昨今のコロナ禍における困窮支援として、そしてフードロス対策の一環としてのフードバンクが注目されています。日本において”フードバンク”と称して活動を行う団体も足許で増加している認識です。フードバンクという活動と一緒にフードパントリーという活動の名前も併せて広がりつつあるようです。この二つの活動の違いについて、NeighbourFood(ネイバーフード)の認識をご説明します。
フードバンク・・・緊急食料支援システムの一つ。個人や企業から寄付された食料をフードパントリーや福祉団体などに提供する仲介組織・活動
フードパントリー・・・主にフードバンクから提供を受けた食料を配布する場所・活動
つまり、食品を集めて、配る、という卸(おろし)の役割を担っている組織がフードバンクです。フードバンクでは、倉庫やトラックなどを保有し、食品企業において発生する賞味期限が近づいた大量の在庫や、大企業における社員分の防災備蓄品を一括して受け入れます。そして、食品を個人ではなく、フードパントリーや福祉団体へ分配します。一方、フードパントリーでは、食品配布場として必要な分の倉庫は保有するものの、配布食料は必要な量だけフードバンクから提供を受けます(一部、個人からの寄贈も受け付けている印象ですが、あくまでも小規模な食品の寄付のみ受けつれられる認識です)。そして、個人そして、一部福祉団体へ食品を配布します。
上記が一般的な定義ですが、現在日本では、フードバンクと名乗っていても実際は卸の役割をしていないフードパントリーも存在しており、 一般的には食料支援として食品を(集めて)配る、という活動が"フードバンク"活動、と認識されているようです。イギリスでも食品配布場(いわゆるフードパントリー)をフードバンクと呼んでいたり、フードパントリーとフードバンクの違いが必ずしも明確になっているわけではなさそうです。アメリカでは、食品配布場をFood Distribution Centerと、明確な活動内容が認識されやすく呼称している団体もあるようです。
定義が混在している場合、フードバンクがどの程度食品を受け入れられるのか、企業目線では判断がつかない、という問題点が存在すると思います。フードバンクと自称している団体も、実際は、個人への配布を行うのみで、小規模な倉庫のみ保有しているだけで、企業から大量な食品寄贈を受け入れられないケースがあります。フードバンクとフードパントリーが明確に分かれていれば、企業は大口寄付を受け入れられるフードバンクへ寄贈を検討すればよく、想定のミスマッチは避けられるでしょう。
ただし、個人的には、フードバンクのほうが、フードパントリーより日本で広く認識されているのは、カタカナ語としてのパントリー(食糧庫)より、バンク(銀行)の方が社会に浸透しており、耳なじみがよい、覚えやすい、という特別な背景もあるのかと推察します。定義を明確に使い分けることも大切かもしれませんが、まずは利用者が困ったときに、食品を受け取れる場所(フードバンク・フードパントリー)があることが広く認識されることが重要と考えます。