モクズガニ

Eriocheir japonica (De Haan, 1835)

レア度:たまに見られる?

形態:甲長5㎝くらいの、磯で見られるカニ類では大型。はさみに剛毛が密に生えることが特徴で、英名も "Mitten crab" (Mitten=毛糸の手袋)という。毛はオスの方が発達する。甲は縦に長めの六角形で、前側左右の縁に3つの小棘がある。

生息域:全国の淡水域に広く分布。

生態:淡水域で成長して海水域で交尾・繁殖・産卵を行う降河回遊型の種である。乱婚型であり、オスはメスに対して交尾後ガードを行う (小林, 1999)。海域ではふつう岩の隙間や砂に潜って過ごしているが、メスよりもオスの方が活動性が高い (Kobayashi & Matsuura, 1994)。そのため、オスの方がよく見つかるだろう。ごつい見かけ通り力も強く、岩にしっかりしがみつくので無理矢理引きはがすのは大変。

その他:堤防下でも砂地の海底でも姿を見ることができるが、すばしっこいので探す心構えをしていないと見逃しやすい。よく浜に打ちあがるので、死体や体の一部であれば目にする機会はそれほど珍しくない。
外骨格を標本にするなら剛毛もぜひ残したいが、すぐに海水を洗い流して丁寧に乾かさないとワックスでもかけたみたいにカチカチになるので注意。人用のリンスを使うとそれなりにサラサラになるが、抜け毛がはげしいので洗髪(?)時は力は込めすぎないようにしよう。

2018年7月 山上
2018年8月@古座川下流 大友
2021年8月21日 りったガザミの脱皮殻と一緒に流れ着いた死亡個体
2021年8月21日 りった女の子であった。はさみのふさふさも確認できる。
2021年8月21日 りったお母さんであった。南無。
2021年8月21日 りったオス
2021年8月21日 りった
2021年8月21日 りったメス
2021年8月22日 りった生きている個体、アマモに隠れていた
2021年8月22日 りったコンブにしがみつく
2021年9月20日 藤本夜になると水面付近にも出てくる
2021年8月31日 りった女の子
2021年9月19日 りった

引用文献:

  1. 小林哲 (1999). モクズガニ Eriocheir japonica (de Haan) の繁殖生態(総説). 日本ベントス学会誌 54, pp. 24-35.

  2. Kobayashi S. and Matsuura S. (1994). Occurrence pattern and behavior of the Japanese mitten crab Eriocheir japonicus de Haan in the marine environment. Benthos Research 46, pp. 49-58.