設 立 趣 旨 書
現在の日本は、深刻な少子化に伴い、出産費用のほぼ全額助成、乳幼児医療費の無料化、育児休業制度の充実等、子育て世帯に対する社会的支援も着実に強まる方向に進んでいます。しかし、今どきの子育てが昔に比べて「楽になった」、「ゆとりが持てるようになった」といったポジティブな評価は、母親からほとんど上がってきません。むしろ、過去にも増して、子どもの貧困、児童虐待、児童の孤食、女性の就業と家事育児の二重苦など、子育てを巡る社会問題が頻繁に取り上げられています。川崎市においても、2021年度の市内の児童虐待相談・通告件数は5,832件で過去最多でした。2016年度の2,875件と比較すると、5年で2倍以上※になっており、子育てに関する課題は確実に深刻化しています。この原因として、制度改革等による包括的な子育て対策では支援しきれないほど、子育て世帯が多様化している事が挙げられます。多様化は、母親の就労の有無やその形態、保護者の年齢、価値観や経済的な状況など多くの側面で見られます。
設立代表者である渡邊は株式会社トレジャーキッズの代表も務めており、川崎市認定保育園(Kid’s roomみらいっ子)、地域子育て支援の一環である親子サークル(みらいっ子くらぶ)、学童保育(ゆめっ子くらぶ)を運営しています。そこにも、保護者の年代、就労形態、国籍など、多様な子育て世帯が集まっており、日々当方に寄せられる相談も様々です。現在も、業務外の相談にも個別に対応していますし、また、児童が夜遅くまで一人きりで過ごす家庭に対し、近隣の方とボランティアで学習支援の場を提供する等、随時、地域の子育て課題へ対応しております。しかし、個人で対応するには人数に限界があり、またボランティアで協力を仰ぐ形態では持続性が低いため、この度、NPO法人を設立し、組織として、幅広く地域の子育て問題の解決に取り組んでいく事を決意しました。法人化する事で、ボランティアに頼らず、職員を雇用し、持続的に地域の子育て世帯を支援していく仕組みを作る計画です。
法人として実施する事業としては、日ごろより受けている子育て相談、発達支援相談、学習支援の場の提供はもちろん、法人化にあたり、株式会社トレジャーキッズの利用者やこの地域で共に子育てをする保護者に対して行った子育て世帯の悩みに関する聞き取り調査の結果を踏まえて策定した、地域の保護者のリアルな課題を解決する事業を行う予定です。
まず、子どもの年齢を問わない子育て家庭へのヘルパー派遣事業です。未就園児を持つ世帯から多く寄せられた悩みが、ベビーシッターのハードルの高さです。川崎市の産前・産後家庭支援ヘルパーは、子供が生後6か月までと、利用対象が限られていますが、生後6か月を過ぎても、急に子育ての負担が軽減されるわけではありません。産後6か月以降、民間のベビーシッター利用を検討する際に、1番のネックになるのが子どもの安全面です。信頼できるベビーシッターに巡り合う事は難しく、もし見つけられたとしても、利用料金が高かったり、予約が埋まっていたりするために、なかなか利用に至らないケースがあります。そこで、地域の信頼を積み上げてきた当方からのヘルパー派遣を要望する声が寄せられています。
次に、惣菜販売事業です。当該地域では住宅が増加しているにも関わらず、飲食店やスーパーは減少し、平日の夕食作りのハードルが高まっている事から、当法人所在地での惣菜販売を要望する声も寄せられました。トライアルにて、保育園の在園児家庭向けに惣菜の予約販売を行ったところ、大変ご好評いただいております。
このように地域の方からのリアルな声を集約し、子育て家庭・妊娠中の方がいらっしゃる家庭に対して、保育や家事の支援に関する事業を行い、子どもの良質な育成環境を保障することで、子どもとその家族が安心して暮らす事のできる社会の実現に寄与していきます。
※タウンニュース麻生区版「川崎市内児童虐待 相談・通告5年で倍に」より