収容長期化を回避し、仮放免を弾力的に運用することに関する請願

(2019/3/10, 21:00 ウェブでの署名募集終了)

2019.3.19 東日本入管センター所長に提出しました

作成者: 東日本入国管理センター(牛久入管)の被収容者

作成日: 2018年10月30日


公開者および署名募集代行者: SYI (収容者友人有志一同)

公開日: 2018年11月12日

English / にほんご ふりがな

収容長期化を回避し、仮放免を弾力的に運用することに関する請願


日本国民の皆様

人権団体及び外国人の被収容者の支援団体の皆様

法務省東日本入国管理センター所長


私達は東日本入国管理センター(以下、当センターという)に収容されているものです。

私達は不法残留(オーバーステイ)や不法入国、あるいは刑罰法規違反といった、入管法の定める「退去強制事由」に該当する容疑で、入管による取り調べの結果、退去強制の処分が決定されたものです。

仮放免という制度はビザではなく、在留資格がなくても、人道的観点から、収容施設を出られるようにすること。または入管法の第52条の5により、退去強制による収容は送還可能のときまでとされているところから、その間に被収容者の健康上の理由や、出国準備等のために身柄の拘束をいったん解く必要が生じるので、このような場合に備えて設けられたのが、入管法の第54条に書かれている仮放免の制度です。

仮放免される者は、日本国の法律はもちろん、その他の仮放免に附されている条件を、厳正に、遵守することを必要とする。


私達は上記のことを十分に理解したうえで、以下の理由により、長期収容化を回避し、仮放免を弾力的に運用することに、請願いたします。


1 私達は帰国できない事情があり、在留継続を求めています。

私達は大多数が出身国で迫害の恐れを抱き、すでに難民申請をしております。私達は不法滞在や不法就労で捕り、送還を拒むために難民の申請をするものではありません。私達は日本国に生きる希望、活路を求め、夢と希望を抱いてやってきました。

または難民ではないものは、日本に長い時間を生活しており、家族があり、子供や奥さんや両親などが日本におり、家族と離れたくないので、一緒にありたいので、在留資格を求めております。


2 当センターはそもそも長期収容の可能な施設ではありません。

当センター収容所においては、居室とフロアの共用スペース(洗濯室やシャワー室、卓球台)、公衆電話3台、医師や看護師のいる診療室、家族との面会室がありますが、長期収容について以下に問題点を指摘します。

  • 言語、宗教、文化が異なる人々が狭い居室で同居して、トラブルやけんかがよくおきること。
  • 居室から共用スペースに出られるのは5時間40分(9:30-11:40, 13:00-16:30)と、かなり短いですが、そのうち40分間しか屋外で運動できません。
  • 給食は一日3回、朝食はパンとミルクかジュースで、昼食と夕食はお弁当です。お弁当にはライスと野菜スープと土曜の夕食のカレーが温かいものですが、それ以外はおかずが毎日冷たいものです。それに毎日繰り返し同じものがあって、消化器の病気にかからなくても食欲がなく、おいしいと言ってたべることじゃなく、生きるための食べることです。
  • 電話、公衆電話が設置されているが、それを使用するため、KDDIというカードを買わないといけなく、千円のカードで、日本国内に15分しか使用できません。つまり通話料の自己負担が高すぎるのだということです。
  • 面会、家族らとの面会のため、個室(五室、警察の面会室と同じ〔被収容者と面会者がアクリル板で隔てられる〕)と親子面会室(一室があり、オープンスペースの部屋、カメラ監視)があるが、面会時間が制限され、30分以内です。それに受付時間は平日のみで、土、日、祝祭日ができません。それゆえ私達の家族らにとって、土、日、祝祭日が面会できず、また仕事が終ってからでは、平日の仕事、学校などで面会できないため、面会に行くチャンスがほとんどなく、つまり家族らとの面会が困難です。
  • 空気環境と清掃の問題
    • 一日40分しか外に出られない収容施設ですが、室内の空気を入れ換える換気扇や扇風機や窓などの空気調節の汚れが要因で、空気環境が常に悪くなっている。また当センターには一室ごとにエアコンが付くのではなく、一つのブロックに一台のエアコンディショニングが付き、一室ごとに温度や換気を調整できずに、空気調節の汚れとともに空気が十分に流通できません。窓際はいまだに、天井の上から下へ流れる空気の出口や、換気扇や、扇風機や、網の窓などが、長期間ちゃんと掃除されていないせいで、ほこりや汚れがついています。空気環境が悪く、通気性もよわいのが原因で、気管の病気にかかる人が多いです。それに気管が丈夫でない人にとって有害な環境です。
    • 毎日、5時間40分使用する共用スペースですが一週間に一回しか掃除しません。掃除するとしても、ただ5分から10分で、かるくシャワー室を掃除しただけで終わりにされる。つまり収容施設内をきちんと掃除しないことは私達の健康に直結する問題です。
  • 医療問題
    • 病気を訴えても、なかなか受診させない。私達はまず医師による診察を希望する旨、担当職員に「被収容者申出書」を書いて出さなければなりません。しかし申し出ても当センターに医師は常駐しておらず、その診察室に医師の都合で医師が訪れるのは平日の短時間のみ(歯医者の場合は水曜日の午後のみ)であり、申し出てから診療にいたるまで時間がかかりすぎる(だいたい1か月以上、歯医者の場合2、3か月以上)。実際には、一週間に、一つのブロックの25人の中で、一人、二人しか “Doctor Check” を受けられない。350人以下の収容所は、一週間に多くても30人ぐらい受けられることになる。あるいは “Doctor Check” としても、患者の患部を見ることも、あまりにもなく、簡単な診断もせず、患者の申し出の内容を見るだけで、1分から3分しかかけずに終わりにされる。こういう “Doctor Check” にしても、1か月以上順番を待ち、申し出の人数が多いなどの理由で待ち時間がかかるのは、ただのいいわけだと考えます。
    • 症状が生じてから初診を受けるまで1か月以上を待たせる。つまりこれは医師が患者を診る前から、診療不要の判断を下しているということであって、症状の重篤さを診断するための診察さえ拒否されるということです。あるいは診察(Doctor Check)をきちんとせずに、ずさんな診察で適切な診療を提供せず、一時的に症状を抑えるために睡眠薬や痛み止めのような薬を処方するのが多いです。
    • 医療の劣悪さ、ずさんな診察で症状が悪化している状況であり、最終的に外部の医療機関で診察を受けることができるが、入管内部の医師が外部の医療機関で受診する必要があると判断してから、また順番を待ち、だいたい1か月以上もかかる。実際に外部診療する時には、〔移動時に〕手錠、腰縄を用い、人権侵害である。それにもかかわらず、診察に当たり、患者は自身の症状を直接に説明すること、及び医師に治療の方法を直接に聞くことが、あまりにもできない。それは、診察前に同行の担当職員がさきに医師と話して、診察後に患者を護送車にもどしてから医師と患者の治療の方法を相談したあとに患者に知らせるからである。それで内部と外部の診療のどちらでも、当センターの都合により、客観的に診療できない。加えて、外部の医療機関で受診させたあとは、継続的な診察ないし再診察の必要性があっても、外部の医療機関で再度受診させることを拒み続ける。やはり適切な診療ができないということであり、私達の生命と健康が脅かされているということです。当センターの予算、人員などの条件の言い訳は許されない。国の責任において適切に行うべきです。
  • 長期収容によるストレスと精神病
    • 言語、宗教、文化が異なる人々を、1つの部屋に何か月も何年も入れておき、365日、24時間を監視、管理される。刑務所よりひどいところで、毎日強制退去の不安、国内外や母国に離散している家族への心配で、私達はストレスばかりがたまり、いつ出られるか分からないと精神的にも追い込まれて、体調も崩れている。我慢の限界で、拘禁反応を発し、やむなくハンストをし、さらに自殺するまでに至ることは当然です。
    • しかし、それにたいして当センターは消極的に対策をするだけ。ストレスを解消するために食事のまずさ、運動時間の短さ、特に医療の劣悪さなどを改善することをせずに、ずさんな対応をしている。例えば、長期収容に抗議し〔共用スペースから〕居室に入らないことや、ハンストに対しては、ブロックチェンジし、または懲罰部屋に入れる〔同じブロックの者は自由時間に交流できるので、団結を壊すために入管は被収容者を別のブロックに移す。「懲罰部屋」は入管側の建前としては隔離室だが、そこでは食事、排泄、睡眠以外の一切の自由が許されず、反抗する者への懲罰として機能している〕。自殺を防ぐため、シャワー室内にひもをかけられるところをなくして、カーテンのようなドアに変える〔正確にはドアを透明なカーテンに変えた〕(実際に自殺者が出たのは場所の問題ではない)〔2018年4月にはインド国籍の難民申請者クマルさんがシャワー室で首を吊り自殺、5月にも別の被収容者が未遂に終わったものの同じ方法で自殺を図った〕。
    • 私達の仮放免の許可または不許可についての説明の要求に対するのは、仮放免の許可または不許可についての説明を拒み、帰国をするように説得する。心理的問題を訴える人に対しては、カウンセリングを受けさせることもあるが、そのカウンセラーは悩みを持つ人に対し、それを解決するための助言を与えることをするのではなく、最初から入管と患者との何らかの食い違いと思い込んで、入管の弁護のようにして、入管と協力して被収容者に帰国を促すようにしているものです。つまり、そのカウンセラーは「医師や看護師のいる診療室」を収容センターに置くという規定と同じで、ただの飾り物だということです。または「入国者収容所長及び地方入国管理局長は収容所等の保安上支障がない範囲内において、被収容者がその属する国の風俗習慣によって行う生活様式を尊重しなければならない旨が定められ、寝具の貸与、糧食の給与、衣類及び日用品の給与、物品の使用、衛生、健康の保持、傷病者に対する措置、面会の許可等、被収容者の人権に配慮した種々の規定が置かれている」(被収容者処遇規則第2条、他)というのも、ただの言葉で、飾り物でしょう。
    • 当センターにおける体制整備に取り組むだけではなく、それを客観的に、積極的に運用するべきです。もし、それをきちんと守ったら、昨年3月のベトナム人男性の医療放置による死亡事件、及び今年4月のインド人男性の自殺事件は、恐らく起らなかったでしょう。
  • 〔2018/11/24 2Aブロックの追加意見〕 入管法第61条の7(被収容者の処遇)を盛り込んで、缶詰やドライフルーツ等の現在許可されていない食品の差し入れや、携帯電話の使用も、認めてよいのではないか。これらの点でも、被収容者は一切の自由を与えられていない。


3 収容の根本の目的をはなれ、長期収容により心身を痛めつけて、被収容者を自主的な帰国へと追い込む手法。

収容は、退去に当たり強制送還のために待つわずかな期間だけ認めるのが、法律の趣旨と思料します。

しかし私達は、東京入管や名古屋入管など地方入管に収容され、長期間にわたり収容された後、当センターに移送され、長期間の収容継続をされています。それは本質的な問題としては、当センターに固有の要因というより、入管が収容の継続そのものを帰国強要の手段としてきたところにあります。つまり劣悪な環境下での収容、監禁によって自由を奪い、心身に苦痛を与えることで、私達の残留しようとする意思をくじくこと、これによって私達を自主的な帰国へと追い込むということが、収容施設の担っている事実上の機能なのです。実際に当センターの現状をみても、送還の見込みの立たない人を出所させず、いたずらに収容を長期化させています。難民申請者や、退去強制処分の取り消しを求めて訴訟中の者といった、法律上、入管が送還を実施できない人が一時的に収容を解かれる措置である仮放免を、何回も申請しても許可されず、1年半、2年、あるいは3年も過酷な環境下の収容所に留め置かれています〔現在、収容期間が5年以上に及んでいる人すらいる〕。


4 長期収容化について、日本にとって積極的要素が見当たらず、消極的要素が潜在しています。

私達は、たしかに入管法に何らかの違反をしたが、犯罪者ではありません。それでは、私達を一時的でも日本の社会に戻してはいけなく、長期収容する目的は日本国内の秩序を維持するためなのか、〔あるいは〕ただ保守的に退去強制に当てはまる者だったら国外に排除しないといけないからなのか。それとも、国内の治安と善良な風俗の維持、保健、衛生の確保、労働市場の安定等の国益の保持のためなのか、〔あるいは〕ただ私達の人身の自由をいちじるしく軽視する差別的な手法なのか。それは収容の実態及び日本国内の外国人の問題を多面的に見てから、考えなおすべきです。

日本における外国人の問題の現状を見ても、仮放免を許可された者と、外国人の犯罪者や不法滞在が増えている問題の原因とは、直接に関係しません。または、長期収容により仮放免者が減少しているのは確実であるが、それは外国人の犯罪者や不法滞在が減少することと同義ではありません。つまり、長期収容は外国人の犯罪者や不法滞在が増えている問題の解決方法ではありません。その問題を防止するのは、刑罰の限度を上げることではなく、問題の要因をみてやるべきです。例えば、来年からの外国人労働者の受け入れ拡大について、制度や対象者が変っても、受け入れ方を変えないままで、外国人労働者の権利を守れなかったら、またその者が受け入れ機関から逃げて不法滞在になります。古い者を国から追い出しても、新しい者がまた違反する状態を続けると、解決できない問題になるのではないでしょうか。

その上、長期収容によっても私達の意思を変えることはできず、ただ私達や私達の家族を苦しめるだけであり、日本人と外国人を分断し、差別と排外主義を醸成することです。仮に入管に強制送還されても、出身国で迫害の恐れ、または〔日本に残した〕家族との離散にもかかわらず、〔さらには〕長期収容により崩れた体調、精神障害を一生もったままで、また新しい人生を送ることができるのか。

上記のすべての長期収容の理由は、何といっても言い訳であり、一切許されないことです。長期収容は人権侵害であり、世界人権宣言と難民条約を軽視し、さらに日本国の憲法(98条2項〔日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする〕)に反することです。


この請願書には、私達と、私達の自由の実現を応援している日本人の皆様が署名しています。私達が知っている日本は、人類の普遍的な価値である自由を愛する国であり、世界の模範でもあります。日本国民の皆様にも是非ともご理解いただき、収容長期化を回避し、仮放免を弾力的に運用するよう請願し、日本国民の皆様に深い謝意と敬意をもって本請願書を提出させていただきます。


平成30年10月30日

「収容長期化を回避し、仮放免を弾力的に運用することに関する請願」に署名する者

転記者: 柏崎正憲(SYI収容者友人有志一同

原文における語句や構文上の小さな間違い、および法律の説明にかんする不足は、断りなく修正または補足した。また〔 〕内は転記者による注記である。