矯正治療の限界について


マウスピース矯正だけではなく、ワイヤー矯正も含めた矯正治療の限界について書いています。

・矯正治療の途中で歯医者を変えることが難しい。

たまに、矯正治療中に他の歯医者に転院出来るかと質問を掲示板等で見かけますが、

「転院は出来ます」が、費用は新しいところで一からかかります。


治療が半分終わっているから、次の歯医者は半分でいいでしょ?というわけにはいきません。

引き継ぐ歯医者さんは、また一から治療計画をたてて、はじめから治療をスタートします。


他の治療でもそうですが、

この「診断して治療計画をたてる」というのが一番技術がいるところです。

そこにお金がかかっていると思って欲しいです。


高校卒業と同時に県外に就職や進学を予定している、

仕事で引っ越しの予定があるなど、

通院することが難しくなる可能性がある場合は、

治療期間が長くかかるので注意して計画を立てて下さい


・治療中は痛みが必ずある。

ワイヤー矯正、マウスピース矯正関係なく、必ず矯正中は、大なり小なり痛みがあります。

というのも、矯正治療は、歯に力を加えて、歯の周りの骨を破壊と再生をさせて歯を動かしていきます。

そのため、矯正治療中は、歯が浮いたように感じたり、硬いものを噛むと痛みを感じることがあります。

あと、触ると少し歯がグラグラします。

これは今のところ避ける事ができません。


特に、新しくワイヤーを変えたり、マウスピース矯正のフレームを新しく入れたりした直後が一番痛みがあります。

その後、数時間で痛みは落ち着き、2・3日でほとんど感じなくなります。


あまりに痛すぎるなどの症状がある場合は、矯正力が強すぎる場合もありますので、担当の先生に相談すると良いでしょう。


・ブラックトライアングルが出来る可能性がある。

「ブラックトライアングル」とは、歯と歯の間に隙間ができて、それが黒い三角形のように見えてしまっている審美障害の一つです。

この写真は当医院の患者さんの写真です。

真ん中の歯の間に隙間ができて、口腔内の暗さが透けて黒い三角形▼のようになっています。


原因として、

矯正治療をすることで、歯並びが綺麗になり、清掃性が上がり、もともとあった歯肉炎による歯肉の腫れがなくなり、引き締まってできる場合

重なっていて歯と歯の間が狭くて骨や歯肉が少なかった人が、歯をきれいに並べ変えることにより、歯の間がしっかりと開き、歯の間の歯肉が横に引き延ばされ歯肉の高さが減る場合

などが考えられます。


特に、歯の形が上が大きく根本が小さい、くびれが大きい場合には、起こりやすいです。


これは矯正治療ではどうしても起こってしまいます。

歯周病が原因で起こっているわけではないので健康上は特に問題ないです。

小さいものだと徐々に歯肉が盛り上がってきて目立たなくなってきます。


しかし、大きいものだとある程度は回復してきますが、どうしても残ってしまうことがあります。


改善方法として、

  • 歯と歯の間を少し削って、もう少し矯正治療をして、歯の間を狭める。
  • ブラックトライアングルの部分に歯と同じ色の樹脂コンポジットレジン(CR)を詰める

などの方法があります。

左の写真は、ブラックトライアングルをCRで改善しています。

詳しくは、「治療例 レジンで前歯部の審美治療」を参考にして下さい。


・虫歯になるリスクが上がる。

もちろん矯正治療をして歯並びが綺麗になれば掃除しやすくなり、虫歯になりにくくなります。


しかし、矯正治療中は、どうしても虫歯リスクが高くなる傾向があります。


特に、ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットという装置を接着します。

このブラケットが複雑な形をしているし、ほとんどの歯をワイヤーで固定するため、

どうしても、汚れがたまりやすくなります。

一回食事しただけで、違和感を感じるほど、歯の表面に食べかすがくっついてきます。


しかも、汚れがたまりやすい上に、ブラケットやワイヤーが邪魔でうまくブラッシングすることができないので、汚れが停滞してしまうのです。


画像検索などで「ブラケット 虫歯」などを検索すると、ブラケットの四角い跡が歯の表面についている写真を見ることができます。


ワイヤー矯正以外の取り外しのできる拡大床やマウスピース矯正でも、取り外しができるのでリスクはかなり小さくなりますが、入れていないよりは虫歯になりやすいです。


せっかく、歯並びが綺麗になったのに、歯と歯の間や、歯の表面に虫歯ができていたら意味ないですよね。

矯正治療をする歯科医院を選ぶときは、しっかりとブラッシング指導などをしてくれるところを選ぶと良いでしょう。

ただ単に並べるだけのところはダメですよ。


・歯根吸収のリスクがある。

矯正治療は歯に適正な力をかけて歯の周りの骨の破壊と再生をする細胞を活性化させて歯を動かします。

その為、歯の根の先が吸収される可能性があります。


矯正力が強すぎると起こるなど色々な説がありますが、

この歯根吸収の予防法はなく、予想もできません。


矯正治療を受けた歯は程度の差はあるがほとんど歯根吸収をしているとまで言われています。


歯根吸収が小さい場合は、特に問題ありませんが、

根の1/3ほど吸収されると、歯が揺れる(動揺)、歯周病になりやすいなどの症状が出てくることもあります。

最悪の場合は抜歯の可能性もあります。


歯根吸収のリスクが高いと言われているのは、

  • 矯正力が強すぎるほどなりやすい
  • 歯の移動距離が大きいほどなりやすい
  • 小児より成人の方がなりやすい
  • 治療期間が長いほどなりやすい
  • 根が曲がっているほどなりやすい

など言われています。


適切な矯正治療を受けられている場合は、影響が出るほどの歯根吸収は起こらないですが、

リスクとして知っておく必要はあると思います。


・矯正治療では、歯の形は変わらない。

当たり前なんですが、結構忘れがちです。

矯正治療は歯の位置や向きを整えることはできますが、大きさや形は変えることはできません。


矯正治療を受けて、確かに歯並びは綺麗になったけど、

  • 前歯が大きくていまいち満足しない。
  • もともと歯が小さくて(矮小歯)形が気に入らない。
  • 左右の歯の形が違うので気になる。

などの不満が出てくることがあります。


特に矯正治療を受けて綺麗になると今まで気にならなかったことが気になってくることがあります。


その場合は、歯の形を変える治療

  • 被せ物治療(メタルボンドやオールセラミック治療など)
  • 歯と同じ色の樹脂コンポジットレジン(CR)治療(ダイレクトボンディング)
  • つけ爪のようなセラミックを貼る(ラミネートベニア)治療

などを追加で必要になります。


私が行った治療で例をあげると、

治療例 マウスピース矯正とCRとホワイトニングのコラボ

が、マウスピース矯正後、CRで形を整えている例です。


矯正治療をする前から担当のドクターとしっかり打ち合わせをしておくと良いと思います。


ちなみに、当然ですが色も変わりません。

その場合は、ホワイトニングなどが必要になります。


・矯正治療後、歯並びは変化してしまう。

矯正治療には、歯を動かした後、必ず「保定」と呼ばれる歯を固定する期間があります。

これは、動かした歯が元の位置に戻ろうとするのを抑えて今の位置に固定させるためにします。


この保定期間が過ぎたからといって、歯が動かないわけではありません。

数年かけて少しずつまたずれていきます。


もともと、歯の位置は、噛み合わせや、舌や頬の力の影響などで決まってきます。

例えば、舌の力が強いと歯は外側に押し出されます。


矯正治療をしても、舌や頬の力は変わっていませんので、徐々に動かされてくる可能性があります。


その為、矯正治療後、舌側に針金で固定したりする必要があるのです。


今のところ私の所でマウスピース矯正をされた患者さんには、

3ヶ月ほどの保定期間の後、マウスピース矯正のリテーナーを夜のみ装着してもらっています。