参考文献
[1] Arai, A., Inequivalent Representations of Canonical Commutation and Anti-Commutation Relations — Representation-theoretical Viewpoint for Quantum Phenomena, Springer, Singapore, 2020.
[2] Arai, A., Analysis on Fock Spaces and Mathematical Theory of Quantum Fields — An Introduction to Mathematical Analysis of Quantum Fields, Second Edition, World Scientific, Singapore, 2024(出版予定).
[3] 江沢 洋・新井朝雄『場の量子論と統計力学 増補版』, 日本評論社,2023.
1次元量子ウォークの弱収束定理に関する論文は多く、その際に登場する密度関数は今野関数と呼ばれる特有の関数を元に記述される。
一方で2次元の量子ウォークの弱収束定理に関する研究では今野関数に相当すると目される関数は知られていない。本研究ではある2次
元の量子ウォークの弱収束定理を示した。さらに、その際に現れる密度関数を構成するヤコビアンの逆数についてある極限で今野関数
へ収束することを確認できた。この結果を本講演では紹介したい。
Title:
対相互作用模型の基底状態の解析性について
Abstract:
対相互作用模型は二次の相互作用を持つ量子場の模型であり,適切な仮定のもとでBogoliubov変換によって対角化される。解ける場の理論の模型としては,一次の相互作用を持つvan-Hove模型があるが,対相互作用模型はこれとは異なり非自明な散乱断面積を持つためより豊富な物理現象の記述が可能となる。また,この模型の解析は,解けない模型の解析へ進むための足がかりにできるため隅々まで研究しておくことが望ましい。
本講演では対相互作用模型の基底状態の解析性についての研究の成果を報告する。量子場研究における物理的議論の多くは摂動展開によって行われるが,その級数の収束が示されることは稀である。また摂動級数は発散することも多い。したがって,摂動級数の収束の問題は量子場の解析における重要な数理物理的課題となっている。
対相互作用模型では基底状態はある程度陽に表すことができるが,それでも結合定数依存性は複雑である。本講演では対相互作用模型の基底状態はある一般的な条件の下で基底状態が解析的であることが証明される。また,応用として双極子近似のPauli-Fierz模型が電荷を結合定数として複素領域に拡張した場合に,実軸を含むある帯状領域において正則であることが示される。
酔っ払いの千鳥足に例えられるランダムウォークと、その量子版である量子ウォークは、謂わば古典と量子の世界の酔っ払いを記述する。どちらの酔っ払いも、その千鳥足の痕跡を時間でスケールすれば、中心極限定理と弱収束定理が得られる。しかしながら、そのスケールは異なっていて、両者の中間的な存在はいまだみつかっていない。そんな中途半端な酔っ払いがいるかはわからないが、それを探す枠組みはどうやら用意できたようだ。今回は、そんな量子と古典の酔っ払いを包含するような、離散的な時間発展の枠組みを紹介する。