招待講演

招待講演一覧(名前順)

〇山崎 剛 様(東北大学理学研究科 教授)

講演タイトル

「雪や植物からはじめた気象学」

講演要旨

私は学部、大学院在学のころから、地表面過程に関わってきました。特に興味を持ってきた、積雪や植物に覆われた地表面と大気の相互作用についてお話しします。地表

面は私たちの生活空間です。また、下部境界として大気現象に強く作用します。後半では、最近取り組んでいる地域気候の将来予測と領域再解析について触れたいと思い

ます。領域再解析は、すでに起こった気候変動や災害を引き起こした顕著現象を解析するなど、様々な可能性を持っています。

学生へのメッセージ

頻発する気象災害を例に出すまでもなく、気象学は防災や気候変動、環境問題との関連でますます重要になるはずです。ぜひ、自分なりのテーマやアプローチを切り開い

ていってください。当日は、研究内容だけでなく、体験談も含めてお話ししたいと思います。皆さんが道を模索していくのに、ほんの少しでも参考になれば幸いです。今

年はオンラインという形で、実際に集まることがず、参加者同士が直接寝食をともにできないのは残念ですが、新しい交流の形が見えてくるといいですね。

〇和田 幸一郎 様(元秋田地方気象台長、秋田朝日放送 気象キャスター)

講演タイトル

「近年の豪雨災害と防災」

講演要旨

近年、これまで経験したことのない豪雨災害が各地で発生し、毎年のように多くの尊い命が失われている。

その背景には地球温暖化も挙げられるが、一方では気象知識の不足や防災気象情報の理解不足、防災に対する意識の低下により自分は大丈夫といった正常化の偏見があると考えられる。

今回は、東北地方を襲った豪雨災害の事例を振り返り、気象台在勤中に目の当たりにした苦い経験(失敗)や自治体などと連携して行った防災の取り組みなどについて紹介するとともに、現在、気象キャスターとしてテレビカメラの前に立つ思いを語る。


学生へのメッセージ

昔の気象予報は、予報官の調査・研究や長年の経験で育んだ技術に支えられていたが、現代は物理学方程式により風や気温などの時間変化をコンピュータで計算して将来の大気の状態を予測する「数値予報」に取って代わった。

予報官の技術のばらつきに依存しない客観的な予測モデルが安定した天気予報を毎日発表できるシステムになったとはいえ、実際の気象予測はコンピュータどおりにはならない事実がある。

そこが人間(技術者)の存在の意義のあるところであり、今後の予測精度の向上を図る役割も担っている。

また、気象庁の大きな任務は防災である。気象は科学(物理)であるのに対して防災は社会(コミュニケーション)であると考えている。

気象を学ぶ学生の皆さんには、コンピュータでは成し得ない人との関わり(人の心)が防災には非常に重要であることを本講義の中から感じとっていただければ幸いである。