ご挨拶
「体を洗う水が冷たい」。
2007年の冬、漫画喫茶で呟かれた一言によって私たちの活動は始まりました。
厚生労働省が2017年5月に発表した数値によると日本全国にホームレスは5,534名おり、2016年調査の6,235名と比べ701名減少しています。静岡県においては2016年の108名から、2017年は92名と、16名の減少となっております。全国のデータも静岡県のデータも、ここ10年間という長いスパンで見た場合も、減少しているという傾向を示しております。
一方で私たちが2011年から行っている家を失った方の緊急一時宿泊シェルター「POPOLOハウス」には毎年80~100名程度の方が利用されており、利用者数は年々増加する傾向にあります。
ホームレスの数が減っているはずなのにPOPOLOハウスの利用が年ごとに増えていくのはどういうことでしょうか。
その理由は「貧困の透明化」です。
2002年に施行された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」によるとホームレスは「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」とされています。
しかし、ファストファッションの普及、漫画喫茶・民泊といった安価な宿泊先の台頭により、ステレオタイプの貧困者像は消滅しつつあります。
そして、貧困はより社会のなかに潜り、みんなの傍に忍び寄っています。
それは、誰しもが貧困状態になり得るということを示しており、貧困問題は、もはや他人事とは言えなくなってきているのです。
目に見えづらい貧困を解決するためには、まずは対象者を見つけ、その対象者が持つ問題を可視化したうえで解決の支援をする必要があります。それぞれが持つ問題も多様化してきているので、我々の用意する支援メニューも拡充する必要があり、可能な限り「たらい回し」にすることなく支援を行う必要があると考えています。そのためにも、様々な団体と連携を取っていくことが重要なのです。
相談や夜回りから始まった私たちの支援メニューも、皆様に支えられながら「緊急一時宿泊シェルター」「フードバンク事業」「中間的就労事業」等、少しずつですが拡充してきました。POPOLOハウスを利用する方も、それぞれ様々な問題を抱えてはいますが、利用する方のうち、6割の方は、仕事と住居を見つけ、自立していきます。
この6割という数字を、少しでも上げていくために最善を尽くしているつもりです。しかし、うまくいくケースばかりではなく、「本当にこの支援で良かったのか?」と振り返ることも多々あります。 それでも、自立を果たした方からいただく、「あの時は助かったよ」という声。その声を力に、私たちは日々活動をしています。
これからも私たちは、様々な団体と連絡することで、多様な支援メニューとワンストップ支援が行える団体を目指し、「すべての人が、自己決定の元、安心して暮らせる社会の実現」を目指し、活動を続けていきたいと思います。
理事長 望月健次