はじめに
まずは簡単に私の経歴についてお話ししようと思います。私は司法書士科研究室に大学1年生の時に入り、日本大学法学部司法書士講座(課外講座)を受講、大学4年在学でこの試験に合格しました。司法書士科研究室には所属していましたが、正直大学1年生の時は友人と遊ぶことや趣味に没頭することに力を入れていたので本格的に受験を意識したのは大学2年生の夏頃だったと思います。大学3年生の時に受けた試験(令和2年度試験)は、あと一歩及ばず不合格になり、その悔しさをバネに令和3年度の試験に向けて勉強を重ねました。つきましてはこの場を借りて私が行っていた勉強方法や受験生時代のモチベーションの維持、答案練習会(以下「答練」)や模擬試験(以下「模試」)等の講座の活用方法などについてお話させて頂こうと思います。
勉強方法
私のとった勉強方法はそこまで複雑なものではなく、ある一つの方法を繰り返し行っただけです。簡単に紹介させて頂きますとまずテキスト(辰已法律研究所(以下「辰已」)の『司法書士試験 リアリスティックシリーズ*注1』を読み、一段落ごとにノートに一言メモを書きます。これを全科目行った後そのノートを読んでテキストの内容と場所を思い出すだけです。例えば、権利能力の範囲を勉強したらその内容を一言(ex 胎児の例外、学説条件二つなど)でまとめ、次勉強するときはテキストを開かずにそのメモを読んで内容と場所(ex ページの左上に記載があったなど)を思い出すといったことです。これをやるメリットは、試験本番の際初めて出た問題も容易に対処できることや覚えた知識の精度が高くなることです。本試験では過去問に類似した問題の他に初めて出る形式の問題があります。類似問題はほとんどの受験生が正解するので初見問題をどれだけとれるかが択一の合否の分かれ目だと思います。よく勉強方法でありがちな過去問を何度も解きなおすというものがありますが、確かにこれを行うことで過去問類似問題の正答率が上がることは間違いないと思います。しかし過去問ばかりに固執すると過去問で見たことある問題は解けるが初見問題の対処ができず、結果不合格の可能性が高くなります。テキストの内容を頭の中で思い出せるようになればどんな聞かれ方をされても、つまりどんな問題形式でも正解を導くことができますし結果的に記述対策につながります。記述も聞かれ方が違うだけでテキストの内容からの出題ですし、聞かれることは択一に比べて基本的なことばかりなのでテキストの内容を思い出すことが出来れば基準点を超えるだけなら容易です。実際私はテキストの知識だけで択一記述共に基準点を大きく上回り、合格することができました。ただ司法書士試験の記述は問題文が多く注意事項が独特なので答練、模試の問題を使って慣らすことはお勧めします。
勉強計画について
この試験で最も苦労することは試験科目*注2の多さに対しどのような配分で勉強すれば良いかという点です。私の所感ですが優先順位は、主要四科目>憲法、刑法>民事訴訟法>供託法、民事保全法、司法書士法>民事執行法、という順番です(捨て教科を作ったら合格しませんが、勉強の力の入れ具合を変えるのは重要です)。順を追って説明しますとまず主要4科目は出題数が多いので最上位に来るのは当然です。次に出題数が多い民事訴訟法なのですが、私は民事訴訟法より憲法と刑法を優先していました。理由としてはこの試験の基準点の推移をみてみると午後の択一は年度ごとにばらつきがあり難易度に差がありますが、午前択一に関しては一定で少なくとも難しくなることはありません。つまり午前択一のほうが安定して得点を重ねることができ、こちらで高得点を取ることができれば午後択一が難しくても問題なく合格点を取ることができます。実際に今年の令和3年度試験も午後択一が非常に難しかったです。私は憲法・刑法は確実に満点を取って、民法・会社法で2ミス以内に収めることを意識していました。残りの科目は上記科目とは異なり、毎年過去問類似問題しか出題されないことがほとんどなので入念に対策しなくても点数は取りやすいです。
モチベーション維持について
私は学生なので勉強時間を多く確保することができましたが、コロナウイルスの影響で毎日家だったのでメリハリがなくモチベーション維持が課題でした。対応策として通常なら一日の勉強時間や環境を工夫しますが私はあえて何もやりませんでした。つまり勉強したくなったら勉強し、やりたくなくなったら思いっきり遊ぶようにしていました。この方針は直前期も変わらないままでした。やりたくないときに勉強をしても効率が悪いですし本当に合格したかったら自ずと勉強をやると思ったからです。最終的には合格への思いが強かったのと勉強させてもらえることのありがたみを感じほとんど毎日勉強していたと思います。もしモチベ―ジョンで悩むことがあれば無理せず一度おもいっきり遊ぶのも一つの手だと思います。
模試や答練について
この試験の勉強のツールとして過去問以外にも答練や模試が挙げられます。日本大学法学部の司法書士科研究室に所属していることにより辰已の「記述パワーアップ答練」と「司法書士オープン」、「司法書士全国公開模試」を無料で受講できました。これらの模試や答練を受講する利点として新作の問題が解けること、時間配分の練習ができることです。上述したように本試験では過去問類似問題の他に初見問題が出題されますので、そういった問題を演習できるのはとても大きいです。また、科目別過去問の場合だと特定の分野の対策には最適ですが、試験全体の流れを把握することが出来ません。この試験の午後は時間配分が物をいいますから時間配分の練習は必須だと思います。模試や答練の成績自体は良いに越したことはないですがそこまで気にする必要はないと思います。仮にこの成績が合格に直結するならベテラン受験生は存在するはずがありません。
本試験当日について
私は今年の受験をラストチャンスと考えていました。仮に今年の試験に落ちたら司法書士試験は潔くあきらめるつもりでいたので後悔の無いように勉強してきました。実際これ以上何を勉強すればいいか分からないと言えるくらいまで教科書をやりこみ、これで落ちたら胸を張って不合格と周りに言えるくらいだったので、試験前日は開き直って普通に寝ることができましたし、当日もそこまで緊張することはありませんでした。午前に関しては上述したように30問割ることが無いように勉強しており試験中低く見積もっても31問は取れているだろうという認識だったので午前はそれなりの滑り出しでした。午後に関しては不動産登記法の択一が難しくあまり手応えはありませんでしたが、午前が少なくとも31問取れているつもりだったので25問くらい取れれば記述次第で合格するだろうと思いあまり不安にはならずいつも通り記述を解き始めることができました。記述は不動産登記法が難しく分量が多かったので自信はありませんでしたが、15時になったら途中でも気持ちを切り替えて商業登記法に移れたのが大きかったです。こういう気持ちの切り替えを模試とかで練習しておくと本試験でも慌てることはないと思います。商業登記法は例年より簡単だったので解き終わった段階で手応えがあり基準点は超えただろうという心境でした。本試験を終えた後はとにかく清々しかったのは覚えています。合格不合格は余り気になってはおらず、全力を出し切れたことに満足していました。
最後に
この試験の難しさは試験内容が難しいというより試験範囲の広さと合格点の高さだと思います。いかに大量の知識を正確に覚えられるかが合否の分かれ目であり、いかに基礎知識をおろそかにしないかに尽きると思います。少しくどいかなと思うくらい同じ知識を繰り返し勉強するくらいがちょうど良いです。合格に細かい知識や判例は不要で辰已の『司法書士試験 リアリスティックシリーズ』テキストの知識量で合格は可能です。つらいこともたくさんあると思いますがあきらめず基礎知識をつぶしていけば必ず合格できます。私の話が少しでも皆さんのお役に立てたのなら幸いです。