研究内容

研究概要

中西研究室では,「空気圧人工筋肉を用いた筋骨格ロボット」,および「飛び移り座屈を用いた魚型ロボット」などの,ソフトロボティクスに関する研究を行っています. 高出力高剛性を良しとする従来のロボティクスに対して,「柔らかさ」や「弱さ」を積極的に利用したロボットについて考えるのがソフトロボティクスです. ソフトロボティクスは,パワーアシストスーツなど人と接するようなロボットや,動物のようにしなやかで多彩な運動ができるロボットへの応用が期待されています.

空気圧人工筋肉を用いた筋骨格ロボット

空気圧人工筋肉(McKibben型空気圧人工筋肉)は,圧縮空気を印加することで,動物の筋肉のように 収縮し張力を発揮する,代表的なソフトアクチュエータの1つです.軽量高出力で,出力特性が筋肉に似ていることから, 人間や動物を模した筋骨格ロボットのアクチュエータとして用いられています.また物理的柔軟性およびバックドライバビリティ (強い力がかかった時に変形して受け止める能力)を有することから,リハビリ機器にも応用されています.

人工筋骨格系の安定性解析

空気圧人工筋肉を用いた人工筋骨格ロボットは,各筋への圧力印加のパターン設計といった比較的簡単な制御によって,歩行,跳躍,走行,投擲といった ダイナミックな運動が安定に生成可能であることが報告されています.しかし一方で,この「各筋への圧力印加のパターン設計」,あるいは 「人工筋骨格系(ロボット)の設計」は経験則や試行錯誤によって行われていることが多く,「なぜ」その設計やパターンで安定でダイナミックな運動が 生成可能であるかについては,いまだに明らかになっていない部分が多いです.中西研究室では,この「なぜ」の部分について,制御工学の側面からアプローチを行い, 定量的な設計や制御方法に関する研究を行っています.

張力フィードバック協調制御を用いた,人工筋骨格系の自律制御

一般的なロボットの制御においては,「目標とする軌道」を設計し,それを実現するためにどのような入力を行えば良いかを逆算し,印加することでその運動を実現します. しかしながら,例えば我々が実際に歩くとき,わざわざ「足首を何度に,膝を何度に,股関節を何度に,これくらいのスピードで...」といちいち逐一計算して動かしているでしょうか? むしろ.動かしやすいように自然と足を振り出した結果,その運動(各関節の角度変化)が生み出されている,とは考えられないでしょうか. この研究テーマではそのような考えに基づいて,「各筋肉が,自身が感じている張力に基づいて収縮パターンを変調することで,結果的に多彩な運動が自律的に生成される」ような制御則に 関する研究を行っています.ざっくりいうと,「歩け」と指示したら「具体的な歩き方」はロボットが自分で考えるような制御です.

空圧筋の長さや張力を測るセンサーの開発

空気圧人工筋肉はその柔軟ゆえに,長さを測ることが困難です.これに対してセンサも柔らかくすることで測れないか?ということで「やわらか測長センサ」を開発しました.また張力も測りたいのですが,従来の力センサ(ロードセル)は大きくて重くて高価なので,空圧筋に組み込める,小型で軽量な張力センサの開発も行なっています.

簡単に作れる空圧人工筋肉のレシピ

というコンセプトで共同開発した,誰でも簡単に空圧筋のレシピを公開しています.

ぜひ動画をご覧ください.詳細はこちら

このレシピの開発,および普及活動がSICE関西支部支部長賞 技術賞 を受賞しました!(2023.01.11)


高機動遊泳が可能な魚型ロボット

魚を手で捕まえようと思っても,魚はすばしっこいのでなかなか難しいですね. 中西研究室では,そんな魚の高機動な水中ロコモーションに注目しています. 素早くターンしたり,あっというまに加速したり,そんな魚のような運動が可能なロボットに関する研究を行っています.

 飛び移り座屈を用いた魚型ロボット

一般的な魚型ロボットは,複数の部品をサーボモータで連結したタイプのもので,これはこれでかなり魚らしい遊泳を実現できています.しかしながら,手で捕まえられないような急旋回,急加速といった素早い動きの実現には至っていません.これに対して中西研究室では「飛び移り座屈」という現象を利用した魚型ロボットを開発しています.飛び移り座屈とは薄板弾性体がある平衡状態から別の平衡状態へ高速に遷移する物理現象のことです.これを利用することで,力強く尾ビレや胴体を駆動し,素早い遊泳の実現を目指しています.

  尾ビレが受ける反力に基づく自律遊泳制御

泳ぐ際の尾ビレの振り方はいつも同じではありません.ゆっくり泳ぐ時,素早く泳ぐ時,ターンする時,それぞれ違います.魚はどのように尾ビレの振り方を決めているのでしょうか.これに対して「尾ビレが受ける反力」に基づいて尾ビレの動かし方を変える自律制御を考案し,実際にロボットに実装しました.