ペルシャ絨毯は、現在の国名イランで手織り制作されているパイル織りの敷物をさします。
この世界で最も美しく、かつ耐久性に優れた敷物は4~5000年の歴史をもつといわれ
イランの人々にとって暮らしの必需品として、代々国中で織り伝えられています。
その織り方は各産地ごとに異なり、用いられる素材や色合いそしてデザインまでもが各地で特徴があります。
クムは東方が荒涼とした砂漠に接する地です。織りあがった絹絨毯の仕上げ洗いに最適な水
に恵まれ、美しくつややかな作品を制作しております。
はじまりはペルシャ絨毯の歴史からいえばごく最近、百数十年前からですが、この特徴ある
水の恩恵で絹糸からなる絨毯が盛んに制作され、産地クムは他に類を見ない急速な発展を遂
げました。
絹糸の絨毯は古くより王侯貴族や大商人といった富豪に愛され、富と美の象徴として
その邸宅を美しく飾り続けています。
タブリーズはイランの北西部に位置し、首都テヘランに次ぐ国内第2の商業都市で
マルコポーロの「東方見聞録」にもその賑わいが紹介されている歴史ある街です。
冬場は雪が数メートルも積もるタブリーズでは、羊毛を用いた絨毯が織られ
一枚の絨毯に使われる色数が他産地に比べ、際立って多いことで有名です。
多彩な色は作品の華やかさを演出するだけでなく、絵画絨毯とよばれる独自の作品世界を
発展させました。
(額装品)
ナインはイランのほぼ中央に位置し、周囲を砂漠に囲まれた都市です。
厳しい土地に生まれた小さなオアシス都市であったナインは、羊毛の布地産地として生計を
立てておりましたが、市場の縮小に伴い、絨毯の制作を始めました。
ナイン絨毯の特徴はその抑制された配色にあり、乾いた砂漠を連想させるベージュを
基調に、そこから広がっていく樹木の緑、水を表す青、命の輝きを赤で表現していると
いわれております。用いられる色彩は限られていますが、どのようなインテリアスタイルに
もに合わせやすい産地です。
カシャンは数ある絨毯産地の中でも、最も歴史が長いといわれる高級絨毯の産地です。
農作物の育たぬ厳しい土地柄のため、古くから陶器やタイルなど工芸品の生産が発達しま
した。また交易の要衝としての絶好の地理的条件を生かし、絨毯とともにビロードや
ダマスク織の産地としても西洋に名を広めました。
18世紀アフガン支配の下、衰退していた絨毯業が復興した19世紀末以降、かねてより
養蚕が盛んで絹織物の伝統が長いカシャンでは、精巧で高品質な絹の絨毯が数多く織られ
ました。