雪や氷の中に広がる生物たちの世界はどうなっているのか?
雪や氷の世界 -雪氷環境- には、様々な生物が生息しています。中でも、降った雪が越年することなく融けきってしまう積雪環境や、夏に融けきることなく雪が残ることで形成される雪渓・氷河には、寒冷環境に適応した生物 -雪氷生物- と呼ばれる特殊な生物が生息しています。雪氷生物は、様々な分野に影響を与える可能性があります。例えば、氷河上のシアノバクテリアと鉱物粒子から成る暗色物質(クリオコナイト)が氷河の表面を黒くする(暗色化)ことで融解を促進させたり、積雪環境では、融雪期に藻類(雪氷藻類)が大量に繁殖することで雪表面を様々な色に染める彩雪現象を引き起こします。特に緑色に変化した緑雪には、藻類のみならず多様な生物が生息しており、独特な生態系が形成されている可能性があります。しかしながら、雪氷生物の生活史を含め、彼らがそれぞれの生態系においてどのような役割を果たしているのか、彼らの活動が地球環境においてどのような影響を及ぼすのかはまだ明らかになっていません。私は、野外で実際に採取した雪を使用して顕微鏡観察や溶存化学成分分析、画像解析、DNA分析、安定同位体比分析などを行い、雪氷生物の生活史や生態系における役割を明らかにすることを目的として研究を行っています。
What is happening to the world of organisms spreading in snow and ice ?
The world of snow and ice (snow-ice environment) are inhabited by a variety of organisms. We can see special organisms adapted to the cold environment in seasonal snow patches where the snow completely melts during the summer, and the snowy valleys and glaciers where the snow remaining over the summer. These organisms have potential to affect a variety of areas. For example, a dark substance (cryoconite) consisting of mineral particles, organic matter and cyanobacteria promotes melting glacier by darkening glacial surface; blooming of snow algae during the snowmelt season in seasonal snow patches causes snow discoloration such as orange, green and golden-yellow. In these environments, it is possible that a unique ecosystems have been formed. However, it is unrevealed what role these organisms play in respective ecosystems, including the their life history and how their activities affect the climate change and also biogeochemical cycle. My big goal is clarifying the life history and role of organisms in snow or glacial ecosystems (recently focuse on snow ecosystem) with analysing microscopic observation (it all started when I found tardigrades in snow!), chemical analysis, image analysis, DNA, stable isotope and so on.
氷河上のクマムシ→
Tardigrades in cryoconite hole
←積雪中のクマムシ
Tardigrades in snow
←積雪中のワムシ
Rotifers in snow
藻類やバクテリア以外にも?? 雪氷環境に生息する様々な生物目を凝らしながら見てみよう!(クマやクレバスに注意)
Example of organisms living in snow-ice environment!
セッケイカワゲラ→
Wingless stonefly
ツボカビ→
Chytrid
←トビムシ
Collembola
緑雪は積雪生態系におけるホットスポット??
融雪期になると積雪表面にパッチ状に現れる緑雪。日本国内の樹利帯でも見ることができますが、この緑雪には藻類だけでなく、クマムシやワムシといった無脊椎動物が集中していることが私たちの研究で初めて明らかになりました!他の生物も含めてこの緑雪には様々な生物が集中している可能性があり、生態系におけるホットスポットである可能性があります。すごいときはいたるところにこの緑雪が見られるようになるので、物質循環(生物地球化学的循環)の観点からも、緑雪中の生物活動を明らかにする必要があります。
Green snow is a hotspot in the snow ecosystem??
We can see green snow patches on the snow surface during the snowmelt season. As you can see green snow in the vegetation zone in Japan, our research has revealed for the first time that not only algae but also invertebrates such as tardigrades and rotifers are concentrated in there!! It is possible that various organisms are also concentrated in this green snow, and it may be a hotspot in the snow ecosystem. Since green snow can be seen everywhere in their maximum, it is necessary to clarify the biological activity in green snow also from the viewpoint of biogeochemical cycle.
ブ、ブラウン色のクマムシ??
クリオコナイトが日射を吸収することで氷河の氷表面を融かすと、小さな水たまりのようなもの(クリオコナイトホール)形成されます。このクリオコナイトホールには、シアノバクテリアや藻類以外にも、ブラウン色のクマムシが生息していることがあります。このブラウン色の体色を持ったクマムシは、氷河上にしか生息しておらず、なぜこのような色をしているのか?はたまた、1年中氷に包まれている環境で彼らは一体どのような生活を送っているのか?未だ多くの謎に包まれています...
Brown tardigrades??
When cryoconite absorbs sunlight and melts the glacial surface, a small puddle called cryoconite hole is formed. In cryoconite holes , not only cyanobacteria and algae, but also tardigrades which have brown color live there. These brown tardigrades were reported only from glaciers. Why do they have such a color?? How do they spend their entire life in snow-ice environment all year around?? It's still a mystery...
2026.4.1
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻助教に着任しました。気持ちをさらに引き締め、精進していきたいと思います。
2026.3.13
第73回 生態学会大会で口頭発表を行いました。初めての生態学会でした。生態学の最先端を肌をもって知る貴重な体験でした。
2026.1.21
Analytical Chemistry誌から共著論文が出版されました。イオン交換樹脂を用いて、亜硝酸の同位体比を測定する方法についてです。
2025.11.22
日本山の科学会2025年秋季研究大会にて口頭発表を行い、若手優秀発表賞に選出いただきました。調査・分析に携わっていただいた皆様、審査員の皆様に感謝申し上げます。
2025.11.20
The Cryosphere誌から、論文が出版されました。積雪中の生物の垂直分布、個体数の季節変化を記載しています。溶存化学成分の垂直分布、積雪表面の不純物との関係もみています。これまで単発での調査が多く、融雪期を通した雪氷生物の変化をまずしらなくちゃ!という意義込だけで臨んだ記憶があります。色んなドラマがありましたが、そこでの繋がりに今でも感謝しきれません。調査、執筆に協力してくださった皆様、ありがとうございました。
2025.11.13
朝倉書店さんより,「動物の行動と心の事典」が出版されました。微力ではありますが、雪の中のクマムシの話を執筆させていただきました。様々な動物の研究事例が掲載されている本となっており、読むのがとても楽しみです。執筆機会をくださった皆様に感謝です。
2025. Summer
いろいろどたばたしてしていましたので、以下簡潔に...
9.5-9.6
雪氷研究大会(2025・津)の雪氷化学・生物分科会にて、話題提供をしました。若い方が多く参加してくださって嬉しかった一方、自分のデータを散らかすように紹介してしまったことを反省しました。
8.31-9.4
Cryospheric Ecosystems Conferenceで口頭発表を行いました。2019年にポーランドに滞在した際のボスがOrganizerでしたが、様々な知り合いに再会しました。みんなにもいっかい、今度はちゃんと研究者として会うんだ!と当時思っていましたが、その思いが6年ぶりに実りました。
8.19-8.30
米国アラスカ州のグルカナ氷河で観測を行いました。氷河上をたくさんの地点で,かつ内部も!と、とにかくできることをたくさんやった、観測でした。今回は重たい荷物が多かったですが、一緒に持ってくださったみなさまに感謝です。
7.24-8.11
名古屋大学の坂井亜規子さんのグループに同行し、モンゴルのポターニン氷河で観測を行いました。同行させていただくのは2回目ですが、ポターニン氷河氷表面の、あのはっきりとした白黒の縞は依然として謎です。今回の観測でその謎の解明に少しでも迫れることを願っています。
7.19-21
The 11th EAFES International Congressで口頭発表を行いました。久しぶりの英語発表で、たどたど...普段聞かないトピックが多く、勉強になりました。
2025.5.27-29
日本地球惑星科学連合2025年大会でポスター発表を行いました。(もちろん良い意味で)ポスター発表してこんなに疲れたのは初めてでした。聞きに来てくださった皆さん、ありがとうございました。
2025.4.24-30, 5.8-5.21
山形県月山の雪をひたすら見てきました。毎日朝5時に緑雪を探していました。時間単位で、日単位で、イベント単位で色の濃さや分布が変わっているのを見ると、彼ら(雪氷生物)の活動についてまだまだわからないことだらけなのだなぁと痛感しました。今回は(も)、清水屋旅館のみなさまになにからなにまでお世話になりっぱなしでした。本当にありがとうございました。皆さんに面白く聞いてもらえるような発見があるといいですが...
2025.4.02
雪氷生物研究会で口頭発表を行いました。「雪氷生物」というキーワードに関連する様々な研究が聞ける、年に一度の機会です。
2025.3.04
Arctic, Antarctic, and Alpine Research誌にて、論文が出版されました。積雪中の生物が、雪の中を日周期的に垂直移動するというお話です。自分の名前にちなんだMASS layer(今となってはもう恥ずかしい)の存在について記載しました。
2025.2.04-24
スヴァルバールにて氷河調査を行いました。初めてのスヴァルバール、初めての冬期調査などなど、初めてのことづくしで、多くのことを経験しました。
2025.1.09-10
北海道大学低温科学研究所 研究集会で口頭発表を行いました。もう一度、何か新展開を!と動くことを考えました(結果的に複数人を巻き添えに...)。
2024.12.20
第14回同位体環境学シンポジウムに参加しました。来年こそは、発表します。と心に誓いました。
2024.12.17-19
ArCSII雪氷課題最終報告会で口頭発表を行いました。(特に)同世代のみなさんの成果に圧倒され続けた3日間でした。
2024.12.09-10
ISEE共同研究集会2024(名古屋大学)で口頭発表を行いました。直近で鉄という言葉をたくさん聞かされ、これは何かの暗示...
2024.12.02-16
2024年7月から8月にかけてグリーンランドで掘削したアイスコアの処理をしました。コアのカッティング等、初めてでしたし、なによりもこれほど長く低温室で活動した経験はありませんでした。みなさんの分析がうまくいきますように(自分の含め)。
2024.11.23
日本山の科学会2024年秋季研究大会に参加しました。初めて参加しましたが、生物に関わらず、様々な分野研究が「山」を1つのキーワードに交わる素晴らしい場でした。
2024.09.21-09.22
生物地球化学研究会 現地セッション(福島)に参加しました。天候に恵まれずでしたので、リベンジしたいです。
2024.09.17-09.18
雪氷研究大会(2024・郡山)で、口頭発表および氷河分科会での話題提供を行いました。生物関連の発表も多く、刺激的でした。
2024.07.14-09.01
グリーンランドで氷河観測を行いました。初めての極域での観測でしたが、学ぶことがとにかくたくさん。でした。
2024.06.15-16
富山県立山で積雪調査を行いました。今年も今年とて、赤かったですねぇ。
2024.05.30
日本地球惑星科学連合2024年大会の「北極域の科学」セッションにて、口頭発表を行いました。藻類の大きさ...また謎が...
2024.04.01
京都大学 生態学研究センターで学振PDとして研究を開始しました。たくさんの人にご迷惑をおかけしてしまいますが、何かしらの形で恩返しできるよう、頑張りたいと思います。
2024.02.20
(なんとなく)最近の活動欄を追加しました。それとぼやきも。活動がぼやきで隠れないように気をつけないとです。
東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻
助教
小野誠仁
Graduate School of Arts and Sciences, University of Tokyo
Masato Ono (Ph.D.)
Mail:masato.ono.nkk (at) gmail.com