メソ気象セミナーでは、「メソ気象研究のこれまで・今・これから」をコンセプトとしてセミナー形式で議論することを目的としています。議論の内容は、数多くの観測的・数値的・理論的な研究により明らかにされてきた『メソスケール気象学』について、これまでにどこまで理解されているのか・現在はどのような研究が行われているのか・さらには今後どのような研究を行っていくべきかについて取り上げます。
講師:
芳村 圭 氏(東京大学 生産技術研究所)
趣旨説明:
第11回となる本セミナーでは、メソスケール気象現象と密接に関連する水文学を取り上げ、大雨をもたらす水循環過程や河川の物理プロセス、気候変動の影響を総合的に議論します。講師の芳村圭氏は、水の安定同位体比を用いた地球規模の水循環解明を先導した同位体気象水文学の第一人者であると同時に、JAXAと共同開発したリアルタイム洪水予測システム「Today’s Earth」により世界全域を対象とした高精度洪水予測を推進してきた土木工学者です。本セミナーでは、芳村氏の同位体気象水文学としての最新の知見を共有するとともに、参加者からもメソ気象と水文学の研究知見を共有し、メソ気象と水文学の今後の研究課題や連携の可能性を議論します。講演のほか、学生・若手研究者による口頭およびポスター発表を通じて理解を深め、学際的な議論を促進します。気象学、水文学、土木工学など多様な分野の研究者・技術者・学生の参加を歓迎します。
講師の紹介
東京大学 生産技術研究所 教授
博士(工学)(東京大学)
略歴
2000年3月東京大学工学部社会基盤工学科卒業
2002年9月東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻修士課程修了
2002年10月(独)科学技術振興機構技術員
2004年5月東京大学生産技術研究所助手
2006年6月~2008年5月米国カリフォルニア大学サンディエゴ スクリプス海洋学研究所客員研究員
2008年8月米国カリフォルニア大学サンディエゴ スクリプス海洋学研究所プロジェクト研究員
2010年3月東京大学生産技術研究所准教授
2010年4月東京大学大気海洋研究所准教授
2017年4月東京大学生産技術研究所准教授
2019年6月東京大学生産技術研究所教授(現職)
水の安定同位体比(δ¹⁸O, δD)は、水循環における蒸発・凝結・輸送などのプロセスを直接的に反映する指標である。本発表では、水同位体比の基礎を概説したうえで、近年の技術革新によって実現した分光法による大気中の水蒸気同位体比の地上及び衛星観測など、従来不可能であった高頻度・高精度測定の進展を紹介する。また、大気大循環モデルや領域モデルへの水同位体の実装の現状を整理し、観測とモデリングを統合することによる気象・水文現象の理解向上の可能性を議論する。
水同位体は、地球表層の水循環の動態を物理的に記録しているトレーサーとして、様々なスケールでの気象・水文過程を逆解析的に理解する手がかりを与える。本発表では、そうした例として、対流圏中層での水蒸気同位体比の衛星観測情報をデータ同化することによる天気予報精度を向上させる取り組みと、アイスコア・サンゴ殻・樹木セルロース・石筍などの同位体比記録を直接活用した数千年スケールの気候変動復元に向けた研究を紹介する。
洪水は自然現象であるが、それが「災害」になるかは社会的な備えに依存する。本発表では、衛星観測と数値モデルを融合した、全球規模から市町村スケールまでの陸域水文量モニタリングシステムToday's Earthを用いた洪水予測研究の進展を紹介する。さらに、予測結果を行政や住民に届ける仕組みや社会実装事例を示し、科学的知見を「減災」へと結びつける挑戦を議論する。
芳村圭. (2018). 同位体気象水文学の展望. 水文・水資源学会誌, 31(6), 554-559.
https://doi.org/10.3178/jjshwr.31.554
芳村圭. (2021). 数値洪水予測の改善に向けた衛星からの水面域抽出とシミュレーションとの融合. 日本リモートセンシング学会誌, 41(2), 224-227.
https://doi.org/10.11440/rssj.41.224
ポスター講演者:10名程度
口頭発表4件程度(発表20分質疑10分程度) 締め切りました
ポスター発表10件程度 締め切りました
若手の講演者の旅費を補助できる可能性があります(詳しくは事務局までお問い合わせください)
日時:10月4日(土)19:00~21:00
会場:郷土料理の店 居酒屋 バンガロー https://www.hotpepper.jp/strJ000032211/
会費:社会人 7,000円、学生 3,000 円
参加受付は先着順のため、タイミングによっては現地参加できないことがございますことをご了承ください。満員となった場合はWebによる配信を実施する予定ですが、あくまでもベストエフォートでの配信となりますので、聞きづらいことなどあるかもしれないこと、ご承知おきください。
お問い合わせは,メソ気象セミナー事務局 meso.discuss [at] gmail.com まで.
(お手数ですが、[at] を @ に変えて送ってください。)
*スケジュールは変更になる場合があります。
1日目 10月4日(土)
09:30-10:00:受付
10:00-10:10:開会挨拶・趣旨説明
10:10-11:10:第1部 芳村氏による招待講演「同位体気象水文学研究第一部:水同位体とは?新しい水同位体の観測技術とモデリング」
11:10-11:40:質疑応答
11:40-13:00:昼休み
13:00-14:00:第2部 芳村氏による招待講演「同位体気象水文学研究第二部:水同位体情報を用いた気象予測及び気候復元」
14:00-14:30:質疑応答
14:30-14:45:休憩
14:45-16:45:第3部(若手研究者による口頭発表、質疑込み30分4件)
16:45-17:00:記念撮影・ポスター準備
17:00-18:30:第4部(参加者によるポスター発表)
19:00-21:00:懇談会
2日目 10月5日(日)
09:30-10:30:第5部 芳村氏による招待講演「 全球から市町村スケールでの水文予測研究:「洪水を災害にさせない社会」にむけた取り組み」
10:30-11:00:質疑応答
11:00-11:15:休憩
11:15-12:00:総合討論・閉会挨拶
鵜沼昂 (気象研),大屋 祐太 (道総研),春日悟 (三重大),加藤亮平 (防災科研),下瀬健一 (防災科研),末木健太 (気象研),津口裕茂 (気象大),栃本英伍 (気象研),西井章 (名大),横田祥 (気象庁) ,吉住蓉子 (日本気象協会),渡邉俊一 (気象研)
謝辞
本セミナーは、公益財団法人中辻創智社による会議開催費の助成を受けています。
2025-09-30 プログラム・懇親会情報・謝辞を追記。
2025-07-08 ホームページ公開。
2025-07-01 会場情報を追記。
2025-06-20 開催日を追記。
2025-04-27 ホームページ作成。