研究紹介



ナノ生体材料学研究室(岡村研究室)の方針

1ナノメートルは、10億分の1メートルというごく小さな世界。ナノスケールの材料を機器等に応用する技術をナノテクノロジーと呼びます。ナノ材料は比表面積(m2/g)が格段に増大するため、これを化学反応場の視点から鑑みれば界面反応効率が桁違いに向上する構造です。したがって、従来では成し得なかった機器の超小型化・軽量化・コストダウンにつながります。このような観点から、ナノテクノロジー・ナノ材料工学分野の研究はますます発展していくものと考えられます。

世の中は、汎用的に広く利用される高分子(汎用性高分子)、生体や環境にやさしい高分子(生体適合性・生分解性高分子)にあふれています。当研究室では、これら高分子からなる一群の2次元ナノ材料(ナノ薄膜・ナノディスク・ナノリボンなど)を高分子科学・物理化学に立脚した独創的かつ簡便な手法で創製する技術を研究開発しています。いずれも面をもつユニークな形状を有していることから、種々の界面と2次的に面接触できる相互作用(高い接着性)が生まれます。これを基盤技術とし、人類の健康や医療、環境に役立つ研究につなげることを目標に掲げています。

ナノ材料の設計、加工、さらには医工(光・香)連携・異分野融合体制による機能評価までを一貫して行います。既知の高分子から、ナノ寸法ならではのユニークな特性をひきだした材料を生み出す楽しさを味わいながら、世に貢献できる研究を目指します。

【 工学 × 医学領域 の 融合 】

2次元ナノ材料(ナノ薄膜、ナノディスク、ナノリボンなど)に発現する“どこにでも貼れる”というユニークな特徴を活かしながら、工学的見地に基づいて物性や形状を制御し、医工学領域に貢献できる材料創製を目指しています。これまで、臓器縫合術の代替、感染防止材、止血材、骨再生治療、薬物運搬体、診断材料などの応用例を提案しています。

【 工学 × 光学領域 の 融合 】

顕微鏡を用いたイメージング技術は時々刻々と進化しており、生命現象の全容をリアルタイムで取得できる、まさに「百聞は一見に如かず」を実現する技術です。しかし、観察時の「試料の作成法」は未だ個々の研究者のノウハウに頼っているのが現状です。当研究室では、ナノ薄膜の厚みや光学特性をうまく活用した「ナノ薄膜ラッピング」法を提唱し、顕微鏡イメージング技術に貢献できる技術開発を目指しています。これまで、生体組織や細胞の乾燥防止、保定、カバーガラスフリー深部イメージング法を実証しています。

【 工学 × 香粧品学領域 の 融合 】

近年、芳香・消臭機能を特徴にした香粧品が市場で多く出回っています。しかし、におい成分は揮発性であるほか、汗などで有効成分が流れてしまうため効果の持続性が課題となっています。当研究室では、貼っても目視できず、かつ装着感すらないナノ材料を基盤とし、におい分子の包接を自在に制御できる「貼る芳香・消臭材」を開発しています。

特開2019-043896, Y. Okamura et al. (2020) to be submitted など