クボガイ

Tegula rugata (Gould, 1861)

レア度:いつでも見られる

形態:円錐形の巻貝で、3㎝強になる。貝殻表面は規則的に隆起してさざ波が立っているようにみえる。ただし小型個体(<1㎝)にはこの隆起がなく、かわりに細く鋭いすじを巻いているため、かなり印象が異なる。貝殻は黒紫色で、底面の中心部(へそ)は黄色や緑色になる。これまた、小型個体は黄色くなかったりするのでややこしい。へそは基本的に塞がっているが、開いている個体もいる。

生息域:北海道西部から九州。潮間帯から水深20mの岩礁に生息する。

生態:植食性で、付着珪藻や大型藻類をたべる (Ishida et al. 2002; 小野寺・櫻井 2018)。大型個体は海底表面に現れるが、小型個体は主に転石下に潜んでいる(Ishida et al. 2002)。

その他:大きな個体では石灰藻、海藻、ゴカイ、カサガイなど実に様々な生物が貝殻表面に付着する。さらにそれらを食べる生物も集まってくるので、移動式集合住宅とでも呼ぶべき様相になる。こうした付着物がコシダカガンガラとの識別を面倒にしている側面もある。

2018年7月 山上
2021年9月4日 りったいろいろ付着している
2021年9月4日 りったゴカイの仲間がお住まい
2021年9月4日 りったおへそは開いていない

引用文献:

  1. 富田恭司. 1980. ヘソアキクボガイとコシダカガンガラの産卵期. ちりぼたん, 11: 5051.

  2. Lee, J. H. 2001. Gonadal development and reproductive cycle of the top shell, Omphalius rusticus (Gastropoda: Trochidae). Korean Journal of Biological Sciences, 5: 37–44.

  3. 中田和義・山崎友資・水田浩之・川井唯史・伊藤博・五嶋聖治. 2006. 植食性小型巻貝によるホソメコンブの摂食に及ぼす水温の影響. 水産増殖, 54: 375–381.

  4. Yamazaki, D., Hirano, T., Uchida, S., Miura, O. & Chiba, S. 2019. Relationship between contrasting morphotypes and the phylogeny of the marine gastropod genus Tegula (Vetigastropoda: Tegulidae) in East Asia. Journal of Molluscan Studies, 85: 2434.