本プロジェクトは、JST‑ASPIRE 及びUKRI‑EPSRC の支援のもと、研究・国際連携・人材育成の三つの柱を有機的に結びつけながら、半導体量子ドット技術を数百〜千素子規模へ拡張するための基盤技術を開発します。また、国際連携ネットワークの強化と若手研究者の育成を通じて、持続的に発展する量子研究エコシステムの構築を目指します。
1) 研究開発
大規模量子ドット技術の確立
半導体量子ドットを数百〜千規模で動作させるための制御・計測・自動化技術を統合的に開発し、量子ビット及び量子電流標準に向けたスケーラブルな技術基盤を構築。
2) 国際連携ネットワーク
日英を核とした分野横断型連携の構築
量子コンピューティング、量子計測、極低温計測など異なる研究コミュニティを結集し、単独研究では到達困難な課題に挑む、機動的で持続可能な国際研究ネットワークを形成。
3) 国際的人材育成
日英を核とした分野横断型連携の構築
次世代量子研究者の育成と国際頭脳循 若手研究者を中心とした国際交流・共同研究・メンタリングを通じて、将来にわたり国際的に活躍できる量子人材を育成し、持続的な研究発展を支える。
半導体量子ドットを基盤とする量子デバイスの大規模化には、デバイス構造の最適化、高速かつ高感度な計測技術、熱管理、さらには自動化されたデバイス同定・制御手法の確立が必要です。
本プログラムでは、日英の研究グループが連携し、デバイスアーキテクチャから計測技術、機械学習による自動化までを包括的に扱う研究体制を構築しています。研究活動は、(1) 大規模量子ドットアレイのためのオンチップ多重化技術、(2) 高速・高感度読み出しを可能にする高周波計測技術、(3) 低温環境下での熱輸送・電子温度制御、(4) 多数デバイスの自動チューニングと特性評価を実現する機械学習技術、の四つのワークパッケージ(WP)により構成されています。
半導体量子ドットアレイの大規模化に向けて、オンチップ多重化回路の設計・実装を進めるとともに、デバイス間ばらつき(しきい値電圧、谷分裂、電荷雑音など)を体系的に評価します。多数素子の同時動作を可能とする回路アーキテクチャを構築し、統計的手法に基づく設計指針を確立することで、100〜1,000素子規模の量子デバイス実現に必要な基盤技術を開発します。
極低温環境での多量子ドット系の制御・測定手法を開発します。プロジェクト内での連携を通じた多素子系の制御技術の開発や、大規模量子ドットの制御手法および不均一性などに関する知見の獲得を通じて、大規模シリコン量子ビットデバイスを動作させるための基盤技術開発への貢献を目指します。
シリコン単一電子ポンプを用いた量子電流標準の高精度化を目指し、デバイス幾何形状やゲート設計、動作周波数がポンピング精度に与える影響を詳細に解析します。さらに、並列化や高速駆動に向けたデバイス設計を進め、機械学習を用いた最適動作点探索を導入することで、量子計測標準への応用を推進します。
歪みシリコン、グラフェン、トポロジカル材料、ダイヤモンドNVセンターなど、多様な量子材料を用いた新規デバイスの作製と特性評価を行います。20–40 GHz帯のミリ波量子計測系やNVセンターベースのマイザー増幅器の開発を通じて、高速・高周波動作に適した量子デバイス技術を探求します。
大規模量子ドットアレイに適した高速・高感度読み出し系の構築を目的として、RF反射計測用のLC共振回路や量子パラエレクトリック材料を用いた可変共振器の開発を進めます。さらに、低温環境で動作するマイクロ波信号源や低雑音パラメトリック増幅器を導入し、多素子読み出しの高帯域化と高忠実度化を実現します。
量子デバイスの大規模化に伴う熱負荷増大に対応するため、超伝導/常伝導ハイブリッド構造を用いた高感度電子温度計測技術を開発します。また、電子冷却素子による局所的な電子温度低減を実現し、量子デバイスの安定動作に寄与します。
多量子ドットデバイスにおける複雑なゲート電圧空間を効率的に探索するため、機械学習を用いた自動チューニング手法を開発します。電荷安定図の自動解析、量子ドット形成の判定、最適動作点の推定などを統合的に行うアルゴリズムを構築し、従来は手動調整が必要であったプロセスを自律化します。これにより、10素子規模から100素子規模へと拡張可能な制御フレームワークを実現し、大規模量子デバイスの実用的運用に向けた基盤を整備します。
多量子ドット素子を対象とした高スループット特性評価を可能とする自動計測システムを構築します。高速データ取得パイプライン、状態分類モデル、動作領域の自動マッピング手法を組み合わせることで、デバイス特性の網羅的評価を効率化します。また、異なるデバイス構造や材料系に対しても適用可能な汎化性能の向上を図り、大規模量子ドットアレイの統計的特性解析や設計指針の確立に貢献します。