プログラムβ (PDF) 支援予算記載版.
【講演概要】本講演は3つのパートから構成される.1つ目のパートでは,Riemannゼータ関数の定義から出発し,定義級数が広義一様に絶対収束することやEuler積表示を持つことを証明する.2つ目のパートでは,Riemannゼータ関数が複素平面全体に有理型関数として解析接続されることを証明する.3つ目のパートでは,関数等式および整数点における特殊値について解説する.
【講演概要】素数定理は素数分布の漸近的挙動を表す素数分布論の基本定理である.本講演ではRiemannゼータ関数を用いた素数定理の証明を解説する.臨界領域におけるRiemannゼータ関数の挙動や非零領域(次の講演内容)が素数定理の証明にどのようにつながっていくのかを理解することを目標に解説する予定である.
【講演概要】非零領域とは零点がない領域のことであるが,前のレクチャーではRiemannゼータ関数の非零領域を仮定して素数定理の証明を行っていた. より正確には非零領域の評価は素数定理の誤差項に強く影響を与えていた.本レクチャーでは素数定理の証明に必要な非零領域を得ることを前半の目標とし,カギとなる計算に重点を置いて解説および証明を行う.後半では代数体のゼータ関数であるDedekindゼータ関数の非零領域についても同じ構造で計算ができることを代数体由来の要素を補足しつつ紹介を行う.
【講演概要】Riemann ゼータ関数の零点の個数を数え上げる関数 N(T) について,Riemann-von Mangoldt の公式と呼ばれる漸近公式とその証明を中心に解説を行い,時間が許せば,Riemann ゼータ関数の零点と,素数に関する Chebyshev の関数とを直接結び付ける明示公式について証明も含めて解説する.
【講演概要】平均値理論は,Riemann ゼータ関数の理論の中でも古くから詳しく研究されているものの一つで,膨大な結果の蓄積がある.本講演では簡単に得られる二,三の定理から始めて,二乗平均値についての詳しい結果や約数問題との類似性,高次べき平均の扱い,Lindelöf 予想との関係など,古典的な内容について,その証明方法のアウトラインと共に紹介したい.時間が許せば最近の発展状況についても触れてみたい.
【講演概要】本講演では,Riemann ゼータ関数の値分布論の発展を簡単に概説し,これらの理論の最終到達点の一つであるVoronin 普遍性定理について解説する.証明手法は,いくつか挙げられるが,Voronin 流の証明法で行う.まずは,普遍性定理の証明の戦略について解説する.その後,証明の詳細を時間の許す限りで解説する.
【予習用の文献紹介】Voronin の証明法については,[1] に詳しく書かれている.ただし,扱っているのはlog ζ(s) で正則関数の定義域が円板の場合である.定義域が一般の場合の証明の流れを追うには,[2] も参考になる.また,確率論を用いた普遍性定理の証明手法として,Bagchi 流のものが知られている.Hilbert 空間論での点列の並び替えに関する結果を使用する部分では,Voronin 流とBagchi 流のどちらの手法も有用である.Bagchi 流の証明が書かれているテキストとして,[3],[4] を挙げておく.普遍性定理のサーベイは,[5] が参考になる.
【参考文献】
A. A. Karatsuba and S. M. Voronin, The Riemann Zeta-Function, Walter de Gruyter, 1992.
J. Kaczorowski and M. Kulas, On the non-trivial zeros off the critical line for L-functions from the extended Selberg class, Monatsh. Math. 150 (2007), 217-232.
E. Kowalski, An introduction to Probabilistic Number Theory, Cambridge studies in advanced mathematics 192, Cambridge University Press, Cambridge, 2021.
A. Laurinčikas, Limit Theorems for the Riemann Zeta-function, Kluwer, 1996.
K. Matsumoto, A survey on the theory of universality for zeta and L-functions, Number theory, 95–144, Ser. Number Theory Appl, 11, World. Sci. Publ., Hackensack, NJ, 2015.
【講演概要】遠藤氏の講演で詳細な解説が行われたRiemann ゼータ関数の値分布理論を出発点として,本講演では整数論で扱われる多種多様なゼータ関数・𝐿 関数の値分布を考察する.Riemann ゼータ関数の値分布は複素変数の値を垂直線上に動かすものであったが,一般のゼータ関数・𝐿 関数に対しては,整数論的対象(Dirichlet 指標,Galois 表現,保型形式,etc.)を動かすことでまた別の値分布を考えることができる.講演の前半では,ゼータ関数・𝐿 関数に対する確率論的モデルを構成することを目的とし,equidistribution の理論などについて解説する.後半では,確率論的手法の応用として,ゼータ関数・𝐿 関数の普遍性や𝑀 関数と呼ばれる密度関数の理論について解説する.
【参考文献】
H. Iwaniec and E. Kowalski, Analytic number theory, American Mathematical Society Colloquium Publications, vol. 53, American Mathematical Society, Providence, RI, 2004.
E. Kowalski, An introduction to probabilistic number theory, Cambridge Studies in Advanced Mathematics, vol. 192, Cambridge University Press, Cambridge, 2021.
K. Matsumoto, A survey on the theory of universality for zeta and 𝐿-functions, Number theory, Ser. Number Theory Appl., vol. 11, World Sci. Publ., Hackensack, NJ, 2015, pp. 95–144.
K. Matsumoto, On the theory of 𝑀-functions, Profinite monodromy, Galois representations, and Complex functions: in honor of Professor Yasutaka Ihara’s 80th Birthday, RIMS Kôkyûroku, vol. 2120, Research Institute for Mathematical Science, Kyoto, 2019, pp. 153–165.
【メモ】ゼータ関数・𝐿 関数の基礎的事項は[1] のChapter 5 に纏められている.加えて,equidistribution が主題となっているChapter 21 も参考になると思われる.確率論の入門的テキストは多々あるが,ゼータ関数の値分布への応用を目的とするなら[2] が適している.本講演では歴史的な流れの解説に時間を割く余裕はあまりないと予想されるので,松本耕二氏によるサーベイ[3, 4] もぜひ参照していただきたい.
【講演概要】Riemannのゼータ関数やDirichletの𝐿 関数や保型𝐿 関数などの種々の𝐿 関数に対し,その𝐿 関数の1/2での値の大きさを測る問題を紹介する.
問題の動機や知られている結果を俯瞰することを目的とする.
【参考文献】
H. Iwaniec, E. Kowalski, Analytic number theory, American Mathematical Society Colloquium Publications, 53. American Mathematical Society, Providence, RI, 2004. (Chapter 5, Chapter 8)
P. Michel, Recent progress on the subconvexity problem, Séminaire BOURBAKI, vol. 2021/2022, Exposés 1181--1196, Asterisque 438, 353--401, Exp. No. 1190 (2022).
【講演概要】L関数のsubconvexityとしてprototypeとなっているWeyl評価の証明を紹介する.Weyl評価はRiemannのゼータ関数に対するsubconvexity評価である.現在はWeyl評価のさまざまな証明法が知られているが,この結果を初めて文献として世に出したLandauの証明方法を解説する.
【参考文献】
E. Landau, Über die ζ-Funktion und die L-Funktionen, Math. Z., vol. 20, 105--125, (1924).
松本耕二,「リーマンのゼータ関数」,朝倉書店, 2005. (7章)
Titchmarsh, The theory of the Riemann zeta function, second edition revised by D. R. Heath Brown, Oxford Science Publications, (1986). (Chapter V)
【講演概要】零点密度は,短区間中の素数定理についての結果を導く強力な理論である.また,零点密度はゼータ関数のオーダー評価やモーメントの評価といった値分布の理論とも密接に関係している.この「素数分布」,「零点密度」,「値分布」という三者の関係により,Riemannゼータ関数は多様な研究テーマへと分岐し,盛んに研究が行われている.本講演では,これら三者の関係と零点密度定理の証明のアイディアについて解説する.
【講演概要】本講演では,「Riemannゼータ関数の自明でない零点全体のうち少なくとも1/3は関数等式の中心線Re(s)=1/2上に存在する」ことを主張するLevinsonの定理 (1974年) の証明の解説を中心に,Riemannゼータ関数や一般のL 関数の自明でない零点のうち中心線上に存在するものの割合の評価の方法についての概説を行う.余裕があればConreyによる保型形式を用いた数値改善のアイデアについても解説する.
【参考文献】
N. Levinson, More than one third of zeros of Riemann's zeta-function are on σ=1/2, Advances in Math. 13 (1974), 383-436 .
M. P. Young, A short proof of Levinson's theorem, arXiv:1002.4403
B. Conrey, More than two fifths of the zeros of the Riemann zeta function are on the critical line, J. Reine Angew. Math. 399 (1989), 1-26.
H. Iwaniec, Lectures on the Riemann Zeta Function, AMS University Lecture Series Vol. 62
J.B. Conrey, H. Iwaniec. K. Soundararajan, Critical zeros of Dirichlet L-functions, J. Reine Angew. Math. 681 (2013), 175-198.
漸近記法について(簡易版) by 鈴木雄太氏 (立教大学)
Chapter 2 of Asymptotic Methods in Analysis by A.J. Hildebrand (UIUC, Math 595, Fall 2009).