ロベぬいとシエテ 前編(シエテ視点)
ロベぬいとシエテ 前編(シエテ視点)
同じヒューマンの男で目が垂れ目がちなのに、こうもパーツの位置や睫毛の長さで顔の印象が違ってくるのか。イケメンってやつだ。モテるんだろうな。羨ましい。
ロベリアを初めて見たときの感想はだいたいそんな感じだった。憧憬やら羨望やらなんやらだったのが、好意に変わるのは早かった。
整った顔が好きだ。普段の柔らかくゆったりとした雰囲気も含めて好きだ。それなのにいざ戦闘になるとキリッとした顔になり、破壊が上手くいくと恍惚とした表情に変わる。格好良い男の顔が好きだ。こっそりと見学して見てしまってからはもう抜け出せない。ロベリアの顔が見たい。
推し、という概念があるらしい。人に薦めたいくらい好きなことのようで、陰ながら応援したりするそうだ。若い子たちにその話を聞いていてピンッときた。この感情は推しに対するものだ。儀式に使用する専用の剣と同じく、ただ眺めて良さを語りたい。でも、他人にそんな同性の顔がどうのこうのと語るのは恥ずかしいから、もう眺めるだけいい。
姿絵があれば最高だが入手するのは難しい。ロベリアは目立つことを嫌っていて、絵を残すなんてことは絶対にしない。
せめて何か形があればと思っていたところに、遠く離れた土地で洋裁をしているご夫婦が小さなぬいぐるみを作っているところを見てしまった。ぬいぐるみになったロベリアは絶対可愛い。欲しい。なんとか頼み込み、細かいディテールに拘り作ってもらったのがロベぬいだ。
垂れ目という部分だけは上手く伝わっておらず、キリッとした表情をしているがそこがまたかわいい。誰がなんと言おうとロベぬいはロベリアにしか見えない。
普段は最上級のシルクの袋の中でカモフラージュ用の布に挟んで入れて隠しているが、部屋に帰ってくると取り出してベッドの上に座らせる。
「ただいま」
ロベぬいに話しかけると体の力が抜ける。疲労で強張っていた表情筋も解れていく。
「いつも可愛いね~」
27歳の男が何をしているのか、冷静に考えると危ない言動なのだがこれが驚くほどストレスが解けていく。みんなの態度が冷たいんだよって愚痴をもらしても、いつだってキリッとした顔で聞いてくれる存在がいるのは最高で、ロベぬいと暮らし始めた当初は冷たい目でこちらを見てきていた標神も「君の健康に効果があるならいいんじゃない」と認めてくれたほどだ。
推しとの暮らしは健康に良い。しかし、これは誰にも言えない。
出来れば同志と語らいたいが、ロベリアの顔を推してる人には出会ったことがない。あんなに顔だけは良いのに。標神はいい加減聞き飽きたから次に名前を出したらそいつを殺すなどと物騒なことを言い出したし、団長やルリアやソーンにもチラッと言ってみたが好みではないようで話にのってこなかった。
だから、一人でこっそりとこうして癒されるしかない。