魚類をはじめとした水棲生物は,その長い進化史の中で,海洋から淡水域への進出を繰り返してきました.その淡水進出の途上ではしばしば海と川を行き来する「通し回遊性」が出現するとされます.通し回遊行動やその進化は,淡水進出に関わる生態学,生理学的メカニズムを理解する上で重要な現象です.私は,海洋起源ながらも淡水域への進出頻度が著しく,かつ様々な形態の通し回遊種を含むハゼ科魚類を対象に,生態学,比較生理学的研究を行っています.研究手法にとらわれないことをモットーに,フィールド調査から分子実験まで,様々なアプローチから研究を行っています.
日本には様々な顔をした河川が存在します.長い川,短い川,急な川,緩やかな川,濁った川,澄んだ川... こうした構造的,物理環境的要因は魚類の個体群にどのような影響を与えるのでしょうか?私は,海での成長を終え,様々な河川に進入後,様々な流程に生息するハゼ科やウナギ属魚類を対象に,河川環境に対する個体群の応答性を研究しています.特に,繁殖成功度やこれを反映するパラメーターを様々な河川で調査し,地域および河川単位での解析を行っています.さらに,性というパラメーターを加え,繁殖に関する生活史の環境応答性(敏感さ,ベクトル)が,雌雄によってどのように異なるのかを明らかにしています.