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病理顕微鏡画像の大規模3次元再構成と微小環境解析

膵がん腫瘍の詳細な3次元構造を解析する研究です。細胞レベルの構造観察には顕微鏡画像が使われます。本研究では高分解能かつ広い視野を持つ大規模3次元顕微鏡画像を再構成するために,九州大学と共同で連続薄切切片の顕微鏡画像を多量に撮影することから始め,独自の3次元再構成法を開発し,腫瘍近傍の細胞レベルの解剖構造や機能分布を明らかにしつつあります。名古屋大学との共同研究で大規模並列計算による処理効率化も実現します。

悪性リンパ腫の細胞核の形態学構築

がん化にともなう細胞組織の形態変化の仕方をモデル化し,その度合いを定量評価する研究です。悪性リンパ腫における細胞組織の構造変化の仕方や度合いを定量評価する基準は,病理学において整備されているとは言い難い状況にあります。私たちは久留米大学病理学の先生方と共同で,個々の患者の細胞組織の異形度を定量評価する基準を構築する研究を進めています。これは因果推論や深層学習の説明可能性とも関連する研究です。

自由エネルギー原理を手掛かりとする固視微動のモデリング

ひとの視覚系において固視微動が果たす役割を自由エネルギー原理を手掛かりにモデル表現する研究です。ひとの眼球は一カ所を凝視しているときにも高周波で微動しており,この微動を止めると外界を知覚できなくなることが知られています。眼球の固視微動により受光素子の軌跡に沿った照度の空間パターンが経時変化パターンへと変調されます。固視微動の方向と大きさを外界のパターンに適応的に制御する機構を自由エネルギー原理を利用してモデル化することにより,新たな画像処理のあり方を考えます。

テンソルデータ解析の基礎

メディア情報,生体信号,バイオ情報,物性スペクトル,リモートセンシング,ウェブ情報,通信など社会で利用され,分析されるデータは複雑かつ多様です。テンソルデータ解析のトピックではそれらの多様なデータを「テンソル」として表現し,数理モデリングを行う手法について研究しています。主に,テンソル分解,非負行列分解,スパースモデリング,遅延埋め込み,ニューラルネットワークなどの数学的道具を用いた手法を得意としています。

自然画像の数理モデリング

自然画像は平滑性,スパース性,自己類似性のような特徴的性質を持つことが知られています。これらの自然画像が持っている特徴を数理モデルによってうまく定式化することがで,ノイズ,ボケ,欠損,低解像などの画像劣化要因を自動的に取り除き元の画像を復元することができます。このトピックでは,自然画像の特徴を過不足なく表現できるようなより良い数理モデルの探求を目指しています。主に,自然画像の自己相似性に着目し,その表現に関係する畳み込みや遅延埋め込みなどを用いたアプローチを研究しています。

数理モデルに基づくPETイメージング法

PETイメージングは被験者体内にリガンドと呼ばれる薬剤を注射し,そこから放射されるガンマ線を検知することで,被験者体内における受容体の3D分布をボリューム画像として可視化する技術です。PETイメージングにおける観測系はラドン変換とポアソンノイズによってモデル化することができますが,SN比が低いためPETイメージングの問題は一般的に不良設定です。この課題に対して本研究室ではスパースモデリング,非負行列分解,Deep Image Prior,薬動態モデルなどの数理モデルに基づく高精度なイメージング法の開発に取り組んでいます。