はじめに
私は現在、大学4回生であり、2回目の本試験受験(令和5年度司法書士試験)において合格しました。
私が初めて司法書士について知ったのは、高校2年生の頃でした。当時志望校を考える中、将来について母親に相談したところ、司法書士という仕事はどうかと勧められました。そのような経緯で日本大学に入学し、入学後すぐに司法書士科研究室に入室、1年生から辰巳の課外講座を受講し始めました。 私が1年(令和2年)の頃、世間ではコロナウイルスが蔓延し、最初の1年間はオンライン授業でした。1年生で法律の勉強も初めてであり,
勉強は実家で一人でやるといった環境ではなかなかモチベーションが保てず、ほとんど勉強しないといった週がざらにありました。しかし講座だけは毎週受け続けていました。講座は大澤クラスを受講しており、3色のマーカーを重要度別に使い分けるスタイルで、視覚的に分かりやすい形式だなと感じていました。このやり方は合格するまで使わせていただきました。また、初学者にも分かり易いように、他の物に置き換えて説明するなど、かみ砕いて説明していただいており、退屈な時間にならず楽しく受講出来ました。最初の1年間は、この課外講座を受講することでモチベーションを保っていました。また、大澤先生に対してオンラインで質問することができたので、積極的に質問していました。今思えば、要領を得ない質問や稚拙な質問をしていましたが、大澤先生はどの質問にも丁寧に回答していただけるので、回答が返ってくるとしっかりテキストを復習し、理解するよう努めていました。
2年生になり、課外講座も終盤に近付いてきた頃、研究室のゼミに出席し、自分の勉強時間を毎日7、8時間確保するようになりました。1年生の頃は課外講座メインで勉強していたのに対し、この時期からは、自分の勉強時間とゼミの時間を軸に勉強するようになりました。本試験を初めて受験したのは、3年生(令和4年)でした。この試験では、午前24、午後21、記述は不登法が3分の2ほど書け、商業は全く書けないといった結果でした。私は大学在学中の合格を目指していたため、残り1年という状況でこの結果を見た時は、非常に焦りと不安を覚えました。卒業後でもいいかなと諦めすら感じていました。このような状況から、その1年後(令和5年)の試験では無事合格することが出来ましたが、3年の試験から4年の試験までの1年間は勉強した記憶しかありません。むしろそれだけ勉強してやっとギリギリ合格ラインに達したため、焦るのが少しでも遅れていたら今年の試験も落ちていたように思います。
大澤先生のイメージ
私の勉強方法
私が勉強する中で、特に意識していた点は、
テキストをできるだけ多く回すこと、使うテキストを変えない、テキストを読む際に関連するページや内容は逐一振り返ること、テキストを回す際にはできるだけアウトプットすること、自宅ではなく自習室や図書館で勉強する、常に耳栓をして勉強する、1時間ごとに休憩を挟む、休憩時はテキストを開いてから休憩に入る、休憩時間は15分から25分程度で抑える、休憩は仮眠をとる・階段を上り下りする・youtube等のSNSを見ない(松本先生の動画や勉強方法に関する動画はあり)・音楽を聴く、毎日の勉強時間を記録する、勉強時間を他の受験生と共有する、大雑把な計画を立てる
といったものです。
(択一編)
テキストをできるだけ多く回す
私が択一対策として行っていたのは、テキスト(参考書)を何週もする方法です。合格した先輩や講師の方から話を聞くと、合格までにテキストを20周や50周、人によっては100周ほど回したといった話を聞き、テキストを回すことが重要だと考えたためです。過去問を解くこともある程度必要だと思いますが、テキストの方が網羅性が高く、視覚的に覚えやすいといったメリットがあるため、どちらかというと過去問は最低限解き、テキストメインでの勉強をしていました。テキストは全ての科目において*注1リアリスティックテキストを使っていました。理由としては、リアリスティックテキストは構成がよく考えられており、表や図が沢山使われているため、視覚的に記憶するにはとても使いやすいテキストだと思ったからです。また、初学者に分かり易いようかみ砕いて説明されており、初学者が使うのに最適だというのも理由の1つです。人によっては、リアリスティックテキストだと情報量が少なすぎると考える方もいるようですが、私はリアリスティックテキストは合格するのに十分な情報量を扱っているテキストだと感じており、過去問や答練でテキストに記載のない知識はテキストに書き込むようにしていたため、それで十分に足りていたと思います。
(記述編)
まず、記述の対策として重要なのは、早めに始めることです。記述の対策は、試験に合格する以上、最後までつきまといます。何年も勉強している受験生で、択一は午前午後共に30問以上解けるのに毎回記述で落ちてしまうという方の話はよく耳にします。だからこそ早い段階で解法を確実に身につけ、合格するまで対策を続けるといったことをお勧めします。
記述の対策は不動産登記法の対策から入りました。時期的には、合格年の1年と5カ月ほど前から始めました。記述の勉強を始めるにあたり、まず、記述の雛形を覚えるのに特化した参考書を読み込み、一通りの雛形を暗記しました。その後、*注2田端先生が執筆なされている記述の基礎を学べる問題集を1週ほど回し、辰巳のパワーアップ答練や司法書士オープン、過去問に入りました。パワーアップ答練を始めたころは、まだ択一知識が身についていないこともあり、内容が全くわからなかったため、解法を身につけることに集中しました。解法については、司法書士科研究室の不動産登記法上級ゼミ(宇井ゼミ)に出席していたので、そこで教えてもらいました。解法を身につけるだけでもかなりの時間を要してしまいましたが、早い段階で解法の重要性を教えていただけたのは、とてもありがたいことだったように思います。なぜなら、解法が身についているかで記述を解く上での速さや正確性が圧倒的に変わるからです。また、令和5年の不動産登記法の記述は特にそうでしたが、年度によっては、出題形式や難易度が大きく変わることもあり、試験中に戸惑ったり、焦るといったことが起こり得ますが、解法を身につけることでその戸惑いや焦りが低減するといったメリットもあります。解法を身につけた後はひたすら答練や司法書士オープン、過去問を解いていましたが、ほとんどミスなく解けるようになったのは、合格年本試験の1,2カ月前でした。かなりギリギリでしたが、商業登記法に比べて不動産登記法の記述は解けるようになるまでにとても時間がかかるので、早めの対策をお勧めします。
商業登記法の記述対策については、ほとんど独学で身につけました。不動産登記法と同じように、雛形を覚えるのに特化した教材で雛形を暗記し、田端先生の記述の過去問を解き、松本先生の商業登記法の記述用の参考書で解法を身につけ、過去問を2周しました。解法は松本先生のものを参考にしましたが、ところどころ自分流にアレンジを加え、自分の解法を作りました。しかし、最後まで商業登記法記述は1時間以内に解ききることができなかったので、このアレンジが良かったのかどうかは分かりません。解法を身につけるのと兼ねて過去問を2週ほど回しましたが、これを始めるのが3月頃だったため、解法が身につくのもミスなく解けるようになるのもかなりギリギリでした。
*注2 司法書士試験対策 田端のパーフェクトユニット記述式必修問題集60 第2版
試験当日
試験当日の体調は最悪でした。当日は5時間ほどしか眠れず、倦怠感を感じながら試験場に向かいました。試験当日は早く起きる必要があるにも関わらず、早寝早起きを習慣にできていなかったのが問題かと思います。午前の問題は、事前に決めていた順序で問題を解き、見直しができるくらには余裕がありました。ほとんどの問題で全肢検討まではしませんでしたが、3,4肢くらいは検討しました。昼休憩の際には、手応えがどうだったとか、分からない問題があったとかは考えないようにしました。昼休憩は疲労を回復することや午後へ意識を向けることに集中したかったためです。また、テキスト等は読まずに軽く散歩しました。午後に関しては、予め決めていた時間配分(択一60分、不動産登記法記述50分、商業登記法記述70分)通りに解くため、頭をフル回転させ、択一は2,3肢の検討にとどめました。午後はとにかく時間がないので、時間配分、何肢解くのか、どの順序で解くのか、想定通り行かない場合の対策を事前に決めておくことをお勧めします。択一を50分で解き終わり、不動産登記法記述に入りましたが、ここで問題が起きました。例年と比べ、形式がところどころ変わっており、初っ端で抹消登記なのか移転登記なのかで迷ってしまいました。不動産登記法記述を解き終えた頃には残り50分程しかなく、商業登記法記述を解ききれないであろうことが確定しました。しかし、事前に商業登記法記述の時間がない場合も想定しており、第1欄だけ問題を読み、第2欄は別紙から書けそうなものを書くといった戦略で、なんとか記述も基準点を超えることができました。もし事前の想定がなければ、記述の分量にやられ、落ちていたかもしれません。
この問題形式、見たことない….…。
最後に
司法書士試験は、非常に膨大な範囲から細かい知識が問われるといった試験であり、そこが難易度を跳ね上げる一因になっていると思います。しかし、膨大な勉強量を確保し、勉強の仕方をある程度工夫すれば、在学中でも十分合格できる試験だと思います。在学中の合格となると、いわゆる充実した大学生活というものは、必ずしも送れないかもしれません。それどころか、勉強時間を確保するため、何らかの時間を犠牲にしたり、しんどいと思うこともあるかもしれません。そんな時は研究室の仲間や講師の先生方を頼るといいと思います。また、合格した時の自分を想像してみてください。司法書士試験に合格するには、相当な努力量が必要になります。だからこそ、勉強していく過程で得られるものは非常に大きく、一人の人間として成長できる貴重な経験になると思います。恐らく人生の中で、最も時間に余裕があると思われる大学生活を勉強に費やすということは、時間の使い方として非常に有意義なものであると思います。最後に、皆さんの合格を心から祈っています。