性や耐圧性に優れた流路材料の選定を行うとともに、反応液とプラズマとの接触効率を最大化するための流体設計を実施した。開発した装置を用いて、ベンゼンからフェノールへの直接変換反応、導電性高分子の原料となるチオフェン類の重合反応、およびPFAS(有機フッ素化合物)の分解反応を検討した。その結果、プラズマとフロー反応を組み合わせることで、極めて短い反応時間領域における反応制御が可能であることについて、原理実証を達成した。
今後の展望
本研究で開発したプラズマフロー反応技術は、機能性高分子や電子材料などの精密材料製造への応用が期待される。また、反応に必要な主なエネルギー源が電気であるため、省資源・低環境負荷な化学プロセスの実現に貢献できる可能性がある。さらに、本研究ではPFAS分解への適用可能性も確認された。PFASは世界的な環境問題として注目されており、その除去技術の開発は社会的要請が極めて高い。本技術が実用化されれば、水環境の保全や環境浄化技術の高度化に貢献することが期待される。加えて、フロー反応技術の特長である連続運転を活用することで、研究開発から製造へのスムーズな移行が可能となり、新しい材料や環境技術の社会実装を加速させることが期待される。研究代表者は北海道大学において有機合成化学の研究基盤をもとに、フロー化学を基盤とした高速反応技術の研究に取り組み、有機合成反応の高速化や高効率化に関する研究成果を発表してきた。本研究は、これまで培ってきたフロー反応技術をさらに発展させ、プラズマ化学という新たな分野へ展開する挑戦的な研究として位置付けられる。従来のフロー化学研究が「反応の高速化・高効率化」を主な目的としていたのに対し、本研究ではプラズマ活性種という特殊な反応場を精密に制御することで、従来法では実現困難な物質変換や環境浄化技術への応用を目指している。基礎研究から社会実装までを見据えた研究として、これまでの研究成果を発展させる重要なステップとなるものである。
プラズマ発生と合成利用に関する共著論文
One-step conversion of benzene to phenol in plasma-irradiated benzene solution
Inagaki, Y.; Hayashi, Y. R.; Sasaki, K.; Takakusagi, S.; Okamoto, K.; Nagaki, A.; Shirai, N.
J. Appl. Phys. 2025, 138, 113301.