東京大学 駒場キャンパス
(ワークショップとポスターセッションの参加は無料です)
10:00 ~ 10:10
開会の言葉
10:10 ~ 10:40
長尾 大道 (東京大学 地震研究所)
数理科学が加速する地震研究
キーワード: 地震,人工知能,データ同化
現代のわが国における地震研究は,全国2,000ヶ所以上に設置された地震計で得られる観測データと,物理モデルに基づく数値シミュレーションが,その根幹を支えている.昨今のデータの大容量化とシミュレーションの大規模化に伴い,従来型の統計学的手法に基づく地震波検出や到来時刻決定をはじめとするデータ解析,偏微分方程式の数値解析に基づく地震波伝播をはじめとするシミュレーション,およびその両者をベイズ統計学によってつなぐデータ同化は,世界最高の計算機をもってしても限界があることは明白である.この打開策として,現在隆盛を誇っている人工知能技術が地震分野においても2018年頃から世界で急速に導入され始め,わが国でも2021年度より開始となって文部科学省「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト」(STAR-Eプロジェクト) が中心となって,地震研究に資する数多くの人工知能技術の開発研究と応用研究が実施されている.本講演では,STAR-Eプロジェクトの主な成果について紹介した上で,今後の地震研究のさらなる発展に向けた数理科学への期待について述べる.
10:40 ~ 11:10
田中 佑典 (NTT株式会社)
物理学を帰納バイアスとする機械学習
キーワード: Physics-informed Neural Network,作用素学習,ニューラル常微分方程式
近年,物理シミュレーションのための機械学習に関する研究が活発化している.機械学習による高精度化・高速化が期待される一方で,従来の機械学習手法の素朴な適用では,物理法則に従う信頼できるシミュレーションは困難であることが少なくない.そこで,物理学に由来する方程式や数理構造を,事前知識(帰納バイアスと呼ばれる)として機械学習に活用するアプローチが有効である.本講演では,機械学習研究者の視点から,数理科学との融合の重要性について,ハミルトン力学を帰納バイアスとした研究成果を交えながら紹介する.
11:10 ~ 11:40
中邨 博之 (BIPROGY株式会社 総合技術研究所)
流線トポロジカルデータ解析ソフトウェアの研究開発
キーワード: 流線トポロジカルデータ解析 (TFDA),ハミルトンベクトル場,二重周期境界条件
流線トポロジカルデータ解析 (Topological Flow Data Analysis: TFDA) とは,京都大学の坂上教授を中心とするグループで考案・開発された,流れのデータから構造・パターンをグラフ構造や文字列として抽出する数学的理論・技術である.BIPROGY総合技術研究所では,2023年度より京都大学・埼玉大学・東北大学 (2024年度からは京都大学・埼玉大学・富山大学) とTFDAソフトウェア研究開発に関する共同研究を継続実施している.大学における研究によってTFDAの理論は整備されているものの,その産業応用のためには多くのユーザ企業の開発現場で使ってもらえるようなソフトウェアの開発が必要であるとの坂上教授からの相談を受けて,共同研究がスタートした.本講演では,この共同研究の内容を中心に,BIPROGY総合技術研究所での取り組みをご紹介したい.
13:00 ~ 13:15
小谷 元子 (理化学研究所)
CREST [予測数学基盤] 領域紹介
13:15 ~ 13:30
荒井 迅 (東京科学大学)
さきがけ [未来数理科学] 領域紹介
13:30 ~ 14:00
谷口 隆晴 (神戸大学 大学院理学研究科)
数学・物理・計算の融合と国際連携によるScientific Machine Learning
キーワード: Scientific Machine Learning, 科学技術計算,幾何学的力学
近年,Scientific Machine Learningと呼ばれる,物理モデリング・シミュレーションのための機械学習手法が注目されています.この分野の研究では,数理科学の知識,物理現象の知識,計算科学の知識を融合した,非常に強力な科学技術計算手法が開発されつつあります.本講演では,特に,講演者が取り組んできたJST CRESTの研究の中で,国内・国際異分野共同研究によって,どのように研究が広がっていったかを紹介させて頂きます.
14:00 ~ 14:30
丸山 善宏 (名古屋大学 大学院情報学研究科)
数学で切り拓く次世代AIパラダイム
キーワード: 人工知能,機械学習,圏論
統計的機械学習を中心とした現在のAI技術はその成功の裏で膨大なリソースを必要とするという難点があり,エネルギー問題や水資源などの環境問題の観点からもその問題が議論されています.一方で,例えば数学の問題やルービックキューブを解くというような知的タスクに対して,人間の脳は現在のAIよりもずっと少ないエネルギー消費量で問題解決を行うことができます.それはなぜでしょうか.本講演では,現在の機械学習技術の限界に関する最新の研究成果を紹介した上で,これまで機械学習の現場であまり応用されてこなかった新たな抽象数学理論を導入した,現在のリソース勝負AIの一歩先をゆく斬新な理論的アプローチの可能性とその現在までの研究成果についてお話しします.人間の脳のような,現在の機械学習の観点からは不思議な知的効率性を可能にする,新たな機械学習パラダイムの方向性とその数理基盤のあり方について,本ワークショップの参加者の皆さまと共に考えることができたら幸いです.
14:45 ~ 15:15
ポスターセッション講演者 ショートトーク
東京大学 駒場キャンパス
15:15 ~ 16:45
ポスターセッション
東京大学 駒場キャンパス
数理科学研究科棟 2F コモンルーム
17:00 ~ 19:00
交流会
(当日会費をお支払いいただきます)