有機固体若手の会 2018秋の学校

講師紹介

  • 阿波賀 邦夫 先生 (名古屋大学 大学院理学研究科) HP

「有機エレクトロニクスの基礎から最先端まで 」

<講師の紹介>

阿波賀先生は、世界初の有機強磁性体を発見されるなど、有機伝導体・有機磁性体をはじめとする開殻電子系有機固体 (有機ラジカル固体) の開発と物性解析で多大な研究成果を挙げてこられました。近年ではこれらの革新的な基礎研究を踏まえて、開殻電子化学種に由来する全く新しい作動機構をもつ有機トランジスタや光電変換素子の開発、さらには二次電池などの固体電気化学分野へも研究を展開されていらっしゃいます。ご講演では、有機エレクトロニクスの基礎から応用まで、最新の研究成果を交えながらわかりやすくご紹介いただく予定です。

  • 井澤 公一 先生 (大阪大学 大学院基礎工学研究科) HP

「輸送係数で見る強相関電子系 ~エキゾチック超伝導から異常金属まで~」

<講師の紹介>

井澤先生は、強相関電子系で見られる異常金属状態、異方的超伝導、臨界現象など、エキゾチックな量子現象に注目して精力的に研究をされてきました。「他のグループでは簡単に真似できないようなこだわった実験を徹底的にする」というモットーのもと、角度分解熱測定を中心とした多重極限環境下での物理学実験を行われています。その研究対象は、有機・無機の垣根を超え、特にET系超伝導体を含む異方的超伝導体では熱測定を用いて超伝導の対称性を決定するなど精密物性測定において第一線でご活躍されています。ご講演では、精密測定から迫るエキゾチックな物理の世界をわかりやすくご紹介していただく予定です。

  • 圓谷 貴夫 先生(熊本大学 大学院先導機構) HP

「第一原理計算を用いた有機固体の研究:基礎から応用まで 」

<講師の紹介>

圓谷先生はこれまで、第一原理計算を用いた分子性導体、単一成分分子性結晶、遷移金属水素化物などの電子状態・磁性に関する研究を精力的に行われてきました。従来用いられてきた交換相関汎関数に替わるハイブリッド汎関数に基づいた計算を行い、実験結果と整合するバンド構造を得ることに成功されています。また、最近では水素結合を含む分子性導体の研究も行われています。ご講演では有機固体の第一原理計算の基礎・応用、低エネルギー有効模型の構築、理論計算からの新物質の予言・提案などについて最新の研究成果を交えながら解説していただく予定です。

  • 小林 玄器 先生 (分子科学研究所) HP

「ヒドリドイオン伝導体の基礎とエネルギーデバイスへの応用展開 」

<講師の紹介>

小林先生は、これまで固体化学を基盤にした無機酸化物の新物質開発、またそれらの電気化学デバイス応用に関する研究に従事されてきました。特に、最近ではヒドリドイオンと酸化物イオンが結晶格子内に共存する酸水素化物という物質群に着目され、ヒドリドイオンのみがイオン伝導する"ヒドリドイオン伝導体"を世界に先駆けて開発されるとともに、これを用いた全固体型電気化学デバイスの作動原理を実証されました。ご講演では、ヒドリドイオンとは何か?といった基礎から、ヒドリドイオン伝導のメカニズム、エネルギーデバイス応用への展開まで分かりやすくご紹介いただく予定です。

  • Natalia Drichko 先生 (Johns Hopkins University、東京大学物性研究所客員教授) HP

「Experimental evidence for a quantum dipole liquid in an organic Mott insulator 」

<講師の紹介>

Drichko先生は磁気的な相互作用に関連した電子間の強い相互作用によってもたらされる、特に超伝導や量子スピン液体といった基底状態に注目され、光学測定を中心とした実験手法で研究をされています。特にラマン測定ではその長所を生かし、フラストレート磁性体における格子変位や磁気構造の決定に貢献されてきました。 近年は有機量子スピン液体物質におけるダイマー内自由度に着目され、磁性と誘電性とが協奏する物理に研究を展開されています。講演では、光学測定から迫る量子スピン液体の基礎から先端のまで、最新の研究結果と共にお話いただく予定です。