分子スピンサイエンスとは、分子性物質に内在する電子スピンを主役とし、その生成、相互作用の制御、ダイナミクス、ならびに物性・機能発現を探究する学際的研究分野である。研究対象は金属錯体、安定有機ラジカルおよびその配位化合物、高スピン分子、生体分子など多岐にわたり、化学的分子設計と物理的スピン概念が密接に結び付いている点に大きな特徴がある。電子スピンという量子自由度を分子レベルで自在に取り扱えることから、基礎科学にとどまらず、将来的な量子・光機能性材料への展開も期待されている。
このように、分子性化合物におけるスピンサイエンスは複数の学術分野にまたがって発展してきた。各分野が個別に深化する一方で、近年では分子スピントロニクス、多孔性結晶におけるナノ空間と電子スピンの相乗効果、量子もつれに基づく新奇な量子物性、さらには分子性量子ビット(Qubit)など、分野横断的な課題が顕在化している。これらの現象を本質的に理解するためには、分子合成・構造設計の視点と、スピン物性・ダイナミクスの視点を統合した議論が不可欠である。今回、「分子スピン」を共通概念として幅広い分野の研究者が集うことで、従来は分断されがちであった知見が有機的に結び付けられ、新たな研究展開の素地が形成されると期待している。
本シンポジウムでは、光・伝導性・磁性・機能性材料開発・量子スピン物性といった多様な切り口からスピンサイエンスを俯瞰し、電子スピンが分子レベルで果たす役割を改めて整理・再認識することを目的とする。さらに、各招待講演者の視点から分子スピン分野の将来像や期待を提示いただき、会場全体で本分野の「これから」について議論したい。これにより、研究者の新規参入や新たな学際連携の端緒を見いだし、次世代研究者が主体的に分子スピン研究を推進するための基盤形成につなげることを目指す。
主催:亀渕 萌 (大阪公立大,次世代分子スピン研究会コアメンバー)
15:30–15:35 開会のあいさつ 亀渕 萌 (大阪公立大学)
座長:石崎 聡晴 (東京理科大学)
15:35–16:05
S4-01 【チュートリアル講演】
ランタノイド系単分子磁石入門:分子はどのように磁石になるのか?
An Introduction to Lanthanide Single-Molecule Magnets: How Can a Molecule Behave as a Magnet?
堀井 洋司 (香川大学)
16:05–16:35
S4-02 【チュートリアル講演】
導電性金属錯体・導電性MOF入門:電気を流す秘訣とは?
Introduction to Conductive Metal Complexes and MOFs: Key Principles Behind Electrical Conduction
井口 弘章 (名古屋大学)
座長:亀渕 萌 (大阪公立大学)
16:35–17:05
S4-03
ラジカル系錯体を活用した量子マテリアルデザイン
Quantum Material Design Utilizing Radical-Based Complexes
山口 博則 (大阪公立大学)
17:05–17:25 休憩
座長:関根 良博 (熊本大学)
17:25–17:55
S4-04
特異な光学的・磁気的特性を示す液状化可能なイオン性開殻分子集積体の創製と展開
Design and Application of Liquescent Ionic Open-Shell Molecular Assemblies with Unique Photophysical and Magnetic Properties
鈴木 修一 (愛知工業大学)
17:55–18:25
S4-05
相互作用する分子スピンに基づく発光機能開拓
Development of Photofunctions Based on Interacting Molecular Spins
草本 哲郎 (大阪大学)
18:25–18:30 閉会のあいさつ 亀渕 萌 (大阪公立大学)