研究内容
先端デバイス・材料の進化
社会インフラシステムにおいて不可欠な先端半導体デバイスは、いっそうの高機能化と省エネ化が求められています。これに伴い、デバイスの構造や作製プロセスは複雑化し、新たな機能を付加するためには新材料の導入が必須となってきています。このような研究開発には、新たな解析・計測技術の開発と導入が欠かせないものとなっています。
材料解析・計測機器の進歩
材料解析・計測機器は、各機器のコンピュータ制御化し、ストレージの大容量化するなどデジタル化が進んでいます。これにより、高速かつ大量のデータが高速に取得できるようになってきました。さらに、複数のパラメーターを同時に計測することも可能となりました。一方、短時間で高分解能での測定も可能になってきていますが、個々の測定ノイズの影響も大きくなってきています。このため、大量だが不完全な情報から結果を予測すること、また、複数の測定結果を統合すること、事前の知識を用いて解釈を補完することなど、高度な推定処理が不可欠になっています。
計測インフォマティクスの目的
高精度で自動化された計測を実現すること、AIや機械学習を用いて計測データの意味を分析・解釈すること、そして自律的な計測を行うことにあります。これを達成するためには、データ科学や数理統計を活用したデータ解析や、迅速かつ高精度な解析を可能にする手法の開発が必要です。さらに、新しい現象の発見や原理の解明、データの蓄積や活用を可能にするシステム基盤の構築も重要な課題となっています。
様々なインフォマティクス
近年、材料・デバイスの研究・開発・製造においてインフォマティクス技術を活用する動きが活発になってきています。図に示すように、我々は計測インフォマティクスは、(狭義の)マテリアルズインフォマティクス、プロセスインフォマティクスおよびマニュファクチャリングインフォマティクス(バーチャルメトロロジー、ソフトセンサー)を支える重要かつ必須な技術に位置付けていると考えています。
計測インフォマティクスの主な活用事例
画像セグメンテーション
大量のデータを短時間で自動で画像処理
単純な作業から解放され、創造的な時間に充てられる
埋もれた情報の抽出
複雑かつ大量のスペクトルデータから物理的・化学的に有用なデータを抽出する
物理的・化学的知見に整合した新たな指標の導出につなげることが可能となる。
ピーク分離・フィッティング
ノイズの多いスペクトルのピーク数などを自動で的確に判定
人による判定の差異が避けられる。大量のデータを処理することができる
マルチモーダル計測
複数の先端計測手法を有機的に組み合わせ、従来得られなかった知見を得る
研究テーマ
3Dセグメンテーションx3Dポイントクラウド・マルチモーダル解析
先端半導体デバイスを対象に透過電子顕微鏡法と3次元アトムプローブ法を組み合わせ、正確な3次元での微細構造・組成/不純物分布を把握する手法を開発しています。
マルチスケール・マルチモーダル光スペクトルイメージング手法
化合物半導体や二次元半導体などの先端半導体材料を対象に、異なる空間スケールでの顕微フォトルミネッセンスと走査電子顕微鏡によるカソードルミネッセンスなどを組み合わせたマルチスケール・マルチモーダルスペクトルイメージング手法を開発し、物性の理解を深めていきます。
ベイズ推論によるスペクトル解析
窒化ガリウム半導体における2次元電子ガスのフォトルミネッセンス/カソードルミネッセンス スペクトルデータから、光・電子線励起によるキャリアの振る舞いを探求しています。
計測インフォマティクス基盤の構築
材料・デバイスの研究開発を効率的に進めるためには、計測→設計→合成・プロセスの実験サイクルを効果的に回す必要があります。そのためには、実験データを自動的に蓄積するデータベースが欠かせません。さらに、計測データの自動解析技術の開発も求められています。この目的のため、スペクトルデータのVision Fransformer技術などを活用した高速自動解析技術に取り組んでいきます。