日時: 2021年8月19日, 20日
場所: オンライン, Zoom
登録フォーム: 締切8月12日. 講演者変更に伴い8月19日10amまで受け付けます.
池田 曉志 (城西大学 理学部)さんの講演はキャンセルとなりました(世話人の金沢が代役を務めます).
::: 講演者 :::
池 祐一 (東京大学)
金沢 篤 (慶應義塾大学)
大谷 拓己 (大阪大学)
金城 翼 (東京大学)
厚東 裕紀 (京都大学)
小林 和志 (千葉大学)
::: プログラム :::
8月19日
13:00-14:00 池 祐一
14:15-15:15 金沢 篤
15:30-16:30 大谷 拓己
8月20日
13:00-14:00 金城 翼
14:15-15:15 厚東 裕紀
15:30-16:30 小林 和志
::: 講演題目&概要 :::
::: 池 祐一 ::: 層の圏におけるインターリービング的距離と分離エネルギー
柏原とSchapiraによって創始された超局所層理論は層係数のモース理論とも呼べるもので,近年はTamarkinやNadler-Zaslowの先駆的な仕事をはじめとしてシンプレクティック幾何に応用されている.本講演では話を余接束に限って,二つのコンパクト部分集合のハミルトン微分同相による分離エネルギーを層理論的に下から評価する手法について説明する.証明は,パーシステントホモロジー理論におけるインターリービング距離の類似物を層の圏に導入して,ハミルトン微分同相による層の変形がその距離をHoferノルム以下しか変えないことを示して行われる.これは浅野知紘氏との共同研究に基づく.
::: 金沢 篤 ::: 一般化K3曲面の剛構造とミラー対称性
Hitchinによって導入された一般化CY構造はCY構造とシンプレクティック構造を同一の枠組みで扱う理論である. 実4次元(一般化K3曲面)の場合には, Huybrechtsによって詳細な研究が行われ, 特にN=(2,2)超共形場理論のモジュライ空間(Aspinwall-Morrisonの結果)との関係が明らかにされた. 本講演では一般化CY構造が整コホモロジーに定める構造に着目することで, 一般化K3曲面の複素剛構造とKahler剛構造を導入する. 前者は特異K3構造の一般化であり, 後者はミラー対称性の観点からその存在が期待されていたものである. またミラー対称性も一般化K3曲面の枠組みで自然に一般化され, 特に特異K3曲面のミラー対称性の問題を解決することを解説する.
::: 大谷 拓己 ::: Weyl群不変式論によるFrobenius多様体の構成
Frobenius多様体の構成方法は,Gromov-Witten理論,変形理論と原始形式,Weyl群不変式論,の3種類の方法が知られており,これらの構造はミラー対称性においても重要な役割を果たす.しかしながら,Weyl群不変式論による構成は,有限型,(拡大)affine型,楕円型のルート系の場合にしか系統的に構成することができていないのが現状である.本講演では,affine型の一般化にあたる幾つかのルート系に対して,Frobenius多様体の構成方法とその構造について紹介する.本講演は,池田氏,白石氏,高橋氏との共同研究に基づく.
::: 金城 翼 ::: 偏屈層を用いた仮想基本類の構成
幾何学的な対象を数え上げる不変量を構成する際、対象のモジュライ空間の次元と指数定理などで計算される仮想的な次元が異なる場合は基本類ではなく仮想基本類でコホモロジー類を積分することで不変量が与えられる。代数幾何のモジュライに対する仮想基本類はBehrend-Fantechiによって障害束の全空間に具体的にサイクルを構成することによって与えられた。本講演では消滅サイクル複体と呼ばれる偏屈層を係数とするThom同型を用いた新しい構成について説明する。また、四次元カラビヤウ多様体の連接層の数え上げ不変量(DT4不変量)の偏屈層を用いたアプローチについても議論する。
::: 厚東 裕紀 ::: トーリック束の解析的量子D加群の直和分解
複素射影多様体上の直線束の直和のGIT商をとることにより,トーリック多様体をファイバーとする束が得られる.このようなトーリック束のGromov-Witten不変量や量子コホモロジーは,Brownが構成したI関数を用いて計算できる.また,Brownの結果を用いると,トーリック束の形式的量子D加群が底空間の量子D加群の直和に分解されることが分かる.本講演では,底空間の量子コホモロジーが収束する場合に,トーリック束の量子コホモロジーが収束すること,および量子D加群の直和分解が解析的になることを説明する.
::: 小林 和志 ::: 高次元複素トーラス上の射影的平坦束の成す完全三角系列について
一般的に, ホモロジー的ミラー対称性により, シンプレクティックトーラス上の アファインラグランジュ部分多様体とその上の局所系の組の成す完全三角系列と, ミラー双対な複素トーラス上のある種の射影的平坦束の成す完全三角系列が対 応すると考えられている. 特に, 自身のこれまでの研究により, 高次元複素トー ラス上で定義される3つの射影的平坦束とそのシフトから成る完全三角系列であ って, ある特定の条件を満たすようなものに関しては, 本質的には楕円曲線上で 定義される完全三角系列から誘導されて定まるものに限るということが証明され ている. 本講演では, ホモロジー的ミラー対称性から予想される対応関係につい ても考慮しつつ, この研究結果について紹介する.
::: 世話人 :::