『林苑計画書』から読み解く明治神宮一〇〇年の森

二〇二〇年に鎮座百年を迎えた明治神宮の森は、荒地に人の手で作られた人工の森です。一見、もともとそこにあった「原生林」かと見まちがいそうなこの森を、趣向を凝らして作り上げてきた計画者や技術者たちがいるのです。彼らが、何を考え、どんな工夫や仕掛けを施し、そして未来に何を託したのかが通称『林苑計画書』とされる『明治神宮御境内林苑計画書』には記されています。
 本書は、12人の著者が『林苑計画書』を読み解き、ランドスケープの視点から明治神宮林苑の見どころや秘めたる歴史を紐解いた「ガイドブック」です。本書を手に取って、スマートフォンを片手に現地を訪れることで新たな「風景」が皆様の目の前に立ち現れることを願っています。

はじめに

明治神宮 見どころマップ

航空写真で見る明治神宮と森の歴史

最新の技術「レーザー測量」で見る明治神宮

上田裕文

第一章 前代未聞の神社を考える

移り変わる森の姿 〜マツからクスノキの森へ〜         水内佑輔

なぜ、代々木が選ばれたのか                 髙橋靖一郎

どこに御社殿を定めるか                   髙橋靖一郎

第二章 林苑の風景を作りこむ

神社らしさを託されたアカマツ 〜最も神聖な場所をつくる〜 江尻晴美

落葉樹と渓谷 〜造園的手法で変化する参道の風景をつくる〜 寺田 徹

サカキと防砂林と調整池 〜林苑のバックヤードをつくる〜 竹内智子

芝生とビスタ 〜西洋風の風景をつくる〜            水内佑輔

イヌツゲ  〜聖と俗の「境界」をつくる〜            田中伸彦

御苑 〜明治につくられた近代庭園〜             髙橋靖一郎

第三章 一〇〇年後に向けて風景を育てる

戦場のようであった献木の受け入れ現場      近藤 真

森がひとり立ちするまでの撫育          四戸秀和

土壌は一日にしてならず             小林邦隆

水を制する者は森を制する                   押田佳子

その後を託された技師たち                   小堀貴子

コラム 林苑をもっと知りたい

1 林苑の五人のプランナー                水内佑輔

2 明治神宮の森の樹木                     小林邦隆

3 明治神宮の森に影響を与えたドイツの「森林美学」      上田裕文

4 代々木公園の森 〜日本初のバードサンクチュアリ〜     竹内智子

5 近代化・西欧化を象徴する明治神宮外苑            田中伸彦

おわりに

著者 明治神宮とランドスケープ研究会
編集 上田裕文+水内佑輔+寺田徹+髙橋靖一郎
発行 公益財団法人 東京都公園協会

水内佑輔・上田裕文