ガザミ

Portunus trituberculatus

(Miers, 1876)

レア度:たまに見られる?

形態:「ワタリガニ」という名前でも知られるおいしいカニ。大きいものでは甲幅20㎝程度にまでなる。ガザミの仲間は背甲前縁の棘(歯といわれる)の数で種の検討をつけることができ、本種は額に3歯、両側縁に9歯を持ち、側縁の第9歯は大きく突出する。成体の体色は緑がかった灰色で、はさみ脚などに白斑が入る。葛登支では2020年8月には4㎝程の幼体も採集でき、体は白く、船のオールのような第4歩脚の指節は透明だった。

生息域:成体は内湾のようなやや淀んだ場所の、砂底や砂泥底に生息する。函館の漁港からもその気になれば釣ることもできる。七重浜で生体にお目にかかることはなかなか難しい。少し離れた葛登支岬では岸近くの岩礁などでまれに見られる。

生態:産卵期は春~秋と長い。稚ガニは藻場や干潟に着底し、成長に伴って、生活圏を深場へと移すことが知られる。葛登支では、成体は秋ごろから夜に見られるようになる。餌となるのは、稚ガニではヨコエビなどで、大きくなると貝類や多毛類を好んで食べるようになる(松井ら, 1986)。ゾエア期の成長・生残には餌環境の他に、母性効果が重要であることが分かっている(Dan et al., 2018)。餌が含有する成分としては、メガロパ期にEPAが生残率向上に有効で、稚ガニ期にはDHAが脱皮を促進することが知られる(竹内ら, 1999)。短尾類では初めて、mtDNAの全配列が解読された種である(Yamaguchi et al., 2003)。

その他:はさむ力が非常に強いため、特に成体には迂闊に指を伸ばすことは禁物。写真のちび個体でも涙が出るほど痛かった…。

2021年8月21日 りった目が白いので脱皮殻、タマシキゴカイの糞と卵と一緒
2021年8月21日 りった目が白いので脱皮殻
2021年8月21日 りったモクズガニの死骸と一緒に流れ着いた脱皮殻
2021年8月21日 りった壊れた脱皮殻
2021年8月21日 りった砂に埋もれた脱皮殻
2021年9月20日 藤本透明感のある脱皮殻

引用文献:

  1. Dan, S., Yamazaki, H., & Hamasaki, K., 2018. Effects of mother and postnatal food condition on larval performance of swimming crab Portunus trituberculatus. Fisheries Science 84: 113-126.

  2. 松井誠一・萩原洋一・藤紘和・塚原博, 1986. ガザミ Portunus trituberculatus (Miers) の摂餌生態に関する研究. 九大農学芸誌 40 (2,3): 175-181.

  3. 竹内俊郎・佐藤敦一・関谷幸生・清水智仁・渡邊武, 1999. ガザミ幼生の脱皮率に及ぼすEPAとDHAの影響. 日本水産学会誌 65 (6): 998-1004.

  4. Yamaguchi, M.M., Miya, M.U., & Nishida, M., 2003. Complete mitochondrial DNA sequence of the swimming crab, Portunus trituberulatus (Crustacea: Decapoda: Brachyura). Gene 311: 129-135.