本研究会では、2024年ノーベル物理学賞の受賞対象ともなったホップフィールド模型とボルツマンマシンを中心に、基本的な理論と物理・機械学習における応用について学ぶ場を提供します。これらの模型の基礎とその後の発展に関するチュートリアル、および最先端の研究成果を紹介する発表を行い、今後の研究の展望を窺います。また、議論時間を十分に設けることで、参加者が自身の研究に生かせるような有意義な議論を行い、新たな研究のインスピレーションを得る場とします。
野村 悠祐 氏(東北大学金属材料研究所)
ボルツマンマシンの基礎と量子多体問題への応用
三村 和史 氏(広島市立大学)
ホップフィールド模型の基礎と応用
野村 悠祐 氏(東北大学金属材料研究所):
ボルツマンマシンの基礎と量子多体問題への応用
2024年のノーベル物理学賞のscientific background(https://www.nobelprize.org/uploads/2024/11/advanced-physicsprize2024-3.pdf)の中に
”In some applications, ANNs are employed as a function approximator [36]; i.e. the ANNs are used to provide a “copycat” for the physics model in question. This can significantly reduce the computational resources required, thereby allowing larger systems to be probed at higher resolution. Significant advances have been achieved in this way, e.g. for quantum-mechanical many-body problems [37-39].”
という文言があります。本講演では、ここで言及されている、人工ニューラルネットワーク(本講演ではボルツマンマシン)の関数近似器としての活用、特に、引用文献[38] "G. Carleo and M. Troyer, Science 355, 602 (2017)"で導入された量子多体波動関数の近似器としての活用、をメインテーマとして、ボルツマンマシンの基礎とその量子多体問題への応用に関してお話ししたいと思います。
三村 和史 氏(広島市立大学)
ホップフィールド模型の基礎と応用
情報を再帰結合回路の定常状態として埋め込む模型であるホップフィールド模型について、その研究の歴史を簡単に振り返りながら、基本的な性質を解析手法を交えて紹介する。また、最近提案された記憶容量が改善されたモダンホップフィールド模型について、注意機構や誤り訂正符号などとの関連や、最近の研究についても概説する。
今田 正俊 氏(上智大学 / 東京大学)
量子多体問題と機械学習
太田 敏博 氏(サイバーエージェント AI Lab)
モダンホップフィールド模型としての Attention, MLP-Mixer
樺島 祥介 氏(東京大学)
非単調素子を用いた連想記憶モデルの動的平均場解析
唐木田 亮 氏(産業技術総合研究所)
RBM学習に対するモダンホップフィールド模型の位置づけ
山地 洋平 氏(国立研究開発法人 物質・材料研究機構)
量子物質のための数値分光法とニューラルネットワーク
吉野 元 氏(大阪大学)
多層パーセプトロンネットワークによる機械学習の情報統計力学:可解模型とその先
パネリスト
三内 顕義 氏(京大理、AIと数学)
谷口 忠大 氏(京大情報)
大塚 淳 氏(京大文、哲学)
榎戸 輝揚 氏(京大理、物理、観測)
広野 雄士 氏(阪大理(元京大理)、AIと物理理論)
モデレータ:橋本幸士(京大理、学習物理領域代表)
AIと物理学が融合した研究領域である学習物理学において、生成AIの革命期が受容されつつあります。革命にあたり、これからの科学のあり方や形を議論することは、私たち科学者が路頭に迷わないためにも、また未来を作っていくためにも、重要なことです。本パネルディスカッションでは、学習物理学やAIと科学の未来について、さまざまな学問の見地から皆さんで議論しましょう。
橋本幸士(京都大)、広野雄士(大阪大)、金子隆威(上智大)、三内顕義(京都大)、棚橋典大(京都大)