行政や農業関係団体に携わる方々へ
ぜひ当会のポスターを配布・掲示することでお困りの農業者をサポートしてください(当会への許可申請は不要です)。
ポスターのデータはA3サイズですがA4サイズでも印刷できるので、用途別に、掲示はA3・配布はA4をおすすめしております。
ネズミ防除で特にご留意いただきたいことが以下の①広域一斉防除、②スーパーラット化の予防、③忌避剤への理解です。
①広域一斉防除
ネズミは繁殖速度が早いため、生き残った個体が多いとたちまち元の水準に回復します。これを叩くために一つの農地や一つの自治体という限られたエリアではなく、より広域での短期集中的な対応が必要となります。
自治体・JA・農業者・研究機関などとの連携、ネットワークが必要になりそうです。
短期間で成果を上げた、鹿児島県のサツマイモ基腐病のネットワークは参考になるかもしれません。
●鹿児島県「鹿児島県サツマイモ基腐病対策アクションプログラム」
https://www.pref.kagoshima.jp/ag06/sangyo-rodo/nogyo/nosanbutu/satumaimo/actionprogram.html
②スーパーラット化の予防(抵抗性管理)
抵抗性をつけて殺鼠剤が効かなくなったネズミをスーパーラットと呼びます。抵抗性をもったクマネズミはよく知られていますが、ドブネズミに関しても、既に2006年には青森県でワルファリン抵抗性の個体が見つかっています。リン化亜鉛抵抗性のネズミは見つかっていないようです。
スーパーラット化の予防には、殺鼠剤だけに頼らない総合防除(IPM)や殺鼠剤成分の多様性(ローテーション)が必要となります。しかしながら日本では農地・農耕地に適用のある殺鼠剤成分が限られており、この点においてスーパーラット化の予防の難易度が上がっています。
"2006年、ワルファリン抵抗性のドブネズミが青森県から見つかった。都会ではクマネズミの抵抗性、郊外ではドブネズミの抵抗性が問題になると思われる"(谷川力編『有害生物防除事典』、2007年、オーム社、p.112)
③忌避剤への理解
忌避剤には味覚忌避剤(例:カプサイシン)と嗅覚忌避剤(例:ハーブ系やオオカミの尿の臭い)があります。そのいずれとも下記の理由から、防除の中心に据えるには心もとないと現時点で当会としては判断しております。
・味覚忌避剤…かじられては困るものに塗布すると一定の効果は見られるものの、カプサイシンは急性毒性(LD50)(※1)が高く収穫期の作物に散布するには不適である。
・嗅覚忌避剤…未侵入のネズミ個体に対して一定の効果が出る可能性はあるものの、一度エサがあるとネズミに認識されれば構わず食害が行われる。
あくまで防除の中心は草刈り等でネズミの居付きやすい環境をなくす環境的防除であり、さらに言えば殺鼠剤・忌避剤(化学的防除)や侵入経路遮断(物理的防除) などを組み合わせる総合防除(IPM)であるという点を農業者に説明していただけますようお願い申し上げます。
忌避剤に意味がないとは言えませんが、適切に使われなければ諦めや徒労を生む温床にもなり得ます。しかしまだ忌避剤の農地のネズミへの効果について分かっ ていないことも多く、そもそもどうすれば適切な使用となるのかが手探りの状態です。
忌避剤のメーカーから謳われる「ネズミに効果あり」との文言も、実は根拠が薄かったり、ドブネズミというより野ネズミへの対策の話であったりというパターンが往々にしてございます。また嗅覚忌避剤の中には、中~大型害獣とネズミとの同時防除ができると謳われているものもありますが、ネズミは一度エサがあると認識すれば忌避剤に構わず食害を行いやすいようです。ほか、まだ確かなことは分かっていませんが、野ネズミと家ネズミ(ドブネズミ等)の間では、忌避剤の効果が異なる可能性もあります。
※1 クロップライフジャパン「化学物質の危険性はどのように判断されるのですか。」https://www.croplifejapan.org/qa/a5_01.html
未侵入の個体にしか忌避剤は効果がないことが多い
野ネズミ アカネズミとハタネズミ
ほか
超音波機器も忌避剤と同じく未侵入の個体に対してはある程度有効な場合があっても、既に侵入されてエサがあると認識されていれば、超音波に構わず再び侵入されることが多いようです。
また超音波機器の実用的な音圧は120dB以上とされていますが、この音圧を満たす機器自体が市販品には少ないです。電池式の音圧100dB程度のものもありますが、これは侵入箇所や被害箇所に可能な限り近い位置に置いて、音圧を高めて使うようにしてください。ただし忌避剤同様に、過剰な期待はしない方が諦めや徒労は生みにくいと思います。
ほか超音波機器のなかには公正取引委員会から排除命令を出された商品もありますが、今なお名前を変えて販売されています。以下の公正取引委員会のHPやニュースサイトもご参照ください。
●公正取引委員会 審決等データベース
https://snk.jftc.go.jp/DC005/H140730H14J10000020_
https://snk.jftc.go.jp/DC005/H140730H14J10000019_
●JCASTニュース「猫、ゴキブリ、ネズミ、蚊 「超音波で撃退」はウソ? 2007.11.21 20:10
https://www.j-cast.com/2007/11/21013648.html