タキツヒメ、再びッ!

…なんじゃ、またしても。

いやいや、おかげさまでなんだか必要以上にスッキリしてしまいまして!

波の方は、うーん…まだ本調子ではないですけれど…

…しかし! メンタル的にはもう十分にいつものぼくなのです!

“ムナカタ三女神”の一柱、タキツヒメそのものなのですよ!

う、うるさいなぁ…

確かにそのやかましさは掛け値なしのタキツヒメじゃろうよ。

で、何の用なのじゃ?

…そんな邪険にしないでくださいよ。

元々、時化の事後調査ということでぼくについて回ったの、そっちじゃないですか。

え? あー…それもそうか…

そして、気持ちの上では完全復活を果たしたこのぼくは、今!

とっても体を動かしたいのです!

え、何じゃお前。また《神格試験》を担当するつもりか?

ご明察!

いや、ええわ。遠慮しとく。

ななな、なんでですかぁ!!

だ、だって、お前の悩みはとりあえず解決したじゃろうが!

どうやら時化の原因とは無関係だったようじゃし…

あと、今のお前いつにもましてドやかましいし…

次はイチキの調査に…ううむ、それはそれで気が滅いるが…

そ、そんなこと言わず、少しだけ付き合ってくださいよぉ!

この試験に合格したら、良いものあげますから!!

…良いもの?

…ふっふっふ。この、タキツヒメ秘蔵の…

“波”の神衣です!!

ほほう。

どうですかッ!

いや、申し出は有り難いが、調査があるから…

良いじゃないですが!お願いしますよぉ!!

わ、わわ分かってたっての!

なんでそんな必死なんじゃよお前は…

ほ、ほんとですか!!

よぉし、気合い入れていくぞぉ!覚悟しろ、ツクモ!

ぼくの“波”の神衣…簡単には渡さないからな!

“ムナカタ三女神”の一柱として!

…タキ様、張り切ってますね!

…あーもう、面倒くさいなぁ…

悩みがなくなったと思ったら、途端にあのテンションじゃ…

まぁ、しょうがないですよ。タキ様は“波”のめがみ様なのですから。

…なんだか都合の良い言い訳みたいになってきたな、ソレも。

多分、最後のコトバから察するに…

“神衣”をかけた試験でもやりたかったのじゃろうな。

…“神衣”って別に奪い合うようなものではないのじゃけどなぁ…

でも、せっかくなので頂きたいものですね!タキ様の神衣!

この際じゃ、もらうモノもらって、さっさと次の調査に向かうとしよう。

…なんだか、タキ様への扱いがどんどん雑になってませんか…?

《お供え物》、頂きますッ!!

…いや、やるけども。

ちょっとちょっとちょっと~っ!なんですかなんですかなんですか~!

ノリが悪いですよ!

ノリって、お前な…

そんな先回りせんでも、《お供え物》はこっちからちゃんと渡すってのに…

おっとと!コレはまた、失礼しました!

では、《お供え物》は一度お返しして…

…はい!

…………

…み、見つけてきたぞ~。《お供え物》~…

《お供え物》、頂きますッ!!

イヤいらんじゃろ、このやりとりは!

アマテラス様が文句をつけたのではありませんか!

不必要にバカ高いそのテンションは一体なんじゃと聞いとるんじゃよ!

いえ、むしろコチラが本来のぼくだと言って差し支えないと思うのですよ。

海原に大きな波を立てるには、やはり巨大なエネルギーが必要ですからね!

体の底から湧きあがる、大きなウネりのような力…

これがあってこそ、調子の波をも乗りこなせるというものでございましょう!

…前回の内に、お前を絶不調のドン底に叩き落とすべきだったかもな。

またまた~…そんな意地悪言わないでくださいよ。

ちゅうか、大きな波を立てるのにエネルギーがいるというのは分かるが…

小さな波を生み出したり、荒波を鎮める時はどうするつもりじゃ?

そんなバカ高いテンションでうまく制御できるのかよ…

あ、そちらもご心配なく!

そういうときは、こうやって…

…………

…………

…………

…キブンをどんよりと… …させるんです…

…はぁ…

…おい、前にも増して気持ちの波が激しくなっておらんか?

…………

…帰りたい…

コレはコレで鬱陶しいなぁ!!

ま! それはさておき!

こうしたたゆまぬ努力の果てに!己の波と付き合う方法があるはずです!

今回の試験は、ぼくの努力が間違っていないかを確かめるための…

言わば、方向確認でもあるワケです!

ゼッタイに間違っとると思うのじゃがなぁ…

なぁに、間違っていたならまたやり直すまでのことですよ!

大事なのは立ち止まらずに挑戦し続けることと…

一日一歩、確実に前に進むことなのですから!

…ま、そこんとこが分かっておるなら、とやかく言うつもりもないけどな…

それでは、立ち話はこのくらいにして!いよいよ始めるとしましょうか!

“ムナカタ三女神”タキツヒメの、《神格試験》を!

…なんというか、思い切った方向に進みましたね、タキ様。

…言ってやるな。アレでも真剣なのじゃ。

いえ、ご自身の道を果敢に切り拓いていくその力強さ…

私も見習わなければいけません!

あー、やめとけやめとけ…お前、周りの影響受けやすいのじゃから。

あんな波の激しい性格にでもなられたらこっちが困るわ…

…私も、もう少し成長できないものかと思っただけですよ?

前にコノハも言っておったじゃろ?一日一歩、進むまでじゃ。

焦って成長しようとものなら…

…さっきのタキみたいなことになるぞ。

…そ、そうですかね。

急がば回れ、急いではコトを仕損じる、…じゃよ。

というワケで、まずは目の前の《神格試験》じゃ!

やー、お疲れ様!

よくぞ、このタキツヒメの《神格試験》を突破したね

コレでツクモの“神格”も、え~っと…

ろ… “67段”…?思ったより中途半端だったな…

まぁ、いいか!とにかくお見事、ということで!

約束通り、ぼくの“波”の神格を授けよう。

その神衣に恥じぬよう…これからも努力を続けて欲しい。

…以上ッ!

…はぁ…

なんだか、ようやく色々なことが治まったような気もするが…

良く考えたら、結局“時化”の原因について手がかりは手に入らんかったし…

また、くたびれもうけかぁ…

まぁまぁ、そう落ち込まずに。ぼくの悩みも解決したことですし!

…くたびれもうけの大半は、お前のおかげなんじゃがなぁ。

で結局、お前はちゃんと自分の調子の波と向き合えそうなのか?

いやぁ、どうでしょうね… 今のトコロ手応えないですし。

…それに、うーん… ちょっと違和感なんですけど…

…違和感?

確かに今のぼく、今世紀最大の絶不調に見舞われてるわけですが…

海が言うことを聞いてくれないのは、調子のせいだけではないと思うのです。

なんじゃ、今更…

コレも感覚的なことなので、ちょっとうまく言えないんですけど…

もっと“大きな力”で押しとどめられているような、そんな感覚なんですよね…

…“大きな力”?“波”の《神格》よりも大きな力か?

ま、まぁ、ぼくの力が未熟なだけかもしれませんけどね…

…ふぅむ。もしその感覚を信じるなら…

めがみの神格に影響をを与えられるのは、やはり、めがみの神格以外にはない。

“波”の《神格》よりも強い《神格》の、影響ということかな…

…それは考えにくいですけどね。

ぼくら“ムナカタ三女神”の他に、海原にそんな影響力を持つ神格なんて…

…いずれにしても。

その大きな影響力とやらが、海原の異変を招いている可能性は高そうじゃな。

そうそると、原因はぼくではなくて、その“大きな力”とやらなワケですか。

…そうなるかなぁ。

ワシらは引き続き調査を続けることにする。世話になったな、タキ。

コチラこそ、お世話になりました!なんだか吹っ切れた気がしますよ!

お前、随分姉たちに憧れておるようじゃけど…

今なら少しは、肩を並べられそうな気もするのではないか?

分かってませんねー。アマテラス様。

姉さんたちに肩を並べようなんて、最初から思ってないですよ、ぼくは。

…え、そうなの?

並べるとか、超えるとかではないのです!ぼくらはそもそも3人で一柱!

“ムナカタ三女神”なのですから!

…今はまだ、力不足かもしれませんけど…

いつかきっちり役割を果たせるよう、ぼくも鍛錬を積まないと!

“ムナカタ三女神”の一柱として!

それが、お前なりの“ムナカタ流”… ということか…

ま、その目標さえ見失わなければ、お前はこの先も大丈夫じゃろうよ。

これが、タキ様の“波”の神衣…

お、着心地はどうじゃ?

体が軽くて…なんだか、背中に羽が生えたみたいです!

無性に体を動かしたくなってしまいますね!

…くれぐれも、タキのように騒ぎをたてんでくれよ。

何はともあれ、タキ様の悩み事は、これで改めて解決ですかね。

タキ様の真っ直ぐな夢、私も応援したいです!

3人で一柱のムナカタ流か…

アヤツらしい、純粋な願いじゃったな。

しかし、あまり落ち着いてもいられん。

海原の方も、まだまだ油断できそうにないしな。

確かに、タキ様の感じた“違和感”… ちょっと気になりますね。

次はイチキの所にトコロにべったり張り付いてみよう。