発表概要

口頭発表講演タイトル

発表者

概要

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粘土ナノシート上に吸着させたペルオキシダーゼの吸着挙動と酵素活性評価

佐藤 勝哉 (都立大 高木研)

西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)は過酸化水素を基質特異的に分解する酵素である。当研究室では、サポナイトを剥離させた粘土ナノシートにHRPを吸着させた複合体が、本来HRPが反応性を殆ど持たないサイズの大きい過酸化物に対し活性が向上することを見出した。更に、HRPの吸着状態を詳しく調査するため、粘土ナノシートに負電荷密度の異なるサポナイトを用いて、各々にHRPを吸着させた際の吸着挙動及び酵素活性が変化するかを検討した。

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π共役系拡張アントラセンエンドペルオキシドの特異な結晶化学発光挙動

山崎 倫尚 (電通大 平野研)

本研究では、9-フェニル-10-フェニルエチニルアントラセンエンドペルオキシド(ANT-EP)の結晶化学発光を検討した。ANT-EPは対応するジフェニル誘導体よりも反応性が高い特徴がある。ANT-EPの結晶試料を加熱したところ、熱分解で生成した一重項酸素由来のりん光観測に成功した。さらに、510 nm付近の発光も観測された。この発光は本反応系ではこれまで報告例のない新たな発光である。この発光種の帰属と共にANT-EPの結晶化学発光特性を議論する。

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ピレン-ウレア誘導体の励起状態プロトン移動反応速度に対する溶媒効果

黄 楽耘 (筑波大 西村研)

ESPT反応は水素結合能力の影響を受ける可能性があり、その溶媒依存性は、分子構造と密接な関係があると考えられる。したがって、ESPT反応が関与する蛍光挙動を制御するためには、芳香族ウレア化合物のESPT反応に対する溶媒効果を調べることが重要である。 本研究では、電子吸引基のCF3 の置換位置の異なる二つのピレンウレア誘導体を用いて速度定数を計算し、ESPT反応に対する溶媒の影響を検討した。

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粘土上における3,3’-bpy2+ の吸着挙動と吸着分布の推定

中山 恵美子 (都立大 高木研)

固体表面における分子の吸着分布は非常に興味が持たれている。粘土上における3,3’-bpy2+ の吸着挙動と吸着分布を、紫外可視吸収、定常蛍光、蛍光寿命を測定し推定した。紫外可視吸収測定から、3,3’-bpy2+ は粘土上に吸着した際、二種類のコンフォマーを形成していることが示唆された。また、蛍光消光挙動から3,3’-bpy2+ は粘土上に均一な分布で吸着しているのではなく、一部が島構造のような分布で吸着していることが示唆された。

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蛍光団連結型1,2-ジオキセタン構造異性体の固相-固相転移型化学発光反応の発現

松橋 千尋 (電通大 平野研)

結晶内反応の制御要因及び相変化依存の反応性を明らかにするため、本研究では熱的安定性の高いアダマンチリデンアダマンタン 1,2-ジオキセタン(Adox)に蛍光団を連結した誘導体の構造異性体による結晶化学発光を調査している。蛍光団を2つ連結したAdox誘導体の構造異性体による結晶化学発光が固相-固相転移を伴う反応挙動となることを見出した。本発表では、構造異性体間での化学発光特性および相転移過程の違いとその機構について議論する。

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無機ナノシートの粒径が吸着分子の分布構造および光増感反応に及ぼす影響の検討

嶋田 凌大 (都立大 高木研)

当研究室では水中に分散する無機ナノシート材料と有機分子を複合化させた有機無機ハイブリット材料を研究してきた。本研究では、増感剤および還元触媒としてはたらく金属錯体をナノシートと複合化させ、光増感型プロトン還元反応の活性に対してナノシートの粒径が与える影響を検討した。この結果、ナノシートの粒径が吸着した金属錯体の表面近傍における分布構造を変化させ、活性に大きな影響を与えることが明らかとなった。

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ESPT反応を利用したアントラセン-ウレア化合物の白色発光制御

小山 拓希 (筑波大 西村研)

芳香族ウレア化合物は、アニオン存在時に励起状態分子間プロトン移動(ESPT)反応が起こり、互変異性体の励起状態(T*)を生成する。先行研究で、アントラセンの1位にウレア基が結合した1PUAのT*蛍光は、750 nm付近まで伸びることを示した。本研究ではフェニル基のp位に置換基を導入した1PUA誘導体についてアニオン添加時の分光測定を行い、F-1PUAが最も白色発光に適していることを見出した。

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π共役を制御したセレンテラジン類縁体の生物発光・化学発光特性の評価

當眞 英明 (電通大 平野研)

海洋発光生物の多くは、生物発光の発光基質としてセレンテラジンを利用している。実際に、セレンテラジンはウミシイタケやカイアシ、発光エビなどの様々な生物種のルシフェリンであり、発光分析に広く利用される。本発表では、生物発光特性の制御を目指し、セレンテラジンの中心骨格であるイミダゾピラジノン環の2位にπ共役系を直結させた発光基質を合成し、その生物発光特性を化学発光特性の結果を踏まえて評価する。


ポスター発表タイトル

発表者

概要

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1. 粘土ナノシート上で高輝度な発光を示すベンズイミダゾリウム誘導体と発光色変化の観測

森 巴完 (都立大 高木研)

当研究室では,「アニオン性粘土ナノシート」に、「カチオン性色素分子」を吸着させた「ナノシート-色素複合体」の光化学特性を報告してきた。中でも,ナノシートとの複合化による著しい発光増強現象は、ナノシート表面における分子の固定化で誘起されることから、Surface-Fixation Induced Emission (S-FIE) と呼んでいる。今回、ベンズイミダゾリウム誘導体を粘土上に吸着させ、発光増強および粘土の比率変化に伴う発光色の差異を観測できた結果を報告する。

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2. 粘土ナノシート上におけるジアリールエテンの三重項可視光増感型異性化反応

荒川 民杜 (都立大 高木研)

フォトクロミズムを示すジアリールエテン分子(DAE2+ )を, 三重項増感分子(イリジウム錯体([Ir]+ ))と共に粘土ナノシート上に吸着させ, その可視光増感型異性化挙動を観察した。DAE2+ の光閉環反応は本来紫外光を必要とするが, 本系では可視光による光閉環反応を達成した。ナノシート上では水中と比べてこの反応が促進された。DAE2+ / [Ir]+ が大きいほどその異性化量子収率は向上した。

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3. 近赤外発光色素(IR-1061)/粘土ナノシート複合体の含水溶媒中における光化学特性の評価

平出 有吾 (都立大 高木研)

IR-1061などの近赤外発光色素は疎水性であるため,蛍光プローブなどの材料として直接応用することが困難である.本研究では,IR-1061誘導体を親水性である粘土ナノシートと複合化させることで,水中における疎水性近赤外発光色素の更なる応用を目指した.結果,IR-1061の分子骨格の一部をピリジンに置換したIR-1061-Pyは,粘土に吸着することでモノマーとしての安定性が向上するとともに,近赤外域での発光強度の増加が確認された.

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4. アクリジン系1,2-ジオキセタン誘導体の合成と結晶化学発光特性

石川 健晴 (電通大 平野研)

1,2-ジオキセタン誘導体は,熱分解によって励起状態の生成物を生じ,化学発光を示す.この反応を分子結晶内で起こすと,反応の進行を発光検出によって追跡でき,反応の速度論や相転移の関与を可視化して,反応制御因子の解明に繋げられると期待される.本研究では,アクリダン構造を有する1,2-ジオキセタン誘導体を合成し,結晶試料の加熱による化学発光特性と結晶構造変化の関係について調査した結果を報告する.

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5. りん光を用いたホタル発光モデルの構築

佐藤 拓実 (電通大 平野研)

りん光は長波長かつ長時間発光といった特徴を持つが、熱失活や酸素によって消光するため、低温下でしか観測されないことが多い。しかし近年になって結晶中などの酸素と触れにくく、分子が固定される環境では室温でもりん光が確認されている。本研究ではホタル発光がこのような環境と類似しているという仮説を立てた。そこで、ホタルの持つ発光基質をりん光が期待されるような構造改変を行い、ホタル発光系での初の室温りん光発光を目指した。

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6. リン光を有するホタルルシフェリンアナログの開発

山角 亮太 (電通大 平野研)

ホタルはルシフェリン-ルシフェラーゼ反応(L-L反応)により発光する。通常のL-L反応を用いた生物発光では、蛍光発光を示すが、本研究ではリン光発光を持つホタルルシフェリンアナログの開発を行った。 T1 S1 よりエネルギー準位が基本的に低いため、 リン光発光は長波長化が期待できる。また、三重項励起状態であるT1 3O2より消光する。一方、L-L反応は酸素を必要とする。そのためリン光発光によるL-L反応は酸素濃度センサー機能の開拓に繋がることが期待される。

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7. アントラセンウレア化合物のESPT反応におけるπ共役効果

橘木 敦 (筑波大 西村研)

アントラセンの2位に結合した芳香族ウレア化合物(2PUA)は、基底状態でアニオンと会合体を形成し、励起状態の分子間プロトン移動(ESPT)を経て互変異性体(T*)を形成する。本研究では、2PUAとはπ共役が異なる化合物を合成し、各種分光測定を行った。そして、π共役はESPT反応における電荷移動相互作用を促進することが示唆された。

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8. フルオランテンーウレア化合物の励起状態分子間プロトン移動反応によって生成する互変異性体の電子構造に対するアニオンの効果

星野 竜輝 (筑波大 西村研)

芳香族ウレア化合物にアニオンを添加した際の光化学挙動を研究するために、アニオン源としてAcetateを用いた研究が行われてきた。 本研究では、アニオン源としてHydrogen sulfateを用いた時と、Acetateを用いた時の各種分光測定の結果を比較し、励起状態分子間プロトン移動(ESPT)反応によって生成する互変異性体の電子状態に対するアニオンの効果について議論する。