Research

研究予定

1. 2D材料(グラフェンなど)の照射効果

グラフェンのように原子1層~数層の厚さしか持たない物質は2D材料と呼ばれ、そのユニークな性質が注目されています。たとえばグラフェンやゲルマネンは、その電気的性質から高速・省電力なデバイス創製への応用が期待されます。今後の研究ではこれら2D材料に対し、電子線やイオンを照射することで構造を変化させ、さらに面白い特性の発見につなげていきます。

2. 電子デバイスなどの応用に向けた高分子材料の加工

プラスチックとして知られる高分子材料は、私たちの身の回りにたくさんあります。電気電子工学では、曲がる特性を活かしたフレキシブルデバイスへの応用も期待されています。今後の研究では電子線などを用いて高分子材料を加工し、電子デバイスなどの応用に利用可能な構造を作製していきます。実際に作製したシリコーンゴム上の微細構造を図に示します。ヒトの髪の毛の太さが約100 μm(0.1 mm)ですので、この構造がとてつもなく小さいことが分かります。

また、構造作製の手法としては3Dプリンターの利用も考えられます。これによってミリメートル以下の微細構造から家屋まで、様々な物体の作製に利用可能となりました。そこで、3Dプリンターによる微細構造の設計に加え、それに対して電子線などを照射して加工するプロセスを追求します。

3. AIを用いた電子顕微鏡画像の解析

これまでの研究ではナノスケールの非常に小さな物体を扱ってきました。そこでは、物体を直接示せる電子顕微鏡の写真が欠かせません。現在、このような画像データをAIにより分類・分析する技術の開発が期待されています。今後の研究では、実験で得られた電子顕微鏡画像をAIによって簡単に整理したり、分析したりする手法を模索します。

現在までの研究

 イオンは電荷をもっているので、電場や磁場のなかで力を受けます。これを利用するとイオンを加速し、飛ばすことができます。このようにしてイオンを加速し、物体に対して照射できるようにしたものをイオンビームと呼びます。

 固体に対してイオンビームを照射すると、固体中にダメージが生じます。このダメージは原子のズレや動きにつながり、結果として固体表面に様々な変化を引き起こします。このとき、照射条件が適切であれば、表面に微細な構造が生じます。Ge・GaSb・InSbにおいては点欠陥自己組織化と呼ばれる現象により、表面に直径~20 nmの孔が多量に生じます(ポーラス構造形成)。このナノ構造のSEM像を下に示します。また、下図は構造形成の様子を模式的に表したものです。

点欠陥自己組織化によって形成された

Geのナノ構造

Nanoporous structure formed on Ge substrate

点欠陥自己組織化の模式図

Schematic diagram of self-organization of point defects

  一方、金属や絶縁体を含む一般的な固体においては、点欠陥自己組織化による表面構造形成は報告されておらず、表面の切削(スパッタリング現象)によって構造が生じます。著名なとしては基板表面のリップル構造が挙げられます。これは特定の周期性をもって表面に形成される、さざ波状の構造です。

Si基板上のリップル構造

Nanoripples on Si substrate