生命のうつろいゆく姿を追いながら、目に見えるものとそうでないものの境界をみつめています。
愛猫が死んだこと、大切にしていた花が枯れていくこと、また花が咲くこと。季節がうつろうように人の心もまた変化していく。その現象の中にある曖昧な境界線や言葉にならない気持ち、言葉になる現象を、絵と言葉で哲学的思考をベースに普遍性、あるいは個人的な内情を表現しています。「私は何を知覚しているのか。」その問いに向き合いながら日々制作に励んでいます。
私は絵と言葉から生まれる世界が好きで、それをひとつの作品として制作することもあります。線描と文字を書くことは私にとっては同じ感覚であり、その”かく”作業は心地よいものです。もののかたちを表現するときは、色や線の知覚の交錯を読み解くことに楽しさをおぼえます。陰陽のバランスを、心の中に在るものと表出されていくそのうつろいをはかりながら作品と向き合っています。
作品を通して、人が持つ心の深さや生命の尊さを感じていただければ幸いです。
河原なな子