材料中を電子やイオンが流れたり流れなかったりする性質、すなわち【電気物性】を自在に操ることは、エレクトロニクスやイオニクスにとって最も重要な基礎技術です。水素化物は、材料が豊富ですが、水分や熱に敏感であることから合成困難な薄膜であるといえます。よって、その電気物性がこれまで未開拓であるため、新規エレクトロニクス・イオニクス開拓にとっての宝の山と言えます。
大口研では、材料を原子・分子レベルで組み上げる薄膜を用います。そして薄膜法によって、材料中の構成元素の濃度や原子配列を正確に設計して、目的の電気物性を引き出すことを狙います。例えば、CaH2やBaH2薄膜中の水素の量を微妙に調整して(CaH2±xやBaH2±x)、H⁻イオンが一番流れやすい状態を創り出します。また、BaLiH3のような構造の安定な水素化物に、Laなどの別の元素を無理やり押し込んで、伝導電子を強制的に発生させます(このような手法をケミカルドーピングといいます)。
宇宙で最も軽い元素である水素には、材料研究の究極の目標である室温超伝導を示すことが予想されています。水素を大量に含む水素化物にケミカルドーピングを行い、伝導電子を大量に発生させることができれば、夢の室温超伝導が実現するかもしれません。
水素化物薄膜分野の発展のために、【材料を増やす】そして【元素置換方法を確立】することで、物性制御研究を開始しています。
例えば大口研では、世界初のBaLiH3薄膜合成に成功したことで、世界で誰もやったことのない水素化物不純物半導体の合成に挑戦することが出来るようになりました。
1族・2族金属水素化物は「水素ならでは」の物性の宝庫です。
これまでに大口研では、赤外レーザー蒸着法が1族・2族水素化物薄膜合成の汎用的手法となり得ることを実証しました。
現在は、エピタキシャル薄膜合成および物性評価、さらには物性チューニングについて研究しながら、デバイス応用を目指して薄膜合成を実施中です。
世界初のハロゲン添加BaH2膜合成を目指して、薄膜の材料となるハロゲン添加BaH2粉末のミリング合成に取り組んでいます。
また、本当に薄膜特有の現象であるかは、粉末との比較を行わなければ証明できないため、薄膜合成者と連携して粉末試料をミリング合成や焼成、時には物性測定を行っています。
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