情報理論全般を研究対象としていますが、主にマルチユーザー通信と情報セキュリティに関連する研究を行っています。ここでは、これらの研究の一部を紹介します。
複数の送受信者で構成されるネットワークを介した多対多通信の通信速度をどこまで速くできるのかや、その際に用いるデータ圧縮の圧縮率をどこまで小さくできるのかといった理論限界について研究しています。情報理論では、このような研究を行う分野をネットワーク情報理論や多端子情報理論と呼んでいます。
多対多通信において全送信者が完全に同期して動作することは現実的に困難なため、同期せずに動作する非同期通信を解析することが重要になります。この課題に対して、さまざまな非同期通信のネットワークを検討し、それらのネットワークにおいて達成できる通信速度や圧縮率の理論限界とそれらの限界を達成する方法を研究しています。
送信者が保有するデータの一部を受信者があらかじめコピー(キャッシュ)しておけば、送信者は残りのデータを送信するだけでよいためネットワークの負荷を減らすことができます。このようなキャッシュを利用した通信における通信速度の理論限界とそれを達成する方法を、さまざまなネットワークを仮定して研究しています。
情報理論的安全性(秘密の情報と第三者が知り得る情報とが統計的に独立であること)を保つ情報セキュリティシステムについて研究しています。
情報理論的安全性を満たすように秘密情報を消去する際にかかる最小コストとそれを達成する方法を研究しています。ここでいうコストとは、費用や上書き回数などを含む一般的な概念のことです。この研究の成果は、たとえば、ハードディスクドライブに保存されている秘密情報をいかに少ない上書き回数で消去するか検討する際に利用できます。
サーバーが保有する情報をユーザーが検索する際に、どの情報を検索したのかをサーバーに対して秘匿したい状況があります。たとえば、動画の検索によって、趣味嗜好のような個人情報が漏洩することを保護したい場合などです。これを達成する方法として、複数サーバーを利用して検索を行う秘匿情報検索が知られています。この秘匿情報検索に対して、いくつかの条件のもとで、検索時にユーザーがダウンロードするデータのサイズをどこまで小さくできるかについて研究しています。
上記の研究以外にも、さまざまな情報理論の研究を行っています。また、関連する周辺分野の研究も行っています。
情報理論では通常、送受信者が一度に扱う送受信データの長さは制限せず、データ長が無限大に漸近する場合すら許容して、通信速度や圧縮率の理論限界を解析します。しかしながら、現実的にはデータ長が無限大になることはないため、有限長に制限した場合の解析(有限長解析)が重要です。本研究室では、無線通信の基本的な通信路モデルとして知られる干渉通信路を介した通信や非可逆データ圧縮など、さまざまな情報通信システムに対して有限長解析を行い、それらの理論限界について研究しています。
SNS上の噂のように、ネットワークを介して拡散する噂に対して、その発信源を特定するための研究を行っています。この研究は、同様の拡散モデルである伝染病やコンピューターウイルスの発信源特定にも応用できます。発信源が特定できれば、悪質な噂の出どころや伝染病の原因の特定、あるいはコンピューターウイルスに脆弱なノードの隔離などが可能になります。