第308回
日時: 2026年 11月7日(土) 15時~18時
場所: 明治学院大学白金校舎1455教室
講演者: 原 隆 (津田塾大)
タイトル: 対称多重アイゼンシュタイン級数について
アブストラクト: 多重ゼータ値の張る空間の次元については,Don Zagier を中心に様々な予想が提出されているが,中でも重さ k の2重ゼータ値の張る \mathbb{Q}-ベクトル空間の次元は,[(k+1)/2]-1 から S_k (重さk, フルレベルの楕円尖点形式の張る空間) の次元を減じたものであると予想されている.この予想は,2重ゼータ値の間に楕円尖点形式由来の線形関係式 (モジュラー関係式) が存在することを強く示唆しており,Herbert Gangl, 金子昌信, Zagier は2重ゼータ値がフーリエ級数展開の定数項に現れる2重アイゼンシュタイン級数を導入することで,この現象を詳しく研究した.その後,さらに多重化された多重アイゼンシュタイン級数も導入され,多重ゼータ値のモジュラー関係式の研究に用いられるのみならず,様々な観点から現在も盛んに研究されている.
一方で,金子と Zagier によって導入された有限多重ゼータ値 (\mathcal{A}-多重ゼータ値) においても,重さ k の3重ゼータ値の張る空間に対して,やはり楕円尖点形式由来のモジュラー関係式の存在を示唆する次元予想が提出されている.金子−Zagier 予想は,有限多重ゼータ値が対称多重ゼータ値 (\mathcal{S}-多重ゼータ値) と (ζ(2) を法として) 対応することを主張するものであり,この哲学に従うのであれば,上記のモジュラー関係式は「対称多重ゼータ値の間のモジュラー関係式」を介して説明されるべきであると考えられる.さらに,Gangl, 金子, Zagier に倣うと,対称多重ゼータ値の間のモジュラー関係式は,対称多重ゼータ値を定数項にもつ対称多重アイゼンシュタイン級数を用いて解析できるのではないかと期待される.
本講演では,以上のような動機から講演者等が導入した対称多重アイゼンシュタイン級数について解説する.最初に Maxim Kontsevich による対称化の操作を,ある程度抽象的な設定で導入し,それを多重アイゼンシュタイン級数に適用することで対称多重アイゼンシュタイン級数を定義する.その後,対称多重アイゼンシュタイン級数の基本的な性質を概観し,以下の2点について時間の許す限り解説する予定である.
(I) 重さ k の楕円尖点形式の空間が,重さ k の対称3重アイゼンシュタイン級数の空間に含まれること (対称3重ゼータ値のモジュラー関係式の存在)
(II) 重さkの対称2重アイゼンシュタイン級数の空間の構造決定
なお,本講演の内容は,佐久川憲児 (信州大学),田坂浩二 (近畿大学) との共同研究に基づく.
2026年度は以下のご講演者を予定しています.
2026年 12月12日(土) 15時~18時 小川原弘士 (城西大) 場所: 明治学院大学白金校舎1455教室
第307回
日時: 2026年 10月24日(土) 15時~18時
場所: 明治学院大学白金校舎1455教室
講演者: 蛭子 彰仁 (千葉工大)
タイトル:超幾何級数からみた $1/\pi$ 公式
アブストラクト:$1/\pi$ 公式と呼ばれる一連の公式がある。
これらは $1/\pi$ を特別な超幾何級数の和として表すものであり、
なかでもChudnovsky兄弟による公式は $\pi$ の高精度計算に使われている。
また、これらの公式が不思議な形をしていることから、
その背景や導出について、これまで多くの研究がなされてきた。
通常、これらの公式の導出には、超幾何級数だけでなく、
モジュラー関数や虚数乗法論など、さまざまな数学が用いられる。
本講演ではこれとは異なり、超幾何級数の一般的な知識のみを用いて、
いくつかの $1/\pi$ 公式を構成する方法を紹介する。
具体的には、超幾何級数の隣接関係式、変換公式および特殊値公式の構成法を概観し、
それらを組み合わせることによって、実際に $1/\pi$ 公式を導出する。
世話人 村田 玲音(明治学院大)・川島 誠(明治学院大) ・齋藤 耕太(日本大)