独自開発ロボットシステム

高専や大学ロボコン、機械設計、電子回路設計、WEBアプリ開発、組み込みシステム、発電器設計など、多様なバックグラウンドを持つ学生が、その強みを活かして、シミュレーションが難しい複雑な現実タスクの模擬環境を構築したり、データ収集や再現実験を補助するロボット環境を開発することで、ロボット工学やAI分野において革新的な成果を上げています。こちらでは、研究内容や成果とは切り分けて、ロボットラーニング研究のために学生主体で開発されたユニークで楽しいロボットシステムを、当時の思い出話も交えながら教員視点で紹介します。

ナスラロボット

学生提案型CICPプロジェクトが採択され、ラボ内学生グループによって開発されました。このプロジェクトでは、ロボット工学やAI要素に加えて、3Dモデリング技術を持つ学生が参加してくれたので、ナスラの愛くるしい三面相が具現化され、外注でカラー3Dプリントされました。まさに大学院ならではの異なる分野の融合です。 

研削ロボット

JST未来社会創造事業の一環として、研削作業を自動化するロボットシステムが開発されました。このシステムは、防粉塵対策のためにガラス張りフレームまで付いています。このプロジェクトの成功には、担当した学生が豊富なロボコン・ものづくり経験を持ち、かつ以前の研究で研削に関する深い知識を積んでいたことが大きく寄与しました。彼がちょうどプロジェクト開始のタイミングで入学してくれたことに感謝です。

ゴミクレーンロボット

ごみ焼却プラント関連の企業共同研究では、実際のプラントでの実験機会が限られており、その問題に悩んでいました。しかし、担当の学生が「サーボモータや3Dプリンタを使って模擬システムを作れますよ」と提案し、その言葉通りに開発が進められました。完成したロボットのお披露目では、模擬ごみをつかんでばらまく様子をリアルに再現し、専門家たちも驚きました。 

天ぷら嗜好盛り付けロボット

レストランチェーンの企業共同研究では、和食の盛り付け、特に天ぷら盛り付け技術の複雑さ感嘆しつつも、その自動化ロボットの実現には苦労しました。しかし、担当した学生が保有していたWebアプリ開発の技術や最新の物理シミュレータ技術を活用し、CGで再現した盛り付け例に対するアンケートデータから嗜好を捉えた盛り付けを生成するAI技術を実現することができました。 

掘削・岩石除去ロボット

JSTムーンショット型研究開発事業の一環として、土工作業を自動化するAIシステムが開発されました。このシステムは、実験やデモンストレーションのために設計されました。担当した学生は、移動ロボットの遠隔操縦システムなどの開発経験が豊富であり、その知識とスキルを活かして開発が進められました。 特注の青い防塵スーツを着ると、まるで象のような立ち姿になります。JAXA相模原キャンパスの模擬月面環境での公開実験にも耐えた高い完成度を持っています。 

化学実験自動化ロボット

NEDOマテリアル革新技術先導研究プログラムの一環として、佐々木光助教と数名の学生によって開発されました。このプロジェクトでは、化学実験従事者が簡単に作業を指示し、それをロボットで自動化できるように、人の手とロボットの手を共通化するインタフェースが開発されました。学生が設計・制作したロボットアームと移動台車の統合フレームが秀逸です。キャンプ用の携帯電源も便利でした。このシステムは物質領域の藤井研究室に設置され、人手による化学実験作業の一部が自動化されました。モバイルマニピュレータが長い工程を代行する様子を見ると、未来の実験室の可能性を感じます。 

エナジハーベスタアクティブ装具

高専・専攻科の3年間、発電機の設計・開発に従事した経験豊富な学生が入学した際に、教員から提案されたのは、「ハイブリッドカーのように回生ブレーキで発電し、その電力で必要に応じて動作を支援するロボット装具を開発しませんか」という研究の立ち上げでした。この提案により、無段変速式のオートマチック(CVT)など、面白い機構が設計されました。プロトタイプは、ほぼすべての部品を3Dプリンタで作成しましたが、当時の手持ち機器では精度に若干の不足があり、色々苦労も経験しました。  

FPGA深層学習ロボット

システム開発力の高い学生が入学した際に、エッジロボットの時代の到来を先取りして、人の脳の仕組みを模して造られるニューロチップ向けの強化学習システムの研究が開始されました。しかしながら、当時は(そして今も)ニューロチップが容易に手に入らず、代わりに組み込みシステムで普及しているFPGA向けのシステムに切り替えることが必要でした。彼の努力と突破力によって、FPGA特有の実装の大変さも乗り越え、ユニークな研究成果を達成することができました。 結果的に、FPGAの特徴を生かして省電力・低レイテンシーで対象物体ビジュアルサーボが、強化学習によって獲得されました。

VRバクスター(調理)

機械工学・制御工学のバックグラウンドを持つ韓国人留学生が入学した際に、ロボット特有のプログラミングや機器に慣れるために、バクスターロボットとVRシステムを統合して、子供用玩具を使用したカレー調理に挑戦しました。彼は適応力が大変高く、短期間でシステムを完成させ、さらにロボット操作にも慣れ、見事にカレーを調理することに成功しました。 本当のカレーも作れそう。

VRネクステージ(衣類操作)

衣類操作の強化学習研究に従事していた学生が、自然な動作の教示用に、ネクステージとVRシステムを統合してくれました。外から見ると、操作は簡単そうに見えましたが、実際に手を動かしてみると、ロボットの距離感が掴みにくく、なかなか操作が難しいことがわかりました。しかしこの学生は徐々に慣れてきて、服をハンガーに通したり、ラックにかけたりすることができるようになりました。 

振動印加ロボット触覚システム

ロボコン出身で振動工学に詳しい学生の興味がきっかけとなり振動印加によるロボット触覚の研究が始まりました。提案システムは、ロボットが対象物に指をそっと押し当てるだけで、印加振動の伝搬特性から、そのテクスチャや初期滑りを簡単に検知できるというものでした。しかし、実証実験のためには環境側を精密に"ロボット化"する必要がありました。ロボットの指に外部から振動を印加するためのモータの選定や設置方法、複数の物体に同条件で実験するためのターンテーブルロボット、初期滑りを再現するためのばね付きの引っ張り機構など、試行錯誤を繰り返しながら完成させました。 

ラジコン建機ロボット

JSTムーンショット型研究開発事業の一環として開発されました。プロジェクトが開始された当初、建機に近いロボット設備やシミュレーターがなく困っていたところ、担当の学生から「趣味で培った技術を活かして、ラジコン建機を外部PCから制御できますよ」と提案をうけました。必要な部品を発注すると、短期間のうちに回路を作り、見事ラジコン建機がロボット化されました。このロボットを活用した研究成果はロボット分野のトップカンファレンスICRAにも採択されました。 ショベルの他に、ダンプカーもあります。

エアホッケーバクスター

2017年のオープンキャンパスで、ラボのM1学生総がかりで取り組み、子どもたちが一緒に遊べるロボットを展示しました。このプロジェクトでは、二つの腕を独立して操作できるロボットがエアホッケーをするシステムを開発し、一般に公開しました。約350人の来場者がこのロボットとのエアホッケーを体験しました。

タートルボットチームと鬼ごっご

2023年度のオープンキャンパスで、ラボのM1学生がPBL講義の一環として開発された、1台の遠隔操縦ロボットが2台のAIロボットと「鬼ごっこ」をするというユニークなシステムを展示されました。約50人の来場者がロボットを使用して鬼ごっこを楽しみました。 

わなげロボット

2023年度のオープンキャンパスで、ラボのM1学生がPBL講義の一環として開発された、UR3e・深層学習・3Dプリンタを駆使したわなげAIロボットを展示されました。カメラで輪の位置を認識して、次に投げる場所を選択します。思ってたよりもダイナミックで見事な投げっぷりに驚かされました。