Research

 私たちの身の回りにあふれる物質は多種多様で、全く異なって見えます。しかし、その背後には原子・分子が共通して存在していて、その振る舞いを理解すれば、物質の仕組みを知り、さらに新しい物質を創造できるかもしれません。そこで当研究室では、量子化学計算や分子動力学計算などの計算化学的手法をバックグラウンドとして、「物質を支配する目に見えない原子・分子の世界を可視化し、物質現象をミクロな視点から理解する」ことを目指した研究を行っています。

研究事例:有機金属錯体によるオレフィン重合反応の研究

 私たちの身の回りのプラスチック製品を構成するポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンの製造には、有機金属錯体を触媒とした重合反応が使われます。こうした重合反応では、錯体の構造設計を通じて高分子の構造や物性制御がなされますが、錯体構造によって重合反応が制御されるミクロなメカニズムは未だ十分には理解されていません。こうした背景から本研究では、高活性オレフィン重合触媒として知られる(pyridylamido)Hf(IV)錯体に着目し、量子化学計算や分子動力学計算のほか、複合化学反応系を取り扱うRed Moon法、反応速度論などの手法を横断的に用いて、錯体構造と重合反応の関係をミクロな観点から明らかにする研究を展開しています。現在までに

などの成果が得られています。

Fig. オレフィン重合触媒である(pyridylamido)Hf(IV)錯体を用いたエチレン重合反応のシミュレーションスナップショット [3]
(a) エチレン分子(緑色)が反応活性点であるHf原子(オレンジ色)に配位したあと、(b) Hf-C結合の間に挿入されて高分子鎖(黄色)の成長が起こります。

関連論文:

[1] K. Matsumoto, S. K. Sankaran, M. Takayanagi, N. Koga, and M. Nagaoka,Organometallics, 2016, 35, 4099-4105. (https://doi.org/10.1021/acs.organomet.6b00804)
[2] K. Matsumoto, M. Takayanagi, S. K. Sankaran, N. Koga, and M. Nagaoka, Organometallics, 2018, 37, 343-349. (https://doi.org/10.1021/acs.organomet.7b00767)
[3] K. Matsumoto, M. Takayanagi, Y. Suzuki, N. Koga, and Masataka Nagaoka, J. Comp. Chem. 2019, 40, 421-429. (https://doi.org/10.1002/jcc.25707)
[4]N. Misawa, K. Matsumoto, Y. Suzuki, S. Saha, N. Koga, and M. Nagaoka, J. Phys. Chem. B, 2023, 127, 1209-1218.(https://doi.org/10.1021/acs.jpcb.2c07296)

基礎から応用まで、新しいテーマの研究に日々チャレンジしています。ご興味を持たれた方はぜひ、松本までお気軽にご連絡ください。