着物のガード加工について
ガード加工を施すことで水や醤油、雨などを弾くことができ汚れの付着を防いでくれる効果があります。技術も進歩しているため持続効果も長く、生地が硬くなってしまうデメリットも抑えられてきました。着物購入時または購入後にガード加工を施した場合、約3年~5年間はしみ抜きが無料になるサービスを行っているお店が多くあります。料金は8,000~12,000円が相場です。
もちろん当店でもガード加工を承ることができます。
ですが、当店では基本的にお薦めはしておりません。車のコーティングで例えると、車の場合は毎日乗るのもであったり、屋外駐車場の場合、雨ざらしだったりします。雨や汚れを弾くコーティング加工はとても有効かと思います。それと同じで、着物を毎日着る方であれば有効だと思います。ですが、特に振袖などは毎日着る方は少ないかと思います。ということは汚れが付着する機会も少ないということです。それならば何度か着用したあとに丸洗いや、シミ抜き加工をすれば良いと思います。
長くなりますが、
私が大学を卒業して最初に就職した会社(修行先)は、江戸時代から創業している老舗の呉服屋さん。働き始めて間もないころ、辞めた社員が担当していたお客様を引き継いで1週間後に、引き継いだ、あるお客様からの電話があり「お宅で買った振袖が凄く縮んで週末の親戚の結婚式に娘が着ることができない、どうしてくれるの!!」とお怒りの電話が、、、。私は入社2カ月目でまだ着物のことも、そのお客様のこともよく理解していないので、店長についてきてくださいと頼みましたが断られ、、、。一人でお客様の家に行くと、そのお客様の奥様と、近所のおばさまが5人も集まっていて当時22歳の私は集団リンチのように、おばさま達から集中攻撃を受けました。笑
確かに振袖の表地の身丈が7センチほど縮んで、裏地が弛んだ状態でした。
もちろん、振袖が縮んでいることは申し訳ないことなのですが、販売した担当者はすでに辞めて販売した当時(私の入社前)のことを私は全く知らない上に、なぜ縮んだのか?経験も知識も薄いので分からず。謝ることしかできず。それでも「どうしてくれるの!!」「なんでこうなったのよ!」と5人から一斉に言われたときには(近所の人は関係ないですよね?と心で思いましたが・・)世間は怖いと思いました。汗
結果、何が原因だったかを調査すると、ガード加工をした業者曰く、振袖を仕立てたあとにガード加工をしたことと、保管していた環境が原因で縮んだのではないかとの結論になりました。基本、ガード加工は仕立てをする前に反物の状態で行います。仕立て上がっている着物にもガード加工をすることもできます。すべての着物にガード加工が原因で縮むという現象が起きるのか?といえば極稀かと思います。ですが、私としてはトラウマなので、ガード加工は好きではありません。
また、最近も他店購入品の着物の「しみ抜き」依頼があったのですが、ガード加工がしてあることで綺麗にしみ抜きがでなかった事例もあります。ガード加工にも種類がありますので、加工をしたお店に依頼すればスムーズに「しみ抜き」の対応できるのですが、購入店が分からない、または閉業しているなど、他店に依頼しても対応できないケースがあります。
また、ガード加工をすると、どうしても生地が若干ですが硬くなります(私が触った感触です)。絹生地の上に薬品を被せるわけですから、元の生地と手触りが変わらないのは物理的にあり得ないです。絹は天然素材のため常に呼吸をしています。密閉空間に保管することが良くないのは、そのためです。
ガード加工は良くないということではなく、ガード加工をするのは、それなりの理由がない限り当店ではお薦めしません。