第04回 医療AI
ベイズ推定と

モンテカルロ法入門


1.はじめに

本講義では自然言語処理(NLP)分野で有名な岡山大学の竹内先生にベイズ推定とモンテカルロ法について講義をしてもらいました。 医療統計の処理方法は多岐にわたりますが、その中でも理解が難しいベイズ推定とモンテカルロ法について詳細に説明していただきましたので、貴重な講義内容となります。

モンテカルロ法は、ランダムなサンプリングを用いて、複雑な問題を解決する方法で、確率的なシミュレーションや統計的推論に広く使われています。 たとえば、ある多次元関数の積分を求めたいとします。多次元の積分は、一般に解析的に解くことが困難であり、数値的な計算が必要です。モンテカルロ法では、関数の積分範囲内にランダムに点を打ち、その点の関数値を平均して積分の値を推定します。数値計算以外にも、シミュレーションや最適化など、多くの分野で活用されています。例えば、物理学や経済学など、自然現象や社会現象のモデル化、医療統計にも用いられています。

== 参考資料

① 講義動画 [リンク 1, 2, 3, 4]

② Code:Google Colaboratory [リンク]

③ 竹内先生ホームページ:Takeuchi Lab [リンク] , リサーチマップ [リンク] 

1.講義内容説明

ベイズ推定とモンテカルロ法は、確率的な問題を解決するための異なるアプローチです。

ベイズ推定は、データをもとに未知のパラメータを推定するための手法で、ベイズの定理を基礎としています。ベイズ推定では、事前分布と呼ばれるパラメータについての確率分布を定義し、観測データを用いてこの事前分布を更新することで、事後分布を推定します。事後分布は、パラメータの値がどの程度確率的に正しいかを示す確率分布であり、推定値はこの確率分布から得られます。

一方、モンテカルロ法は、シミュレーションを用いて確率的な問題を解決する手法です。モンテカルロ法では、ランダムなサンプリングを用いて、確率分布からサンプルを生成し、そのサンプルを使って目的の量を推定します。モンテカルロ法は、確率分布の形状が複雑な場合や、多次元空間での積分計算が困難な場合に有効な手法です。代表的な手法としては、Markov chain Monte Carlo (MCMC) があります。

【ベイズ推定の医療統計への応用例】

・治療効果の推定

ベイズ推定を用いることで、ある治療法の効果を推定することができます。例えば、ある薬剤の効果を調べる臨床試験で、患者の回復率が得られた場合、ベイズ推定により、薬剤の効果の事後分布を推定することができます。この結果をもとに、治療法の有効性を判断することができます。

・診断テストの精度の推定

ベイズ推定を用いることで、ある診断テストの精度を推定することができます。例えば、ある疾患を判定する診断テストの結果が得られた場合、ベイズ推定により、そのテストの感度や特異度などの精度指標の事後分布を推定することができます。

【モンテカルロ法の医療統計への応用例】

・治療戦略の最適化

モンテカルロ法を用いることで、ある治療戦略の最適化を行うことができます。例えば、ある疾患に対して複数の治療法が存在する場合、それぞれの治療法の効果や副作用をシミュレーションによって評価し、最も効果的な治療戦略を決定することができます。

・リスク評価の実施

モンテカルロ法を用いることで、ある治療法や手術のリスク評価を行うことができます。例えば、ある手術の合併症の発生率をシミュレーションによって評価し、患者にとって最も安全な手術方法を決定することができます。

ベイズ推定とモンテカルロ法は、ともに確率的な問題を解決する手法であり、両者はしばしば組み合わせて用いられます。例えば、MCMCによって得られたサンプルを用いて、ベイズ推定による事後分布を推定することがあります。

これらの方法は、患者の健康状態の評価や治療法の選択など、医療における重要な意思決定のサポートに役立っています。

2.講義動画

第一部

4.質疑応答

第004 竹内先生講義 Q&A

5.アンケート