Research

研究の概要~イオントラップ量子技術について~

イオントラップ量子技術は浮揚した原子イオンを電磁波により操作する技術です。イオントラップ量子技術の未来の姿として、小さなイオントラップ量子コンピュータを量子光によって多数個つないだ分散型のアーキテクチャが有望視されています。これを実現するために、イオントラップ量子ノード、イオン―光インターフェース、そして量子光接続システムの三つのレイヤーそれぞれにおいて大きな課題を解決する必要があります。

イオントラップ量子技術の将来像

ナノフォトニクスによるイオントラップ量子ノードのモジュール化

光回路一体型イオントラップ

イオントラップ量子技術にはレーザーによる量子操作が欠かせません。必然的にミラーやレンズなどを堅牢な部品に固定して、頑丈なテーブル上にずらりと並べた光学系を多数構築することになりますが、これを多数個、例えば1万個用意するのは現実的ではありません。これをチップ上に量産できる形で実装する試みが光回路一体型イオントラップです。「電気/光ケーブルを挿せばだれでも使えるイオントラップ」を実現することが本グループの目標の一つです。

より安定なイオン-光インターフェースへむけて

原子イオンは光子の授受ができるため光領域の量子技術と相性が良く、 光共振器と原子イオンを強く相互作用させることにより原子イオンの量子状態と光子の量子状態を相互に転写する光量子インターフェースの開発も 盛んに行われています。従来は3次元的構成での光量子インターフェースが研究されてきましたが、本テーマでは半導体光技術を応用し、 光量子インターフェースを表面トラップ基板上に構築することによる光共振器のさらなる微細化と光量子インターフェースの改良を目指して 研究を行っています。

半導体ミラーによるイオン―光インターフェース

量子ネットワーク制御システム実証と遠隔量子ゲート

イオントラップ量子ノードの光接続および制御ハードウェアの概略

光子に量子情報を託して量子状態のやり取りをする、あるいは量子状態どうしを干渉させるなどして遠隔地での量子情報処理をおこなうのが量子ネットワークの考え方であり、その応用はイオントラップ量子技術においては避けられない分散型の量子計算や量子センシング、量子通信まで多岐にわたります。これはまだまだ原理実証の段階にありますが、イオントラップ量子技術はその主たる舞台の一つでした。

特に本グループでは上記の光インターフェースと光回路一体型イオントラップの技術を実装していく前提で、量子インターネットタスクフォース(QITF)など他の研究機関との連携のもとイオントラップ量子ノードを利用した量子ネットワーク実証実験を進めていきます。