2009年 山口県立徳山高等学校理数科 卒業
2014年 東京大学法学部第三類(政治コース) 卒業
2016年 東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻修士課程 修了
2020年 東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程 単位取得満期退学
2021年 東京大学大学院法学政治学研究科から博士(法学)を取得
2021年–2022年 学術振興会特別研究員PD(慶應義塾大学法学部)
2022年より大阪大学大学院法学研究科准教授
旧ソ連圏の国,特にロシアとウクライナを対象とした国内政治の分析を行っています.
比較政治学のアプローチをとります.権威主義体制における政党,選挙動員,中央地方関係などに関して関心があります.
特定の地方におけるフィールドワーク(専門家やエリートへのインタビュー,現地資料の収集)に基づく定性分析と,選挙結果や人事データなどの観察データを用いた定量分析の経験があります.
個人的に,ソ連崩壊以降のロシアの知事の人事データ,ロシアの大都市の市長の人事データ,ウクライナの知事の人事データを構築しています.また,スクレイピングによって得たウクライナの国会議員,および地方議員のデータ(一部)を用いた分析も行なっています.データに関心がある方はご連絡ください.
『ロシア政治: プーチン権威主義体制の抑圧と懐柔』中公新書,2025年.
詳細な引用情報のほか,紙幅の都合で本文に盛り込むことのできなかった情報を記載しています.私的な閲覧の範囲にとどめ,引用や頒布は控えてください.
書評
日本経済新聞朝刊 2025年6月14日 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO89342170T10C25A6MY6000/
朝日新聞朝刊 2025年7月5日 評者: 上村剛(関西学院大学法学部准教授) https://book.asahi.com/article/15888851
共同通信配信記事(いくつかの地方紙に掲載) 評者: 東島雅昌(東京大学社会科学研究所准教授)
読売新聞朝刊 2025年7月27日 評者: 佐橋亮(東京大学東洋文化研究所教授) https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/reviews/20250728-OYT8T50052/
Europe-Asia Studies, 2023, 75 (10), pp. 1651–1676.
独裁者は体制を強化するために,重要な地方の役職を国家の官僚構造に取り込もうとする.本論文は,ロシアの知事の在任後のキャリアに関する包括的なデータセットを用いて,プーチン大統領の中央集権化改革の下で,知事職が連邦政府のコントロール下に置かれるようになったことを示す.2010年代には,知事が刑事告訴を受けるケースが多く見られるようになった.同時に,知事の中には連邦政府へと出世する者も増えた.地方エリートは,厳格な統制と昇進の組み合わせを通じて,連邦行政構造に組み込まれるようになった.
"Growing Localization and Fragmentation of Patronal Politics: Ukrainian Local Elections since 2010."
Eurasian Geography and Economics, 2023, 64 (3), pp. 296–321.
ウクライナの2020年地方選挙では,地方政党の乱立による政党システムの急激な変容が観察された.既存研究では,政党システムの漸進的な全国化については検討されているが,今回ウクライナで観察されたような政党システムの急激な地方化(localization)はほとんど議論されていない.本研究では,2010年代の政治過程に関する定性的分析と,2010年,2015年,2020年のウクライナの地方選挙結果のデータ分析を組み合わせ、いわゆる「ユーロマイダン革命」後に急速に権力を拡大した有力市長によって政党システムの地方化が引き起こされたことを実証する.このような市長の権限の増大には,主に3つの原因がある.第一に,市長公選制や国家構造における市政府の相対的な自律性といった制度が,知事などの他の地方政治の重要アクターとは異なる独自の権限を市長に与えている.第二に,「ユーロマイダン革命」以降に開始された地方分権改革が,市長や市行政府の権限を強化した.最後に,ヴォロディムィル・ゼレンシキーの知事選任政策と彼の政党である「人民の僕」の候補者選定方針が,市長の権力基盤の発展を可能にした.本研究は,パトローナル政治の地理的分断を示すことで,ヘンリー・ヘイルが提唱したパトローナリズム概念の新たな発展に重要な示唆を与える.
Democratization, 2022, 29 (7), pp. 1249–1267.
近年,権威主義後継政党(authoritarian successor parties)に注目が集まっているが,先行研究の多くは崩壊した体制と関係の深かったエリートが新体制でどのように行動するか検証していない.本研究は,権威主義体制崩壊後の選挙において,旧権力党のメンバーがどのような条件で新体制でも議席を得られるのか分析する.ウクライナの国会議員450人、地方議員2869人の現職議員に関する包括的なデータを利用し,2014年ユーロマイダン革命で崩壊した権力党である地域党(Party of Regions)に帰属していた議員のユーロマイダン後の再出馬と再選を分析する.分析の結果,小選挙区で当選するなど個人資源を持つ元地域党議員の方が,2014年選挙で再出馬,および再選を果たしやすいことが示された.また,元地域党議員の政党帰属は,政党のプログラムやイデオロギーによっては決まらず,選挙での勝利確率を高めようとする議員と政党の相互関係によって決まることも示された.体制崩壊後の権威主義権力党の元議員と政党の行動は,議員の個人資源に依存することを,この結果は示唆している.
Post-Soviet Affairs, 2019, 35 (3), pp. 258–276.
権威主義体制の支配者は,どのように,あるいはどのような条件下で,国家機構を利用して選挙における勝利を確保するのだろうか.本稿では,混合政体における選挙動員と知事任命の関係について検討する.権威主義体制の支配者は,行政資源を利用する絶対的な権限を持っているため,支配者に都合の良いような選挙動員に優れた知事を選任する.しかし,いくつかの状況下では,この戦略は最適ではなくなる,あるいは不可能となる.1996年から2017年までのウクライナにおける知事の任命と解任のオリジナルデータセットを用いて生存分析を行った結果、レオニード・クチマ大統領時代には選挙パフォーマンスが知事解任の主要な要因であったことが確認された.さらに,支配政党の強さ,中央政府内の統治者の権威の強さ,東西の分極化の程度などの様々な制度的条件が,その後の大統領による異なる任命解任戦略の採用につながったことが実証された.
Forum for Ukrainian Studies, June 2022.
国際問題研究所 研究レポート,2024年1月