第1回 科学研究部シンポジウム
銀河赤方偏移探査
による宇宙論研究会
日時:2019年8月21日(水)ー2019年8月22日 (木)
場所:国立天文台 三鷹キャンパス 大セミナー室
開催要旨:
「我々の存在する宇宙は、過去から現在までどのように進化してきたのだろうか?」このような根源的疑問を解決するためには、宇宙に存在する物質分布を時間的、または空間的な関数として測定することが不可欠である。 そのような測定は、我々に一般相対性理論の検証、宇宙加速膨張の原因の探査、またはニュートリノ質量の制限など様々な情報を与えてくれる。観測された物質分布の統計的性質は宇宙の初期条件の情報も含んでおり、イ ンフレーション理論の検証すらも可能となる。そのために、これまで Sloan Digital Sky Survey を始め様々な銀河探査計画が 行われてきた。そして、現在でも世界中で次世代大規模銀河探査の計画が推し進められている。日本において は特に、2022 年よりすばる主焦点超広視野多天体分光器 (Prime Focus Spectrograph = PFS) プロジェクトが始 動する予定であり、これまで誰も見たことのない最深の銀河分布のデータを提供することで、世界の銀河観測宇宙論をリードすると期待されている。
本研究会では来るべき 次世代大規模銀河探査に備え、銀河の赤方偏移探査による宇宙論に焦点を当てる。そして既存の理論的または観測的結果を踏まえた上で、その現状を概観し、それらをいかに PFS プロジェクトに適応するかを理解すること、または PFS プロジェクトにおいて新たに何ができるかを形式ばらず忌憚なく議論することを目的とする。特に、数年後に PFS プロジェクトにおいて活躍が期待される若手研究者の参加を歓迎する。
本シンポジウムの主な内容:
銀河赤方偏移探査による宇宙論に関して、以下の 3 つ のトピックを軸に、最近の進展、および残された課題・問題点を洗い出し、議論する。 理論的及び観測的な研究を最前線で行っている方をお招きし当該分野の進展や未解決問題について講演をしていただき、一般講演者にはめいっぱい自身の研究の話をしていただく予定である。大学院生を含む若手研究者の積極的な参加を期待している。
- 銀河赤方偏移探査の概観と将来計画
- 宇宙構造形成の理論および観測研究の進展と課題
- 銀河赤方偏移探査による新しい宇宙論研究
招待講演者 (敬称略):
- 奥村 哲平 (中央研究院 天文及天文物理研究所)
- 白石 希典 (香川高等専門学校)
- 砂山朋美 (カブリ数物連携宇宙研究機構)
- 西道 啓博 (京都大学基礎物理学研究所)
- 樽家 篤史 (京都大学基礎物理学研究所)
- 真喜屋龍 (カブリ数物連携宇宙研究機構)
講演プログラム : 21日は13時開始, 22日は10時開始です。詳細はこちらからご覧いただけます。
プレゼンテーションファイル :
FastSound 計画による銀河赤方偏移解析 (奥村 哲平・ASIAA)
PFS 宇宙論サーベイの現状と課題 (真喜屋 龍・Kavli IPMU)
銀河クラスタリングにおける共分散行列への 摂動論的アプローチ (杉山 尚徳・天文台)
BAO 再構築と銀河バイスペクトル (白崎 正人・天文台)
準解析的銀河形成モデル ν^2GC による輝線銀河モデルから見る広視分光探査の重要性 (小倉 和幸・文教大)
電波銀河のバイアスと赤方偏移分布推定 (新居 舜・名古屋大)
Finding higher spinning particles through cosmic symmetry breakings (白石 希典・香川高専)
PFS宇宙論の観測的課題 (砂山 朋美・Kavli IPMU)
銀河スピン統計と構造形成 (家 正則・天文台)
銀河赤方偏移サーベイにおける摂動論的解析手法 : 2019 年版 (樽家 篤史・京都大基研)
SDSS 銀河の赤方偏移空間パワースペクトルの宇宙論的情報 (小林 洋祐・Kavli IPMU)
数値シミュレーションと機械学習による理論テンプレート構築 :現状と展望 (西道 啓博・京都大基研)
赤方偏移歪みの環境依存性 (浜名 崇・天文台)
世話人:杉山尚徳、白崎正人、浜名崇
主催:国立天文台科学研究部
参加者の皆さん (2019年8月22日)